モラハラを受けた99回目で、僕は離婚を決めた第2話
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これが初めてだった。椎名を馬鹿みたいに待つことをやめたのは。
一人で食事を済ませ、十分に満足していた。
椎名がまた約束を破っても、僕はさほど気にしなかった。
深夜になって、玄関で物音がした。やっと椎名が帰って来た。家の中は真っ暗で、リビングの明かりも点いていなかった。
七年間、彼女が酒臭い体で深夜に帰宅するたび、僕は二日酔いの薬を用意し、ソファで居眠りしながら彼女の帰りを待つのが習慣だった。
彼女を心配して、具合が悪くならないようにと思ってのことだった。
しかし、椎名はそれを好まなかった。
そのため、彼女はよく朝まで帰らず、僕のことをうるさがった。
「白川、具合でも悪いの?」
彼女は酒臭い体で入って来て、手を伸ばして僕の額に触れようとした。
僕は彼女の手を避け、表情を変えずに眉をひそめた。「遅いぞ、さっさとお風呂に入ってこい」
彼女の体からする酒の匂いと、かすかに漂う男性の香水の匂いで吐き気がした。
椎名は僕の隣に座り、スマホを開いた。不在着信は一つもなかった。
これは確かに普段とは違った。
いつもなら、彼女が飲むたびに、しつこいくらい控えめに飲むよう注意し、代行運転を手配するよう主張していたのに。
彼女は咳払いをして、渋々言った。
「今夜の飲み会はどうしても断れなかったの。明日は必ず付き合うから、これで満足でしょう?」
僕は淡々と言った。「結構だ。お前は好きにすればいい」
これは本心だった。
思いがけず、僕のその言葉が何かのスイッチに触れたのか、彼女は突然怒り出した。「少し譲歩してあげたら、調子に乗るのね。白川、私は最近忙しいの。あんたの相手をしている暇なんてないわ」
スマホにメールの通知が来て、僕は急いで開いた。
そして言った。「忙しくても映画やゲームの時間は作れるじゃないか。時間管理が上手いな」
椎名の表情が一瞬で曇った。
彼女は苛立たしげに、桐山とは幼なじみで、昨夜は彼が雷を怖がるから、仕方なく家まで送っただけだと言い訳した。
「白川、あなたって被害妄想ばかりじゃない。心が汚い人は何を見ても汚く見えるのよ!もう嫌になった!」
以前なら、この言葉は僕を号泣させ、必死に自分の愛を証明しようとさせる彼女の切り札だった。
でも今回は、彼女の非難を聞いても、僕はただスマホを静かに持ったまま、何も言わなかった。
弁護士から送られてきた離婚協議書を読んでいたのだ。
椎名が近づいてくるのを感じ、僕は急いでスマホの画面を消した。
「何を見てるんだ?」
「なんでもねぇよ。もう寝るから」
バン!という大きな音を立てて、彼女は別の部屋に走っていった。
これが、この七年間、僕たちの冷戦が始まる常とした合図だった。
一年前の僕なら、今頃はドアの外で土下座し、話し合いを懇願していただろう。
でも今夜は、彼女を追いかけることはない。これからもそうするつもりはない。
僕は離婚協議書を印刷し、署名した。
この瞬間、かつてない解放感と自由を感じた。
翌日、仕事に没頭していると、内線電話が鳴り、椎名に最上階に呼び出された。
「久しぶりだね、白川さん」
桐山は社長椅子に座り、にこやかに僕に言った。「俺と鈴は毎日会ってるよ。一緒に遊びに来いって鈴に言ってるんだけど、全然聞いてくれねぇんだ」
桐山はちょっとした人気のゲーム配信者で、若くてイケメンだった。
きっと昨夜も、SNSに椎名と一緒にゲームをする動画を投稿したのだろう。
僕には分かっていた。彼がそういった投稿をするたび、僕に見せつけ、挑発するためだということを。
僕が嫉妬して椎名に文句を言い、椎名が僕にうんざりする。
それが桐山の陰湿な策略だった。
これまで彼に会うたび、僕は無意識に自分の身なりを気にし、質素すぎると感じていた。
でも今日は、桐山は僕の目に一片の卑屈さも怒りも見出せなかっただろう。
探るような視線を感じながら、僕は口角を上げて微笑んだ。
「僕は家にいるのが好きなんだ。気にするな、お前たちで楽しめよ」
僕の言葉を聞いて、椎名は窓際から振り向き、僕を見つめた。
彼女の目の下には明らかなクマができていた。おそらく一晩中寝返りを打っていたのだろう。
「桐山がお腹を空かせてるの。白川、私のお弁当を持って来て」
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