プログラムされた恋第3話
この話は約1669字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
「深、もう私と一緒にいるのが嫌になったんでしょう?だったら、私は明日出て行くわ」
きっと、あの酔っ払いに絡まれたから、体裁が悪かっただけだろう。
私の言葉を聞いて、長瀬深は眉を寄せ、私の手を強く握りしめた。
「絶対にダメだ!」
長瀬深はそれだけ言うと、それ以上何も説明しなかった。
私の提案は、お互いのためになるはずなのに。どうして許してくれないんだろう?
しばらく歩いた後、長瀬深は何かを思い出したように、振り返って私に近づいた。
「俺のそばにずっといたのは、任務のためだろ?」
「その任務さえも諦めるなんて、何か隠してることがあるんじゃないのか?」
......
私はドキッとした。まさか、何か気づかれた?
私が黙っていると、長瀬深は勝手に推測を始めた。
「それとも......これは駆け引きか?」
それを聞いて、私は安心した。長瀬深は私が思っていたほど賢くなかった。
でも、私は彼の考えを見透かされたふりをして、気まずそうに顔をそむけた。
長瀬深は冷笑しながら言った。「お前の手口なんて、全部お見通しだ。無駄な抵抗はやめろ」
そう言うと、彼は再び私の手首を掴み、車の中に押し込んだ。
「彩音、お前には絶対に任務を達成させない。俺のそばに置いて、俺が他の女に惚れるのを見せてやる」
私は冷たく笑って、「そんなに恨まれてるなんて知らなかったわ。そこまでして私を傷つけたいの?」と言った。
長瀬深はゆっくりと私にシートベルトを締めながら、低い声で言った。
「俺を傷つけた奴は、必ず代償を払わせる。それは、お前が一番よく知っているはずだ」
それは事実だった。長瀬深の敵、そして彼を裏切った者は、誰一人として良い結末を迎えていない。
私は反論した。
「たとえ私の気持ちが嘘だったとしても、あなたを助けてきたのは事実よ。これは恩を仇で返すっていうんじゃないの?」
どの言葉が彼の気に障ったのか、長瀬深の表情はさらに冷たくなった。
「お前の衣食住は全て俺の金だ。それで恩返しになっていないとでも言うのか?」
「そんなの必要ない!任務を終わらせて、私を解放してくれればそれでいい!」
私はそもそもこの世界の人間じゃない。彼が何を言っても意味がない。
さらに何か言おうとした時、窓の外の景色を見て、私ははたと気づいた。長瀬深は酒を飲んだから運転できないと言って、私を迎えに来させたのだ。
でも、彼は運転手を連れてきているじゃないか。私を呼び出したのは、あのろくでもない連中に恥をかかせるためだったのか?
長瀬深はなんてひどい男なのだろう。8年間の情を全く顧みないなんて、私は一体何のために尽くしてきたんだろう。
「私は車で来たのよ!車はあそこに置いてあるんだから!」
私の怒りは、全てこの二言に込められていた。
怒鳴り返したい気持ちを抑え、私は黙り込んだ。この役の性格は、そう簡単に変えられるものではない。
8年間かけても、何も変えられなかったのだから。
私が車のことで急に怒り出したので、長瀬深は一瞬たじろぎ、大声で言った。
「うるさい!あのポンコツ車がなくなるわけないだろ!お前が気にすることじゃない!」
もう長瀬深とは話すことはない。彼は私を解放する気などないのだ。
幸い、任務ももうすぐ終わる。もうしばらくの辛抱だ。
私は顔を背けて目を閉じ、時折聞こえてくる長瀬深の部下への指示に耳を傾けた。
「社長、チップありがとうございます。また会いたくなったら、いつでも連絡くださいね。ちゅっ」
わざとスピーカーフォンにしているようだ。あのぶりっ子声が耳に入り、私は思わず身震いした。
窓ガラスに映る長瀬深の顔は、満面の笑みを浮かべていた。
長瀬深が咳払いをして、少し低い声で言ったのが聞こえた。「ああ、分かってるよ、ベイビー」
なんて脂っこい言い方だろう。鳥肌が立つ。
窓に映る長瀬深を見つめながら、かつて手を繋ぐことさえためらっていた彼が、こんな風になるなんて信じられなかった。
たった一ヶ月で、どうして人はこんなに変わってしまうんだろう。
まるで、自分が長年かけて育ててきた木が、支えを失って曲がってしまったかのように胸が詰まる思いだった。
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