和紙文プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~ · 第3話設定≡

プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~第3話

この話は約2828字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

それを見て真奈美はドキッとした。

彼女はこの縁談には満足しており、当然、潤に邪魔されたくはなかった。

しかし、潤と正面から衝突する勇気もなかったので、彼の冷たい表情を無視して、湊に笑顔で尋ねた。「それなら今週末はどうかしら。隼人にまず贈り物を持って陽菜の家へ行かせて、その後、両家で食事をするの」

湊が頷いた途端、明里のスマホが鳴った。

彼女は慌てて電話に出ると席を立ち、食卓の皆に軽く手を振って席を外すことを示しながら言った。「凪、どうしたの?」

柔らかな口調で、その目元は美しかった。

そして、彼女は電話をしながら、遠ざかっていた。

その声を聞いて、潤は訝しげに明里の方を見た。

真奈美は、「忙しいことね」と呟いた。

陽菜が顔合わせの話を続けようと口を開いた。「食事の時は、潤さんも一緒に来てね」

潤は頷くと、おしぼりで手を拭き、そして何も言わずに立ち上がって、長い脚で外へと歩き出した。

湊が彼を呼び止めた。「どこへ行くんだ?まだ食事の途中だろう!」

陽菜もまた、彼を呼んだ。「潤さん!」

潤はようやく振り返った。「気にするな。食事を続けてくれ」

一方で、明里が電話を終えて戻ってくると、潤の姿はもうなかった。

陽菜が目を赤くして言った。「潤さんはこの縁談に反対だから、怒って帰ってしまわれたのかしら?」

そうよ、初恋の人が実の弟と結婚するんだもの。彼が何も思わないわけがない。

明里は胸がさらに締め付けられるように痛くなり、テーブルの上の料理を見つめる視界が霞んでいった。

隼人が口を挟んだ。「そんなわけないだろ。それに、俺の結婚だ。彼に口出しされる筋合いはない」

食卓の面々は、入れ代わり立ち代わりと陽菜を慰めた。

皆が話し終えるのを待って、明里は言った。「私はこれで失礼するね。皆さんごゆっくりどうぞ。婚約の日取りが決まったら教えて。お祝い準備するから」

陽菜は穏やかな表情で彼女を見つめ、その眼差しには勝者の笑みが浮かんでいた。「ありがとう、明里さん」

明里は陽菜を数秒見つめた後、背を向けてその場を去った。

先ほどのデータに問題があったこともあり、明里は心が乱れ、いっそのこと研究所へ戻ることにした。

あるデータがおかしいことに気づき、彼女は無意識に凪に尋ねようとした。

しかし、一瞬止まった後、彼が昨日付けで異動になったことを思い出した。

いろいろ片付けて、仕事が終わる頃には、もう夜の十一時近くだった。

明里はまだ、あの複雑な数式のことを考えており、階段を降りる際に足元への注意が疎かになり、足を捻って転びそうになった。

その衝撃で彼女は足を引きずり、地面に足が着くたびに痛みが走るため、タクシーで帰宅するしかなかった。

結婚後、明里と潤は雲海レジデンスに住み、週末だけ二宮家の屋敷に戻っていた。

K市で最も高価な不動産の一つであり、土地の値段は非常に高かった。

彼らが住んでいるのは高級住宅街で、あたりは静かで、見晴らしも良かった。

そのため、一面ガラス張りの窓のそばで酒を飲んでいた潤は、玄関にいる明里の姿がすぐに見えた。

その時、時刻はすでに夜の十二時になろうとしていた。

タクシーで移動する間に少し落ち着き、明里の足の痛みはそれほどでもなくなっていた。ゆっくりと地面に足を下ろしてみると、何とか歩けそうだった。

彼女はゆっくりと歩き、足首を捻挫したとはほとんど分からないほどだった。そして、庭を通り、家のドアを開けた。

中に入った途端、手首を掴まれ、そのまま玄関の壁に押し付けられた。

潤は全身から酒の匂いをさせ、何も言わずに、顔を傾けてキスをしてきた。

明里が両手で彼を押しのけようとしたが、その両腕は頭の上で押さえつけられてしまった。

力において、男女差は歴然としていた。

結局、明里は抵抗を諦めるしかなかった。

どれほどの時間が経ったのか、男はようやくそのキスをやめた。

彼は背筋を伸ばし、明里を見下ろした。

激しくキスをされたせいで、明里の髪は乱れ、瞳は潤んでいたが、その眼差しは冷ややかだった。

潤が口を開いた。その声は低く魅力的だったが、温度は感じられなかった。「なぜこんなに遅いんだ?」

潤の冷たい視線を受け、明里の唇はまるで重く貼りついたかのように動かず、何も言えなかった。

そう、潤の初恋の人が婚約するのだ。彼が平気でいられるはずがない。

だがなぜ自分が八つ当たりを受けないといけないんだろう?

彼女は彼を突き放し、歩き出そうとした。だが、一歩踏み出した途端、足首に激痛が走った。

明里は息を飲み、体がぐらついた。その瞬間、潤がとっさに彼女の腰を支えた。

彼の声には、わずかながら心配の色が滲んでいた。「足をどうした?」

次の瞬間、潤に抱き上げられ明里は思わず声を上げた。

「怪我をしているなら、強がるな」

潤は硬い表情のまま、明里を寝室へと運んだ。

彼女を寝室に下ろすと、すぐに踵を返して電話に出るために部屋を出て行った。

明里は深く息を吸い、力がぬけたように笑った。

彼女はベッドから降りると、ゆっくりとキッチンへ向かい、氷を取り出した。そして、洗面所でタオルを探した。

新しいタオルは棚にあるはずだったが、開けてみても見当たらず、いくら探しても見つからなかった。

痛みをこらえながら、あちこち探し回ったが見つからず、明里は仕方なく使い古しのタオルで氷を包み、怪我した箇所に当てた。

寝室のドアは開いたままになっており、数分後、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

潤が医師を連れて入ってきて、言った。「彼女の骨が傷んでいないか診てください」

幸い骨に異常はなく、ただの捻挫だった。冷やした後、湿布を貼れば、明日には大体良くなるだろうとのことだ。

医師を見送ると、また潤のスマホが鳴った。彼は穏やかな声で話し始めた。「陽菜、さっきは……」

話し声は足音と共にどんどん遠ざかり、次第に聞こえなくなった。

さっき潤が電話していた相手は、陽菜だったのね……明里はそう悟った。

彼女の心の奥が、鋭いものでチクリと刺されたような痛みが走った。

一方で潤は電話の向こうの声に耳を傾けながら、寝室の方を見つめて言った。「分かった」

翌日、明里は一日中研究所にこもり、帰宅しようと立ち上がった時、足首にまだ違和感があることに気づいた。

彼女はゆっくりと歩いて足を慣らし、少し回復したのを確認してから、車で帰宅した。

家に着いたのは、またしても夜の十一時近くだった。

明里はシャワーを浴びてすぐにベッドに横になると思考回路が混乱していたが、無理やり目を閉じた。

明日もやるべきことは山積みなのだ。

足音が聞こえてきたが、明里は身じろぎもしなかった。

するとマットレスが軋み、続いて、背中が熱い胸板に押し当てられた。

男は明里の肩を抱き寄せ、その大きな手は腕を滑り降りて、彼女の華奢な腰を掴んだ。

しかし、明里は彼の手を掴んだ。「今日は、そういう気分じゃ……」

潤は眉をひそめた。「生理か?月末のはずだが?」

「生理じゃない」明里は目を閉じた。「したくないの」

「だが、俺はしたい」

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