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ピンク狂いの夫に、最高の「破滅」を第3話

この話は約1814字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

数日後、私は探偵からの連絡を受け、あるホテルへと向かった。

今日は愛梨の母親の誕生日だ。達也は出張と偽り、愛梨の家族や親戚を招いて祝宴を開いていた。

達也はまるで身内の一人のように、甲斐甲斐しく会場を取り仕切っていた。そこへ、幾重にもフリルの重なったドレスを身に纏い、さながらお姫様のように愛梨が歩み寄った。

彼女が達也の腕に絡みつくと、愛梨の親族や友人たちは二人を囃し立てた。

「達也さん、うちの愛梨を頼んだぞ。これから大事にしてやってくれよな」

「手塩にかけて育てた薔薇を自分で摘み取るってわけだ」

周囲の囃し立てに調子を良くした達也が愛梨の両親を「お義父さん、お義母さん」と呼んでいるのを、私は冷めた目で見ていた。

滑稽だ。彼は愛梨の両親と十歳しか違わないのに!

宴もたけなわの頃、達也が酔った愛梨をトイレへ連れて行った。

廊下で二人は体を寄せ合い、愛梨は背伸びをして達也の顎に指を這わせた。

「ご主人様って呼んで」

人が行き交う場所で、達也は少し恥ずかしそうになだめた。

「帰ってからな、いいだろう?」

愛梨は譲らなかった。結局、達也は観念して彼女を抱きしめ、何度も「ご主人様」と呼んだ。

ただの文字として読むのと、生々しい現場を目の当たりにするのとでは、まるで話が違った。

とっくに現実は受け入れたつもりだった。それなのに今、この瞬間、脳天をハンマーで殴られたような衝撃が私を襲っていた。

私は壁に手をつき、胃からせり上がるものを必死で堪えた。

ふと、達也と初めて彼の実家に帰った時のことを思い出した。

彼の両親は私の学歴が気に入らず、私の目の前であれこれと難癖をつけてきた。すると達也は私の手を引いてそのまま家を出て行ってくれた。

夕暮れの中、彼の瞳に浮かんだ涙は私の心に温かい希望の種を植え付けた。

「杏奈。この世界で、誰一人として君を悲しませることは許されない。それは、俺自身だって同じだ」

また、達也と初めて愛梨に会いに行った時の光景も蘇った。少女だった彼女はいつから大事に仕舞い込んでいたのか、くっきりと畳みジワのついた「新品」の服を着ていた。

彼女は摘んできたばかりの野花を差し出し、混じりっけのない純粋な笑顔で私たちに言った。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、絶対にずっと幸せでいてね」

なぜ、深い愛情を持つ者が裏切られるのか?

なぜ、善行を積んだ私がこんな結末を迎えなければならないのか?

全身が冷え切り、私は壁を伝ってゆっくりとしゃがみ込んだ。すぐ近くから、愛梨の甘ったるく傲慢な声が聞こえてきた。

「いつになったらあの女と離婚するの?」

彼女のピンク色のメリージェーンが達也の黒い革靴を踏みつけ、細い腕が彼の首に絡みついた。

「達也、罪悪感があるのは分かるわ。私だって時々杏奈さんに悪いなって思うもの。あんなによくしてくれたのに。でも、あなたを愛した瞬間に誓ったの。どんなに困難でも諦めないって。

離婚しなくてもいいわ。安心して、いつかあなたが私に飽きたら、遠くへ消えてあげるから。邪魔はしないわ」

その言葉に、黙っていた達也の目に焦りの色が浮かんだ。

「君を離したりしない」

宙ぶらりんだった心が奈落の底へと叩きつけられた。

私はこれまで、断崖絶壁でロープ一本に吊るされ、幾度となく恐怖に晒され続けてきたようなものだ。

そのロープが今、ついに切れた。これでようやく、全ての苦しみに終止符が打たれた。

私は全ての証拠を保存し、銀行の取引履歴をプリントアウトして弁護士に送った後、達也に電話をかけた。

十回目で、ようやく彼が出た。

「杏奈、どうした?」

私が口を開く前に、彼は不機嫌そうに言った。

「用件は後にしてくれ、今会議中なんだ……」

私は慌てず、彼の言葉を遮った。「達也、話があるの」

育った環境のせいか、私はずっと敏感で、悪い方へと考えすぎる癖があった。

その点は達也もよく知っている。

以前、彼のコートに私のものではない髪の毛が一本ついていただけで、私はそこから赤いドレスで彼を誘惑しようとした取引先の女性を突き止めたことがあった。

仕事上の付き合いを考慮して、私は気づかないふりをした。

だが達也は自ら契約解除を申し出、取引先を変えた。

当時、彼はまっすぐな目で言った。「杏奈、君が敏感なのは知ってる。だから君に少しでも不安を感じさせるようなことは絶対しない」

今、私は一言一句、噛み締めるように繰り返した。

「達也、もし私たちが過ごした十数年の日々にまだ覚えがあるなら、今すぐ帰ってきて」

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