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トップ女優の彼氏である僕はもう灰です第1話

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トップ女優である彼女と、僕はある約束をしていた――公開生配信で、彼女に派手なプロポーズを99度仕掛けること。

そうすれば、100度目のプロポーズで正式に付き合ってくれる。そんな約束だった。

なのに、その100度目。彼女は駆け出しの若手男優と、プライベートヨットの上でキスシーンの「練習」に興じていた。その笑顔はどこまでも甘く、心の底から幸せそうで。

僕は、完全に笑いものになった。

後日、彼女から申し訳なさそうにメッセージが届いた。

【101度目は、ちゃんと受け取るからね】

そう言って彼女は、まるで天女のように、僕の配信ルームへと降り立った。

だけど僕は、彼女の目の前で、彼女に宛てて書き溜めた100通のプロポーズレターに火をつけた。その中に隠していた、胃がんの診断書も、一緒に燃やした。

「101度目は、もうないよ」

* * *

トップ女優である彼女と、僕はある約束をしていた――公開生配信で、彼女に派手なプロポーズを99度仕掛けること。

そうすれば、100度目のプロポーズで正式に付き合ってくれる。そんな約束だった。

なのに、その100度目。彼女は駆け出しの若手男優と、プライベートヨットの上でキスシーンの「練習」に興じていた。その笑顔はどこまでも甘く、心の底から幸せそうで。

僕は、完全に笑いものになった。

後日、彼女から申し訳なさそうにメッセージが届いた。

【101度目は、ちゃんと受け取るからね】

そう言って彼女は、まるで天女のように、僕の配信ルームへと降り立った。

だけど僕は、彼女の目の前で、彼女に宛てて書き溜めた100通のプロポーズレターに火をつけた。その中に隠していた、胃がんの診断書も、一緒に燃やした。

「101度目は、もうないよ」

富樫汐(とがし うしお)は、燃え上がる手紙の束をただ見つめていた。

次の瞬間、危険も顧みず、自分のジャケットで必死に炎を叩き消そうとした。

彼女は目を真っ赤にして、何万人もの配信視聴者が見守る中、白いバラの花びらが敷き詰められたソファに僕を押し倒した。

「余崎成輝(よざき なるあき)、どういうつもり?私をバカにしてるの?」

マネージャーが慌てて配信を切った。

僕はただ黙っていた。

汐との距離が、これほどまでに近い。

近すぎて、彼女の体から、白河信悟(しらかわ しんご)と同じブランドのオーデコロンの香りが漂ってくるのがわかるほどだった。

ふと、大学を出たばかりの頃、彼女がまだ撮影所でエキストラをしていた時に、僕の手を握って真剣に言った言葉が蘇る――

「成輝、私、女優としてトップを取れたら、結婚するからね」

そして実際にトップ女優へと駆け上がった彼女は僕と、こんな約束を交わした――配信で彼女に派手なプロポーズを100度仕掛けること。

そうすればトップ女優の肩書きを下ろして、僕たちの関係を世間に公表する、と。

僕がライブ配信で必死にプロポーズしているそのたびに、彼女はいつも、様々な若手イケメン俳優を連れて、世界中の高級ホテルやヨットで、気ままに一夜を共にしていた。

しまいには海外の結婚の文化を体験したいなどと言って、電撃結婚と即時離婚までしてみせたのだ。

僕が喉から手が出るほど欲しかったものを、他人はいつも、いとも簡単に手に入れてしまう。

そう思うと、口元に自嘲の笑みが滲んだ。

「汐、僕たちには101度目のプロポーズはない。疲れたんだ。きっぱり終わりにしよう」

汐は二秒ほど、呆然と僕を見つめ、信じられないといった顔をした。

だがすぐに何かを得心したように、せせら笑った。

「100度目のプロポーズに、私が行けなかったから、腹いせにラブレターを全部燃やしたの?

あんな大勢の前で私に恥をかかせて、婚約者として、私の気持ちを少しでも考えたことある?」

僕にはわからなかった。これこそ、彼女がずっと望んでいた解放と自由なんじゃないのか。

なぜ彼女からは、一片の安堵も感じられないんだろう。

以前なら、彼女にそう言われれば、すぐにでも下手に出て機嫌を取り、許しを請うたものだった。

けれど今は、ズタズタになったこの心が、麻痺したように何も言いたくなかった。それに、残り少ない自分の時間を、もう彼女のために費やしたくなかった。

「100度目のプロポーズは終わった。君と僕も、終わりだ」

それを聞いた汐は、急に表情をゆるめた。僕が彼女から離れられないと、よほど確信しているようだった。

「ふざけないでよ、成輝。七年の付き合いじゃない。離れられるわけないでしょ。

大丈夫、101度目のプロポーズ、今度こそちゃんと受けるから。ちゃんと格好つけさせてあげるってば」

僕は何も言わず、彼女がかつて手作りしてくれた指輪を外し、彼女の目の前でゴミ箱に投げ捨てた。

そして、背を向けて立ち去った。

マネージャーの松本剛(まつもと つよし)が、迷いながら口を開いた。「汐、余崎さん、今回は本気なんじゃ……」

汐は、僕の去っていく背中を見つめながら、勝ち誇ったように言い放った。

「本気なんて、待ってなさい、三日もすれば、また泣きついて『結婚してくれ』って言ってくるに決まってるわ。何年もずっとこうなんだから。あの人は私から離れられないのよ」

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