ストロベリーフレーバーを好きの彼氏を捨てた第1話
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気持ちが最も高まったその瞬間、ふと、何かが違うと感じた。
私・根元詩織(ねもと しおり)は身を起こし、明かりをつけた。ゴミ箱の中に、この家では一度も買ったことのないストロベリーフレーバーのパッケージが見えた。
私は彼氏に、どこから来たのかと問いただした。
彼は一瞬固まり、それから私を抱きしめた。
「先週、飲みすぎてさ。あのクソどもが無理やり押しつけてきたんだよ。
あいつらのこと、お前も知ってるだろ。普段からろくなことしない連中だ。嫌なら捨てればいい」
彼のキスが、また強引に降ってきた。
たしかに商売の場では、下品な冗談が飛び交うことも多い。
ここでさらに問い詰めれば、むしろ空気の読めない女として雰囲気を壊すだけだ。
終わったあと、彼はシャワーを浴びに行った。
私は寝つき用の音楽を流そうと、Bluetoothイヤホンを手に取った。
そのとき、不意に若い女の子の甘えた声が聞こえてきた。
「だから言ったじゃないですか、彼女、いちごアレルギーだからってそんな騒ぐことはないって。ほら、同じように気持ちよさそうに声出してるじゃないですか?
わざわざ二人のために時間を計ってあげたんですよ。2時間23分だって。白野社長って、ほんと体力ありますね……」
私ははっと我に返った。
シャワーから出てきたばかりの彼を一瞥し、こう返した。
「私たちのために散財して盛り上げ役までしてくれるなんて、申し訳ないわね。いっそ直接来て、味わってもらえば?」
* * *
気持ちが最も高まったその瞬間、ふと、何かが違うと感じた。
私・根元詩織(ねもと しおり)は身を起こし、明かりをつけた。ゴミ箱の中に、この家では一度も買ったことのないストロベリーフレーバーのパッケージが見えた。
私は彼氏に、どこから来たのかと問いただした。
彼は一瞬固まり、それから私を抱きしめた。
「先週、飲みすぎてさ。あのクソどもが無理やり押しつけてきたんだよ。
あいつらのこと、お前も知ってるだろ。普段からろくなことしない連中だ。嫌なら捨てればいい」
彼のキスが、また強引に降ってきた。
たしかに商売の場では、下品な冗談が飛び交うことも多い。
ここでさらに問い詰めれば、むしろ空気の読めない女として雰囲気を壊すだけだ。
終わったあと、彼はシャワーを浴びに行った。
私は寝つき用の音楽を流そうと、Bluetoothイヤホンを手に取った。
そのとき、不意に若い女の子の甘えた声が聞こえてきた。
「だから言ったじゃないですか、彼女、いちごアレルギーだからってそんな騒ぐことはないって。ほら、同じように気持ちよさそうに声出してるじゃないですか?
わざわざ二人のために時間を計ってあげたんですよ。2時間23分だって。白野社長って、ほんと体力ありますね……」
私ははっと我に返った。
シャワーから出てきたばかりの彼を一瞥し、こう返した。
「私たちのために散財して盛り上げ役までしてくれるなんて、申し訳ないわね。いっそ直接来て、味わってもらえば?」
電話がプツンと切れた。
私がじっと見つめているのを見ると、白野和也(しらの かずや)はバスタオルをはだけた。
「まだ欲しいのか?」
「あなたのあの若い彼女、嫉妬しないの?」
私はイヤホンを指さして、彼に笑ってみせた。
「自動でそっちにつながってたよ」
彼ははっと何かに気づき、素早くスマホに目をやった。
そしてその場で固まり、喉仏が上下した。
私は彼が心の中で抱いた疑問に答えた。
「聞こえてたよ。ストロベリーフレーバーをわざと入れたのは彼女でしょ。
それに、あなたのこと褒めてたよ、持ち時間が長いって」
和也の顔つきがみるみる険しくなった。
「女の子にゴムを買わせるなんて、最低。次からは自分でお金出しなよ」
出て行こうとした瞬間、手首を彼につかまれた。
「会社のアシスタントの子だよ。いつも冗談ばっかり言うんだ。
でも安心して。お前が思ってるような関係じゃない。ただ社内の飲み会で王様ゲームに負けただけで、俺もズルするわけにはいかなくて……」
私の心は、さらに冷えきった。
彼はまともな言い訳を考える気すらないのだ。
「好きにすれば。引き出しに残ってるゴム、無駄にしないでね」
「詩織!」
和也の手に力がこもった。
「そこまでする?俺のスマホは好きに見ていい。それに、何でもお前に報告してるだろ。それでも俺をそこまで信用できないのか?」
私は彼の目尻に刻まれたしわを見つめた。
ふと、もう七年も経ったのだと思い出した。
彼のために、私は故郷の安定した仕事を辞めた。
この地価の高い都に残り、素うどん一杯すら分け合う生活だって、喜んで受け入れた。
彼が私に家庭を築いてやると言ったときの、あのまぶしい笑顔を、私は永遠に忘れられない。
地下室に五年も住んで、私はようやく彼と一緒に苦労を乗り越えた。
友人たちはみんな、男は金を持つと悪くなるから気をつけろと言った。
私は、彼だけは例外だと信じていた。
でも今、この汚された寝室を見ていると、結局はみんな同じなのだと、そう信じてしまった。
私はため息をつき、彼の見え透いた欲望を暴かなかった。
「疲れた。もう寝る」
私はクローゼットへ布団を取りに行った。
開けた瞬間、違和感を感じた。
シーツも毛布も、全部目に痛いほどの緑色だった。
私は昔から白しか好まない。
和也は軽い赤緑色覚異常で、身の回りにこの二色を取り入れたことは一度もない。
「春になったし、緑のほうが華やかでいいかと思って」
彼の説明は相変わらずそっけなかった。
彼を相手にせず、私は立ち上がってリビングへ向かった。
ミニマルな内装の中に、場違いな飾り物がいくつも増えていた。ソファにはぬいぐるみが置かれ、壁にはピンクの星が貼られていた。
カーペットまで、今いちばん流行っているキャラクターものに替わっている。
なるほど。出張から戻った私の目を、和也がふさいだわけだ。
でも彼は、こういうごちゃごちゃした飾りが大嫌いだったはずなのに。
スマホが突然震える。
見知らぬ番号からメッセージが届いた。
【根元さん、私は白野社長のアシスタントの真琴です。
さっきの電話、あれはただの罰ゲームなんで、気にしないでくださいね!もし怒らせちゃったなら、ごめんなさい!
実はですね、社長とこの三日がかりで部屋を改造したんですよ。社長が『帰ってきた時に部屋が寒々しいと、息が詰まっちゃう』って言うから。随分明るくなったと思いません?
だからこれ、私からのお詫びだと思ってもらえませんか?根元さんなら絶対気に入ってくれるはずです!】
和也は緊張した面持ちで、私の返事を待っていた。
「真琴も善意で俺を手伝ってくれただけだ。あの子も謝ったんだし、お前もそんなに目くじらを立てるなよ」
爪が掌に食い込み、ちくりと痛んだ。
私が自ら飾りつけた新婚の家は、めちゃくちゃにされた。
誠意のかけらもない一言の謝罪。画面いっぱいに「ありがたく思え」とでも言いたげな挑発がにじんでいた。
それなのに、私に寛大でいろと?
私はすべてを捨てた。
和也は複雑な眼差しで私を見つめている。
そして最後には、意地を張るようにドアを乱暴に叩きつけて出て行った。
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