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スキンシップ恐怖症が治った彼氏の遅すぎた後悔第1話

この話は約3321字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

交際してからの五年間、五十嵐海吏(いがらし かいり)は水瀬珠羽(みなせ みう)をこの上なく大切に扱ってきた。

あらゆる記念日を記憶し、彼女の小さな心の機微にも細やかに気を配り、物質面でも決して出し惜しむことはなかった。

だからこそ海吏の誕生日の夜、珠羽は一週間の出張予定を無理やり五日間に圧縮し、サプライズで彼を喜ばせようと、予定を早めて帰途についた。

彼女がプレゼントを手に、個室の扉の前に立った時のことだ。

個室の中から、海吏の友人の笑い声が聞こえてきた。

「海吏、新星テクノロジーのあの融資案件だけどさ、本当に珠羽の名義で20パーセントも持たせるつもりかよ?さすが、太っ腹なお前らしいな!」

「本当だよな。今日は主役のお前が、どうして逆に彼女へプレゼントを用意してるんだ?」

ほどなくして、彼女を安らがせる海吏の声が響いた。

「珠羽は俺の愛する女だ。俺たちの資産やリソースを共有するのは当然のことだろう」

珠羽の口角は無意識に上がり、心の奥底に温かいものが広がっていく。

* * *

交際してからの五年間、五十嵐海吏(いがらし かいり)は水瀬珠羽(みなせ みう)をこの上なく大切に扱ってきた。

あらゆる記念日を記憶し、彼女の小さな心の機微にも細やかに気を配り、物質面でも決して出し惜しむことはなかった。

だからこそ海吏の誕生日の夜、珠羽は一週間の出張予定を無理やり五日間に圧縮し、サプライズで彼を喜ばせようと、予定を早めて帰途についた。

彼女がプレゼントを手に、個室の扉の前に立った時のことだ。

個室の中から、海吏の友人の笑い声が聞こえてきた。

「海吏、新星テクノロジーのあの融資案件だけどさ、本当に珠羽の名義で20パーセントも持たせるつもりかよ?さすが、太っ腹なお前らしいな!」

「本当だよな。今日は主役のお前が、どうして逆に彼女へプレゼントを用意してるんだ?」

ほどなくして、彼女を安らがせる海吏の声が響いた。

「珠羽は俺の愛する女だ。俺たちの資産やリソースを共有するのは当然のことだろう」

珠羽の口角は無意識に上がり、心の奥底に温かいものが広がっていく。

海吏はいつもそうだった。私生活でも仕事でも、いつだって無条件で珠羽を支えてくれた。

だが次の瞬間、海吏は突然こう言った。

「それに、俺と絵凛は今夜、初めて体を重ねるつもりだ。

あれは、俺から珠羽への埋め合わせなんだ」

ドアを押しかけていた珠羽の手がピタリと止まる。あまりの言葉に、幻聴を疑うほどだった。

個室の中も水を打ったように静まり返った。直後、信じられないといった風に、いくつかの驚きの声が上がった。

「おい待てよ!お前、スキンシップ恐怖症じゃなかったのか?珠羽にすら指一本触れられないのに!桜井絵凛(さくらい えりん)っていう心理カウンセラーは、そんなにすごい腕なのか?」

友人の声には隠しきれない動揺が混じっていた。

海吏は酒を一口あおり、低く笑い声を漏らした。

「ああ、俺自身も驚いている。ここ数年、この病気のせいで珠羽に触れることも抱きしめることもできず、近づくだけで吐き気を催しそうになっていたからな。

絵凛との最初のカウンセリングの時も、正直全く期待していなかったんだ。

彼女が『生理的療法』を提案してくるまでは。生理的な欲望を利用して、心理的な認知反応を再構築するというやり方だ。

最初は指先が触れ合うだけの基礎的な段階だったが、次第に抱き合い、キスもできるようになった。それは珠羽からは決して得られなかった、骨の髄まで痺れるような悦楽だった。俺はすっかり……やみつきになってしまった」

珠羽は全身を強張らせてドアの外に立ち尽くしていた。握りしめたプレゼントの箱の角が、手のひらに痛いほど食い込んでいる。

それは彼女が丸三年もの歳月を費やし、彼のスキンシップ恐怖症に効くようにと特別に調合したお香だった。

彼にあと一センチ近づこうと必死に努力していたその裏で、彼が別の女の体に溺れていたなんて、思いもしなかった。

かつて彼の病気が原因で、珠羽も腹立たしさと悔しさから彼を問い詰めたことがあった。

「海吏、本当は私のことなんて好きじゃないんでしょ?だから触れたくないのね?」

あの時、海吏は長い沈黙の末、ついに一部のカルテを彼女の前に差し出した。

幼い頃、父が母以外の女を家に連れ込むのを目撃したトラウマが原因で、彼はそれ以来他者とのスキンシップを激しく拒絶するようになった。

物心ついた頃から誰とも親密な関係を築けなかった彼が、珠羽に出会い、体の本能に逆らってでも彼女に近づきたいと願うようになった。

真実を知った瞬間、珠羽の心の中では、悔しさよりも彼への愛おしさが勝った。

彼女は彼の治療を全力でサポートすると決心し、あらゆる方法を試したが、その道のりは絶望的なほど緩慢だった。

二人が手を繋いでいられた最長記録は、わずか一分二十五秒だった。

その後、珠羽はようやく絵凛の存在にたどり着いた。

絵凛が七年にわたり研究してきたテーマが海吏の症状に合致すると聞き、居場所を突き止めるや否や、珠羽は真っ先に彼女の診察を予約した。

幸運なことに、わずか最初の治療クールを終えただけで、海吏は「桜井先生の接触には不思議と拒絶反応が起きないみたいだ」と報告してくれた。

治療が深まるにつれ、海吏の症状が少しずつ改善していくのを、珠羽は確かにこの目で見ていた。

だが同時に、彼の口から「絵凛」の名前が出る回数も次第に増え、その響きはごく自然で親しげなものへと変わっていった。

珠羽の誕生日にすら、彼は絵凛に付き添って遊園地へ行ったきり、約束をすっぽかした。

深夜になってようやく帰宅した彼を待ち受けていたのは、すっかり冷めきった手料理と、涙目で立ち尽くす珠羽の姿だった。

だが海吏は少し疲れたような顔でこう弁明した。「すまない、珠羽。今日は新しいアプローチの治療を試していて、予想外に時間がかかってしまったんだ」

彼は赤く腫れた珠羽の目元を見つめ、たまらず彼女を抱きしめようと腕を伸ばした。

「一秒でも早く完治させれば、一秒でも早くお前とちゃんと結ばれるようになる。珠羽、俺の気持ち、分かってくれるよな?」

あの時、彼の瞳に宿っていた愛はあまりにも深く、これまでの献身的な優しさも相まって、珠羽は少しずつ心の疑念を消し去っていった。

彼が完全に病を克服する日を、二人が本当の意味で結ばれる日を、ただひたすらに待ち続けていたのだ。

今日この瞬間、彼と絵凛の間で一体どんな「治療」が行われていたのかを知るまでは。

友人たちもまた、この想定外の展開に言葉を失った。しばしの沈黙の後、一人が口を開いた。

「普通の女なら、自分の婚約者が他の女と寝るなんて絶対に受け入れられないぞ。たとえそれが治療って名目でもな。もし珠羽が知ったら……彼女の性格じゃ、到底許さないだろうな」

海吏のいささかの揺らぎもない声が響いた。

「なら、知らせなければいい。

俺がやってることはすべて珠羽のためだ。もしこれを知って俺を責めるようなら、俺が彼女を見損なっていたってことさ」

ここまで聞いた珠羽は力なく壁に背を預けた。血の味が滲むほど唇を強く噛み締め、辛うじて喉から漏れそうになる嗚咽を飲み込む。

もう一欠片の未練もなかった。彼女は一切の躊躇なくきびすを返し、その場を離れた。

クラブの外に出ると、夜風に混じる霧雨が容赦なく肌を叩き、珠羽の心の芯まで凍えさせていく。

すぐにスマートフォンが振動した。海吏からの着信だったが、彼女は迷わず通話拒否のボタンを押した。

間髪入れずに彼からメッセージが届く。そこには、相変わらず甘く親しげな言葉が綴られていた。

【珠羽、今日俺が一番会いたいのはお前だけだよ。ずっと仕事にかまけて俺を放置したんだから、帰ってきたらたっぷり埋め合わせしてもらうからね】

画面の文字を見つめているうちに、珠羽の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

彼女は一切返信しなかった。十分後に涙を乱暴に拭い去ると、大学のシステムを開き、専攻変更の申請書を送信した。「メンタルヘルス・行動研究」から「臨床医学」への転籍申請だ。

その後、彼女は五年間一度も連絡を取っていなかった番号に、静かに発信ボタンを押した。

「前の約束、まだ有効かしら?」

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