もう、引き止めない第2話
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以前、私は晶也のことを本気で大切に思っていた。彼が口を開けば、何でも与え、何でもしてあげたかった。
でも今、彼自身の手で私は現実に引き戻された。
林夢乃(はやしゆめの)が帰国して以来、彼の行動はすべて彼女のため。
私が彼の未来を共に歩むはずの人間であることなど、もう忘れてしまっている。
私の返答に、晶也は激怒した。「どういう意味だ? 嫌だって言いたいのか?夢乃は僕の親友だ。彼女を満足させられないなら、お前なんかと結婚しない」
そう吐き捨てて、ドアを叩きつけて去っていった。
苛立ちを抑えきれず、公園へランニングに出かけた。
一周走ったところで、涼馬から電話がかかってきた。
あの仏頂面の涼馬のことを思い浮かべ、2秒躊躇してから応答した。
「一度僕の船に乗ったら、もう僕のもんだ。逃げたら、縛ってでも連れ戻すからな」
第一声から、まるで脅し文句だ。
私は黙ったまま聞いていると、涼馬は続けた。
「マイナンバーカードを先に送れ。婚姻届を出す」
「気が変わるのが怖いからな」
涼馬、あんた何かおかしい。
私は頭の中で、彼が結婚を口実に私を苦しめるシナリオを一万通り思い描いていた。
それでも、ようやく言えたのは一言だけだった。「結婚式で会いましょう、深水さん」
すると突然、背後から晶也の声が飛んできた。
「僕たちの結婚式に深水涼馬を呼ぶつもりか? 許さない」
彼はまるで敵を見るような目で私を睨みつけた。
「藤原志咲、深水涼馬と付き合うなと言っただろう。あいつはあなたに下心がある。結婚式に招待なんかしたら、黙っていないからな」
私はまだ一言も返していないのに、彼は捨て台詞を吐いた。
晶也は昔から涼馬を毛嫌いしており、理由もなく敵意をむき出しにしていた。付き合い始めた頃、涼馬と頻繁にメッセージのやり取りをしているのを知ると嫉妬して爆発し、その後私は自然と涼馬との連絡を絶っていた。
だが今、彼は「深水涼馬はあなたに下心がある」と言ったのか?
問い詰めようとしたその時、夢乃がふらりと晶也の肩にもたれかかった。
「涼馬、痛いよ」
初めて気づいた。二人が指を絡めて手を繋いで散歩していたことに。
晶也は咳払いをしたが、手を離そうとはしなかった。
夢乃は甘ったるい眼差しで晶也を見つめ、わざとらしく私に謝罪した。
「志咲さん、ごめんなさい。晶也と式の段取りを確認していただけなの。気にしないでね」
「あなたが私を襲わせた件も、お母様のお墓を荒らしたことも、私は口外しない。でも晶也を傷つけないで。本物の愛は試しちゃいけないものよ」
茶番劇なんて見たくない。背を向けて立ち去ろうとした。
「そこまで望むなら、今夜でもお前を殴って、お母さんの墓でもぶっ壊してやるわ」
バチン!
晶也が私の頬を思いきり叩いた。
「藤原志咲、そんなに卑劣な女だったのか」
彼の眉間に怒気が渦巻き、胸を荒げていた。
私が卑劣?
他人の一言を真に受け、私と過ごした五年の歳月には、ひとかけらの信頼もないの?
怒りが全身を駆け巡り、晶也に詰め寄ろうとすると、夢乃が前に立ちはだかった。
「志咲さん、お願い。式が終わったら晶也を返すから」
「私の周りの人も、晶也も傷つけないで」
彼女は跪こうとした。
晶也は慌てて彼女の腰を抱き、私を睨みつけた。
「藤原志咲、金持ちの娘だからって好き放題するな!」
「僕がどれだけ嫌いか知ってるだろう? 結婚したいなら大人しくしてろ」
彼は式前まで二人の前に現れるなと警告して去った。
だが翌日、晶也から連絡が入った。
開口一番、怒鳴り声が響いた。「藤原志咲、本当に林伯母の墓を掘ったのか!?お前がそんな女だとはな」
私は戸惑い、助手に調査を依頼すると、衝撃的な事実が判明した。
夢乃の母親は……死んでいなかった。
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