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もう戻せない、過去のありふれた日常第2話

この話は約1847字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

写真の中で、眞一郎の目は驚くほど輝き、腕の中の女性を見つめていた。

彼がインスピレーションを求めて、一時的に道を見失っているだけだろう……

最後の望みを抱き、私は彼に電話をかけた。

呼出音は長く鳴り続け、ようやく応答があった。背景はパーティーの声。彼の声は酒のせいでしわがれて、苛立ちが滲んでいた。

「用事?」

私の声は震えていた。

「あのニュース……本当なの?」

彼は軽く笑った。

「当たり前でしょう?

深雪、そんなに世間知らずでいるなよ」

電話は切られた。

翌日、私は画室に戻り、吐き気をこらえながら、昨夜の散らかりを掃除した。

彼がかつて好きだった香りのルームスプレーをふり、彼にとって慣れ親しみ、安心できる環境を作ろうとした。

彼はただ道に迷っているだけ。私が連れ戻さなくては。

夕暮れ時、眞一郎は戻ってきた。

空中に漂う香りを嗅いだ彼は、すぐに眉をひそめた。

「誰が勝手に片付けろと言った?」

埃ひとつない画室を見つめる彼の目には、煩わしさしかなかった。

「この何も変わらない雰囲気が、すべてのインスピレーションを殺すって、わかってるのか?」

涙が床に落ちた。私は子供のように無力だった。

「芸術は涙を信じない。芝居はやめろ」

眞一郎はタバコに火をつけ、うんざりしたように言った。

私の心は冷めていく。涙を拭い、その場を去った。

その日から彼は頻繁にモデルを替え始めた。

最初はクラブのDJ、花柄のタトゥーに唇ピアスの女性だ。

彼は眩いネオン管を使って幻惑的な色彩の絵を描いた。

描き終えた後、彼は長い間キャンバスを見つめ、やがてイライラとナイフでそれを引き裂いた。

「ちくしょう!これじゃない!」

次は一流のバレリーナを呼び、その儚さと優雅さを描こうとした。

彼女に冷たい画室の中で裸足のまま、足首が腫れるまで回転させ続けた。

だが、出来上がった作品は空虚で、技巧ばかりが目立ち、魂の抜けた美しい抜け殻のようだった。

またもや失敗。

今度はイーゼルを蹴り倒し、高価な絵の具を床に散らした。

ふと、彼が初めて私の全身像を描いた時のことを思い出した。私の両目の輝きを捉えられなくて、一週間も自分を責め続けたものだった。

彼は言った。私に関することは全て、完璧でなくてはならない、と。

後に彼はそれを成し遂げた。私に光をもたらした彼は、私の目の中の光を捉えたのだった。

『深雪』という絵で、彼は一躍有名になった。

だが今、彼は自らの手でかつての美しさを葬り去り、新しいミューズを見出せずにいる。

彼はさらに狂おしくなった。

傍にいる女は次々と変わり、私たちの家は彼の淫乱なショーステージと化した。

リビングでは、高級ワインが絵の具代わりに、若い身体へと振りかけられた。

彼はもう絵を描かず、カメラで狂ったように撮影だけを繰り返す。

ソファで絡み合う身体を、虚ろな瞳を。

私はゲストルームに隠れたが、ドア一枚ではあの喘ぎ声は遮れない。

彼が私を取り替えようとして狂気に陥った。彼の失敗を見るたび、私は鈍い刃で心を切り刻まれるようだった。

苦痛と同時に、歪んだ快感さえ覚えた。

芸術の世界にはすぐに噂が広まった。

眞一郎は才能が枯れた、深雪を離れると彼は何者でもない、と。

その言葉は彼の哀れなプライドを火のように焼き付けた。

彼はすべての失敗を、私のせいにした。

「全部お前のせいだ!お前の古臭いオーラが、俺のインスピレーションを汚してる!」

彼の両目は真っ赤で、追い詰められる怒った獣のようだった。

そして彼は私のものを、一つ一つ、寝室からゲストルームへと運び始めたのだ。

私の服、私の本、長年使っていた櫛さえも。

「俺には芸術だけの空間が必要だ。お前に関わるものは、ここにあってはならない」

この家の中にいながら、私は完全に締め出されてしまったのだ。

がらんどうのクローゼットを見て、最初に借りたアパートのことを思い出した。

小さな窓一つからしか光が差し込まないあの部屋。

彼は唯一日の当たる一角を私に譲り、私がそこで本を読めるようにしてくれた。

「お前がいる場所が、俺の家だ」

彼の顔に浮かんだ笑みは、光のように、温かく澄みきっていた。

彼は私の最後のコートを寝室の外に投げ出し、私の目の前で、バタンとドアを閉めた。

私は冷たいゲストルームで、一睡もできずに立っていた。

私が完全に絶望したその時、ギャラリーの知人から一本の電話が入った。

相手の声は、気を遣いながら、こちらの反応を探っているような調子だった。

「深雪さん……眞一郎さん、どうかしましたか?

彼、郊外の廃工場を借りて、そこで何か大きなことをやるって」

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