どうか、他人でいられますように第1話
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幼なじみを亡くした高橋涼太(たかはし りょうた)は、十年もの間私を恨んできた。
私たちの結婚式の翌日、彼は部隊の上層部に申請を出して、最北の地へと赴任した。
十年の歳月。数え切れないほどの手紙を送り、あらゆる努力を重ねてきた私がもらったのは、いつも同じ一言——
「本当に悔いているなら、いっそ死んでくれ」
それなのに、私が拉致された時、彼はたった一人でアジトに乗り込んで私を救い出した。そのために数発の銃弾を受けた。
死の間際、最後の力を振り絞って、彼は私の手を激しく振り払った。
「この人生で……一番後悔しているのは……お前と結婚したことだ……
もし来世があるなら、頼む……もう俺に関わらないでくれ……」
葬儀の場で、涼太のお母さんは号泣した。
「涼太……無理やり結婚させて、母さんが悪かった……」
憎しみに満ちた目で、涼太のお父さんは私を睨みつけた。
「桜もお前のせいで死んだのによ!この疫病神め、お前が死ねばよかったんだ!」
私たちの結婚を強く応援してくれた連隊長までもが、首を振ってため息を漏らした。
「恋人たちを引き裂いてしまったのがこの私だった。高橋隊長に……申し訳ない!」
誰もが涼太のことを惜しんでいる。
もちろん、私も。
医療支援隊から除名された私は、その夜、農薬を飲んでこの命を自ら絶った。
が——
再び目を開けた時、結婚式の前夜に、私は戻っていた。
今度こそ、彼ら全員の望みを叶えよう。
* * *
幼なじみを亡くした高橋涼太(たかはし りょうた)は、十年もの間私を恨んできた。
私たちの結婚式の翌日、彼は部隊の上層部に申請を出して、最北の地へと赴任した。
十年の歳月。数え切れないほどの手紙を送り、あらゆる努力を重ねてきた私がもらったのは、いつも同じ一言——
「本当に悔いているなら、いっそ死んでくれ」
それなのに、私が拉致された時、彼はたった一人でアジトに乗り込んで私を救い出した。そのために数発の銃弾を受けた。
死の間際、最後の力を振り絞って、彼は私の手を激しく振り払った。
「この人生で……一番後悔しているのは……お前と結婚したことだ……
もし来世があるなら、頼む……もう俺に関わらないでくれ……」
葬儀の場で、涼太のお母さんは号泣した。
「涼太……無理やり結婚させて、母さんが悪かった……」
憎しみに満ちた目で、涼太のお父さんは私を睨みつけた。
「桜もお前のせいで死んだのによ!この疫病神め、お前が死ねばよかったんだ!」
私たちの結婚を強く応援してくれた連隊長までもが、首を振ってため息を漏らした。
「恋人たちを引き裂いてしまったのがこの私だった。高橋隊長に……申し訳ない!」
誰もが涼太のことを惜しんでいる。
もちろん、私も。
医療支援隊から除名された私は、その夜、農薬を飲んでこの命を自ら絶った。
が——再び目を開けた時、結婚式の前夜に、私は戻っていた。
……
「軍功を盾に結婚させたとしても、お前を愛することなんて絶対にあり得ない!」
十年ぶりに、この聞き慣れた冷たい言葉を再び耳にした。
青春時代の涼太が、こうして私の目の前に、生きて立っている。
軍服を身につけた彼は実に颯爽としている。しかしその目に隠しきれない嘲りに、私の胸がチクリと痛んだ。
私・佐藤美咲(さとう みさき)は死んでいなかった。それどころか、まさに十年前へと戻ってきたのだ。
込み上げる切なさを押し殺し、この十年間想い続けた顔を瞬きもせずに見つめている。
「それぐらいは分かっています。あなたが愛して、そして結婚したい相手も、小林桜(こばやし さくら)なのでしょう?」
僅かに眉をひそめ、涼太は警戒の色を目に浮かべた。
「分かればいいんだ、裏でこそこそ動くなよ。そうでないと、俺は……」
「あなたたちの幸せ、見届けます」
静かに、彼の言葉を遮った。
その言葉に、しばらく私をじっと見つめた涼太は、冷たく鼻を鳴らした。
「戯言を聞く暇はない、さっさと書類に署名しろ」
結婚届を私に投げ渡すと、涼太はそのまま立ち去った。
あの遠ざかっていく背中に、この胸が再び締め付けられた。
前世の私は、救いがないほど、彼を愛していた。
そして危険を顧みず私を救ってくれた彼も、きっと同じ感情を抱いていると、私は見事に勘違いをしていた。
「あの子は口が悪いだけなんだ。あなたを好きでなければ、命を懸けて助けにいくはずがないだろう?」……どうやら、涼太のご両親までも、勘違いしたようだった。
結婚してから、自分がどれほど間違っていたかを、私はようやく思い知った。
桜の自殺を知った涼太は、すぐに最北の地へと赴いた。
——私一人だけを残して。
十年の歳月を無為に過ごし、そして最後に見捨てられ、蔑まれたあの私。
まだはっきりと覚えている。彼に会いに行く時に不意に聞こえた、アルコールに負けた彼が戦友に語った本心の言葉を。
「美咲と結婚するべきじゃなかった。親の言うことを聞くべきじゃなかった。何より、桜が一番俺のことを必要としていた時に、傍にいてあげるべきだった!
本当に……後悔してる……」
そして、彼が死の間際に告げた、もう関わるなという言葉が、私を完全に打ち砕いた。
結局、彼を深く愛したこの十年は、彼を深く苦しめた十年でもあったのか。
彼が何よりも後悔すべきなのは、私と出会ってしまったことなのだろう。
幸いなことに、私はやり直す機会をもらった。
——今度こそ、私に彼を死なせたりしない。
二人の幸せを見届けることで、前世の恩を返そう。
この全てを終えたら、きっぱりと別れよう。
これからの人生、もう関わらなくていい。
……
地面に落ちた結婚届を拾い上げ、女性側の氏名欄に、小林桜としっかり書き込んだ。
そして私は外へ出て、車を待ち始めた。
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