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その浮気、後悔すればいい第1話

この話は約2277字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私はパソコン画面に映るあるメールをじっと見つめ、キーボードを打つその手を硬直させていた。

明日は私の会社で重要商品の発表会が行われる。しかし、この時気づいたのだ――私が3年もの歳月をかけて編みだした努力の結晶である計算式の特許申請人がマッシュの秘書であるソフィの名前になっている。

そしてマッシュのオフィスに駆けこんで彼にどういうことなのか説明を求めた。

ソフィは彼のデスクの上に両足を組んで、まるで自分は全く悪くないという顔をしていた。そしてうっかり名前を書き間違えたのだと言った。

「ただの書類のミスだろう」マッシュが椅子から立ち上がって、ソフィを守るように前に立ちはだかった。「特許は結局会社のものだろう。何か問題があるのか?」

その言葉に私は耳を疑った。「マッシュ、これは私の研究の成果なのよ!」

「エマ、君はもう35歳だろう」彼は眉をしかめた。「どうしてたった23歳の若いインターンにそんなにむきになるんだ?」

彼はくるりとソフィのほうへ体の向きを変えた。「明日から、君が新しい技術部のチーフだ。エマは……、少し休んだほうがいいだろう」

私はその場に呆然と立っていた。10年という結婚生活、そして5年を費やして会社を共同経営してきた。その努力をこのように軽くあしらわれてしまったのだ。

30分後、ソフィがSNSを更新した。写真に映る彼女はマッシュの膝の上に座り、二人でシャンパンのグラスを持って乾杯していた。

「ありがとう世界一の最高のボス!あなたの可愛い子猫になるわ」

その下にはマッシュのコメントで――三つのハートマークが並んでいる。

その瞬間、私はパソコンを閉じ、携帯を手に取った。

「こんにちは、サンダハレ新規投資家のアレク社長ですか?やっぱり考えを変えました。私もそちらの会社で働かせていただきたいです」私はそこで少し考えた。「そうだ、あのまだ公にしていない計算式のアップグレード版なんですけど、私の手元に完全な技術案があります。いくらで買い取っていただけますか」

それから、私は八桁の数字が書かれている小切手を手にリベーノ国へと向かった。マッシュは狂ったように私の行方を探すことになるのだ。

* * *

私は、素晴らしい復讐劇を決意した。私の発明した特許を盗んでいった夫の不倫相手と、私を裏切った夫には代償を払っていただこう。

新しい会社との契約サインを済ませて出てくると、ここラントにある最も予約が難しいと有名なミシュランレストランへと向かった。

今日というこの日のために、事前に二か月前から予約していたのだ。

今日はマッシュとの結婚10周年記念日だ。もともと仕事が終わってから、彼にサプライズをしようと計画していた。

それがまさか彼のほうからあんな「サプライズ」がもらえるなんてね。

ウェイターが私が真心を込めて準備していた記念日の贈り物を手に持って来た――それは、ボックスに入った美しい手作りのチョコレート。わざわざノデハンに発注して作ってもらったものだった。

そのチョコレートの一粒一粒に小さな仕掛けが施されている。

私はボックスの包装に「10周年記念おめでとう」と金字で書かれてある文字を見つめ、なんだか視界がぼやけてきた。

10年前、私たちはサノストで、シンプルな結婚をした。あまりに貧しくて安いチョコレートを一つ彼と一緒に分けて食べた。それが結婚式の甘いケーキ代わりだった。

マッシュは指についたチョコレートを舐めながら言った。「10年経ったら、俺たちの結婚10周年の時には、絶対に盛大な結婚式を君にプレゼントするから」

このボックスのチョコレートの中にある一粒には、あるアンティークの鍵が仕込んである――それは私がノデハンで私たち二人のために買ったバカンスの過ごせる小さなお家の鍵だ。

しかし今、このプレゼントは意味を失ってしまった。

ウェイターを呼ぼうとした時、ちょうどマッシュがテレビ電話をかけてきた。

「エマ、早退してどこに行ったんだ?それからあの退職届のメールはどういうことなんだ?

ソフィはただ名前を書き間違えただけだ!それなのにお前はこんな些細なことで大騒ぎするつもりか。辞職すると俺を脅そうってか?」

私は苦笑いした。「そうじゃないわ。私は本気で辞めるつもりよ」

携帯画面の向こうに映っているマッシュはそれを聞いて少し驚き、口調を幾分か柔らかくした。「俺がソフィを技術部のチーフにしようとしているのが原因なのかい?俺はただ若者をもっと激励してやりたかっただけなんだ。社員たちの中で君が俺の妻だと知らない人間はいないだろう?君に何も役職がなくたって、社員たちはソフィに対してと同じように君の言うことをちゃんと聞くから。

ある程度頭を冷やしてから帰ってきなよ。俺は今夜は重要な取締役会だから、夕飯は家で食べないからね」

それを聞いた瞬間、私の心臓はドクンと波打った。彼は本当に嘘をつくのがうまい。

ちょうどこの5分前、ソフィがあるメッセージを私に送ってきたのだ。【マッシュがこの都市で一番最高のユセバニア料理屋さんに昇級祝いに連れて行ってくれるらしいの。彼ってば、一万も使って予約を入れたのよ!】

なるほど彼の言う重要な会議というのは、この可愛い愛人を祝うためのものなわけか。

結婚してからの数年間、彼はまだ記念日を覚えていた。そして10年目、今日が一体何の日なのかもすっかり忘れられてしまった。

私はテーブルいっぱいに並べられた美味しそうなユセバニア料理を見つめ、ナイフとフォークを手にした。

10年間の努力が、このような結果に終わるのだ。

この一人きりの晩餐を、この結婚生活の区切りとしよう。

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