さよなら、帰り道を忘れた人第2話
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子供の骨壺を光希の腕に押し付け、私が自分でハンドルを握った。
道中、終始無言だった。
光希は少しバツが悪そうに、頭を抱えながら謝ってきた。
「穂香、ごめん。昨夜のうちにルートを確認しておいたのに、どうして今日また迷ったのか……」
私はふと、昨日彼が寝る直前まで見ていた地図の画面を思い出した。
あのマークされていた場所は、葬儀会場ではなく翠衣の家だったのだ。
光希は本当にひどい方向音痴で、幼い頃から数え切れないほど迷子になり、その度に誰かが彼を連れ戻しに行かなければならなかった。
結婚前、友人たちも彼をからかっていたほどだ。
「穂香はもはや光希の専用ナビだな。二人の間に生まれる子供は、絶対お前に似ちゃダメだぞ」
だが今になってようやく気づいた。彼にもちゃんと覚えられる場所があるということに。
あの曲がりくねった複雑な道も、彼にとっては決して障害ではなかった。
彼は明かりを灯し、一晩中だって地図を見つめることができる。
子供を失って涙に暮れる妻のことなど、微塵も気に留めずに。
私はいったい、彼にとって何なのだろうか?
葬儀場に着き、小さな骨壺をお墓に納めると、こらえきれずに涙がこぼれ落ちた。
最後のお別れを告げる最も大切な追悼の場面で、あろうことか、光希は立ち上がり、その場を離れようとした。
「穂香、翠衣がトラブルに巻き込まれたみたいで、俺、すぐに行かなきゃならない」
彼に置き去りにされるのは、これで一体何度目だろうか。約束していた妊婦健診の日も、彼は電話一本で私を放り出し、慌ただしく立ち去った。
結婚記念日に予約していたレストランも、彼は何の躊躇もなくキャンセルした。
今回ばかりは、私は声を荒らげた。
「今この瞬間、ここを出ていくなら、私たち離婚よ!」
光希は足を止めた。
「緊急事態なんだ。わがまま言うなよ」
私はひどく惨めに笑った。
「私がわがまま言ってるって?子供が逝ってしまったのに、父親であるあなたが、あの子に最後のお別れを言う時間すら作れないの?
光希、仕事の言い訳なんてしないで。他の誰かに任せれば済むことでしょ、どうしてもあなたが行かなきゃいけない理由なんてあるの?」
光希は唇を噛み、数秒の沈黙の後、苦し紛れの弁明を口にした。
「翠衣が自殺しようとしてるんだ。実家で大変なことが起きて、俺が放っておくわけにはいかない……」
私は彼の言葉を遮った。
「運転手は全員休ませたわ。あなたが行っても無駄よ、どうせ自力で道なんて見つけられないんだから。警察に通報しなさい。警察が対処してくれる」
それでも、光希は行ってしまった。
私は一人、喪服に身を包み、子供に別れを告げた。
妊娠中、たった一人でお腹の子に語りかけていたあの頃と同じ。あの子の人生には、最初から最後まで私しか存在していなかったかのようだった。
葬儀を終えた後、私は同期させていたGPSトラッカーを開いた。画面には、光希が五百キロもの道のりを、車でひた走る軌跡が映し出されていた。
数時間後、位置情報は正確に翠衣の実家を示していた。
一分一秒の遅れすら惜しんでいたのだ。
ナビを読み解くために、彼は相当な執念を燃やしたらしい。その夜、彼とはどうしても連絡が取れなかった。
この期に及んで、まだ理解できないことなど何もない。私は弁護士の番号を呼び出した。
「離婚協議書の作成をお願いします」
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