さようなら、愛の檻第1話
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余命3ヶ月の不治の病にかかってしまった。
夫の今後の生活を心配していた。「私がいなくなった後、彼はどうするんだろう……」
しかし、ある夜、ぼんやりとした意識の中で、夫と姑の話し声が聞こえてきた。
「篠原澪があの遺産を持ってなかったら、誰があんな女と結婚するもんか!」
* * *
「母さん、声を小さくしてよ。澪はまだ寝てるんだから」
「ふん、こんな時間にまだ寝てるなんて!ご飯を作ってから寝たんじゃなかったら、きっちりお灸を据えてやるところだわ!」
ドアノブに手をかけていた私が、ピタリと止まった。
これが、いつもは優しくて温かい姑の姿?
「母さん、もうちょっとの辛抱だよ。澪が昨日、ついにあの財産を出すって言ったからさ。全部俺の口座に移したら、すぐあのバカ女とは離婚するから」
西村正樹はまるで未来の幸せな日々を思い浮かべているかのような、明るい調子の声だった。
「のぞみちゃんはもう妊娠してるしな。母さんだって早く孫が欲しいだろ?
篠原があの遺産を持ってなかったら、誰があんな女と結婚するもんか!」
その一言を聞いた瞬間、胸の奥から怒りがこみ上げ、ドアを蹴破って飛び出したくなった。
けれど、指が肉に食い込むほどギュッと握りしめて、痛みで冷静さを取り戻した。
今ここで飛び出して彼らの企みを暴いたとしても、せいぜい離婚するだけだ。
彼らは何の罰も受けない。
どうせあと3ヶ月しかないんだ。だったら、刺し違える覚悟でいこう。
そう決意した私は、ドアをゆっくりと押し開けた。
西村と姑はまるで俳優のように、一瞬で笑顔を作り上げた。
「澪!よく寝たね、俺と母さんはずっとお前を待ってたんだよ」
西村は私の手をつかもうとしたが、私はその手を振り払い、自分の席に向かった。
「本当に図々しいわね!
このテーブルいっぱいの料理、私が作ったのよ!
よくもまあ、勝手に先に食べられるわね!」
姑は一瞬、目を見開いて驚いたようだったが、すぐに平静を装った。
「澪、正樹と母さんは、あなたを心配してたのよ。
あんなに長い間寝てたら、きっとお腹が空いてるだろうってね。
ほらほら、早く食べましょう」
西村は眉間にしわを寄せ、何か言い返そうとしたが、私は彼の言葉を遮った。
「ねえ、正樹。今日お医者さんに言われたのよ。
『心の中に溜め込むのはよくないから、ストレスを発散させなさい』って。
だから、私もこう言わせてもらうわ」
そう言いながら、彼にスープをよそった。
見かけだけは、いつもの「良妻賢母」のような私。
西村はようやく不機嫌な表情を引っ込め、まるで愛を込めているかのような目で私を見つめた。
「お前も大変だな。俺たちはちょっとくらい我慢すれば済む話だよな」
ふふ、だったらこれからの地獄も我慢してもらうとしよう。
食事中、姑はいつものように小言を言い始めた。
「澪、このナスはしょっぱすぎるわ。
それに、このインゲンはちゃんと火が通ってないじゃないの。
正樹は外で一日中働いて疲れてるのに、あなたはもっと賢い妻にならないとダメよ」
もしこれがいつもの日常だったら、私はひたすら耐え、「すみません、次から気をつけます」と謝り、夜になれば西村に泣き言を言い、「お前が親不孝してどうする」と叱られていたに違いない。
でも、もういい加減我慢する必要なんてない。
ガツン!
私は茶碗をテーブルに強く叩きつけた。
その大きな音に、西村はすぐさま顔をしかめ、怒鳴ろうと口を開いた。
その前に、私はテーブルクロスを一気に引っ張り、すべての皿と料理が地面に散らばった。
野菜、スープ、陶器の破片が床一面に散らばり、まるで修羅場のようだった。
「食べたくないか?こんなに苦労して作ったのに、文句が多いなら、誰にも食べさせるものか!
母さんは料理にそんなにうるさいなら、正樹の健康のためにも、これからは母さんが毎日ご飯を作ったらどう?」
そう言い残し、彼らがどう反応するかも気にせず、バッグを手に取り、家を出た。
あの床の汚れた料理たち、誰かが掃除するだろうさ。
今までそれは私がやったけど、これからはどうかな?
親友の果歩に電話をかけ、「あの高級中華料理店で待ち合わせしよう」と誘った。
結婚前は中華料理が大好きだった。
結婚後、西村は「中華料理は高いし、コスパが悪い。それに健康にも良くないから、家で作った方がいい」とよく言っていた。
その言葉を信じた私は、結婚後一度も中華料理を食べることはなかった。
店に着くと、果歩はすでに席を取ってくれていた。
私は大まかに今回の出来事を彼女に話した。
彼女はすぐに目を赤くして、ポロポロと涙を流し始めた。
「澪ちゃん……本当に、あと3か月しかないの?」
私は案外平然としていた。昔から、私はいつも一人で生きてきた。
「むしろ、早くわかってよかったよ。そうじゃなかったら、西村と姑にずっといいように振り回されてたかもしれないしね」
生死の問題に関して、なぜか心がすっと軽くなった気がした。
果歩は涙を拭いながら、真剣な表情で尋ねてきた。
「それで、どうするつもり?あの二人をただで済ませるわけにはいかないよね?」
「まったくだよ。あのクソガキの学費もずっと私が払ってたのに、西村は浮気までしてたなんて」
そう言いながら、西村の甥、西村良彦が通う学校に電話をかけた。
「今後、彼の学費を支払うつもりはありません」と学校側に伝えた。
良彦は2年前、行きたかった中学の入学試験で合格点には到底届かなかった。
一番レベルの低い高校でさえ不合格になるほどの出来だった。
そのため、姑は良彦を高額な学費がかかる私立学校に通わせたがっていた。
もちろん、その費用は私という「カモ」が支払うことになった。
しかし、あのクソガキは学校でろくに勉強もせず、仲間を集めてグループでつるんで、好き勝手に遊んでいる。
私のお金がどれほど無駄にされたことか。
続けて、果歩に探偵事務所を手配してもらい、そして離婚訴訟に強い弁護士を探してもらった。
目標は、「彼に財産を一切持たせず、さらに彼の私有財産の半分を私が手に入れること」だった。
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