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この心を焼き尽くして、愛は灰になった第3話

この話は約1863字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

陽菜は頬を押さえ、いかにも傷ついたような顔で、背後の悠斗を見上げた。

「悠斗さん、わざとじゃないの。ちゃんとお姉さまにも謝ったのに」

次の瞬間、頬に焼けつくような痛みが走った。

彼は一切容赦のない力で私を張り倒した。私は床に叩きつけられたのに、彼は私のことなど一目も見なかった。

そのまままっすぐ陽菜のもとへ行き、彼女の顔を大事そうにのぞき込んだ。

「気は済んだか?」

陽菜はか細く甘えた声を漏らし、悠斗の胸に身を寄せた。

「私が悪いの。お姉さまのシーツ、吐いて汚しちゃって……」

悠斗の視線がようやくベッドの上の汚れに落ちた。そして無感情に言った。

「燃やせ」

「だめ!それはお母さんが私に残してくれたものなの!自分で洗うから、燃やさないで!」

彼は知っていたはずだ。私が毎晩悪夢にうなされて、このシーツを抱いていないと安心して眠れないことを。

それなのに、懇願する私の目を完全に無視して、背後の使用人たちに言い渡した。

「新しい嫁が入るんだ。こういう古い物は全部捨てろ」

ガシャン!

壁のウェディングフォトが叩き落とされ、そのままゴミみたいに外へ掃き出されていった。

けれど私の耳に蘇ったのは、写真を撮ったあの日、彼が口にした誓いだった。

あのとき彼は、皆の前でこう誓ったのだ。

「この先の人生、俺が愛するのは伊織ただ一人だけだ」

シーツに火がついた瞬間、私は火鉢のそばへ飛び込み、素手でそれをつかみ上げ、自分の体で炎を押し消した。

たちまち手に水ぶくれが膨れ上がる。悠斗は矢のような勢いで私のそばへ駆け寄り、その手をつかんだ。目つきは鋭かった。

「痛いか?」

そのとき陽菜が突然お腹を押さえ、開けられた骨壺を指さした。

「私、こういう埃っぽいのダメなの。お姉さま、こんな灰みたいなものを持ち帰って、いったい何をするつもりだったの?

げほっ、げほっ!悠斗さん、助けて!」

私ははっとして飛びかかった。

「やめて!」

けれど、母の遺骨は陽菜に蹴り飛ばされ、床にぶちまけられた。その瞬間、胸の奥で何かが完全に切れた。

私は飛びかかって彼女の髪をつかみ、目を真っ赤にして叫んだ。

「わざとでしょ!?

この下劣な女!あんたの母親は人の夫を奪った愛人だったくせに、あんたまでしゃしゃり出て人の夫を横取りするの!?」

陽菜は悲鳴を上げた。

「悠斗さん、お姉さまがおかしくなった!私を殺そうとしてる!」

私は陽菜の首を思いきり締め上げた。だが次の瞬間、悠斗に蹴り飛ばされた。

床に倒れ込んだそのとき、下半身から血が流れ出した。

私は這うようにして母の遺骨をかき集めた。床には鮮やかな血の跡が一本、ずるりと伸びていった。

涙がぽたぽたと遺骨の上に落ちる。

「お母さん、ごめんなさい……ごめんなさい……」

けれど次の瞬間、腕の中の骨壺が悠斗に奪い取られた。

彼は冷たい顔のまま、母の遺骨をすべて便器の中へ流し込んだ。

ざあっ――

水が流れる音が、鼓膜を引き裂くほど大きく響いた。

私は呆然と便器の前にひざまずき、顔を上げて悠斗を見た。目は血のように赤かった。

「悠斗、私は一生……一生、あなたを許さない!」

彼の目の奥に驚きと痛みがよぎった。けれど、それもほんの一瞬だった。

私に引き抜かれた髪を手に、陽菜は今にも崩れ落ちそうな顔で涙をこぼした。

「悠斗さん、お姉さまに髪をたくさん抜かれちゃった。もうあなたの子なんて産みたくない。子どもを産んだら、もっとブサイクになっちゃうもの!」

悠斗は心底いとおしそうに彼女を抱き上げ、優しくなだめた。

「そんなことあるわけないだろ。陽菜は世界でいちばん可愛いんだから、ブサイクになんてならないよ」

それから、彼は冷えきった目で私を見下ろし、まるでただの物でも見るような顔で、扉の外の使用人に命じた。

「はさみを持ってこい」

彼ははさみを受け取ると、私の前に立ち、見下ろしながら顎をつかんだ。

「伊織、俺はお前を甘やかしすぎたみたいだな?」

そう言うなり、彼は私の頭皮に刃を押し当て、長い髪を一束ずつ切り落としていった。まるで、邪魔な雑草でも刈るみたいに。

ほんの昨日まで、結婚式の前夜には、彼は私の髪を手のひらですくい上げ、宝物みたいに眺めながら言っていたのに。

「伊織の長い髪がいちばん好きだ」

頭の上にまばらな髪がわずかに残るだけになって、ようやく悠斗は手を止めた。そしてはさみを放り捨てた。

彼は振り返って陽菜を抱きしめ、その髪に敬虔なほど優しく口づけた。

「これで、もう自分がブサイクなんて思わないだろ?」

陽菜は泣き笑いになりながら、私を見た。その目には優越感が満ちていた。

「ふふっ、お姉さま、ほんと滑稽」

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