お前の勇敢さは一銭の価値もない第2話
この話は約1353字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
俺の手は止められないほど震え始めた。
絵美……どうしてだ?どうして俺の妻という肩書を掲げて、堂々と別の男に愛を告白するんだ?俺を何だと思っている?
それに、彼らは兄妹じゃなかったのか?
そして、須藤の低い声が耳に届いた。「絵美……僕はずっと君を妹だと思ってたんだ……」
「兄妹だなんて言わないでよ。私たちは血の繋がりなんかないのに。あなたも私に気があるんでしょ?それとも私が結婚してることが気になる?でも分かってるはずよ。私が愛してるのはずっとあなたで、結婚なんてあなたに意地を張った、ただの勢いだったんだから」
絵美の声は鋭く、周囲の人々が面白がっているのか、無意識に視線が彼女の方に向けられていた。
俺はふと安堵した。
今日はいつもと違う格好をしていたおかげだ。サプライズを台無しにしないようにと、帽子にマスクまで用意していた。だからこそ、たとえ後方から視線がこちらを横切ったとしても、俺の姿は簡単には気づかれない。俺の惨めさが少しは隠れているように思えた。
誰にも気づかれないよう、俺は静かに映画館を出た。
外の冷たい風が吹きつける中、俺の思考も遠くへと散らされていく。
絵美とは大学の同級生だった。彼女は学内でも有名な高嶺の花。華やかな容姿と完璧な家柄で、多くの人を魅了する一方、簡単に近づけない存在でもあった。
俺もその一人だった。
大学一年の時から彼女を好きだったが、身分の差を自覚していた俺は、その気持ちを深く胸に押し込めたままだった。
卒業後、俺は恩人と出会い、彼の助言のおかげで起業の方向性を見つけた。2年余りで会社は軌道に乗り、なんとか上流の社交界に足を踏み入れることができた。
あるパーティーで再び絵美と出会い、抑えていたはずの感情が一気に溢れ出した。
俺は勇気を振り絞って、彼女と連絡先を交換した。最初、絵美はどこか素っ気なく、返信も一日二日と間が空くことが多かった。そんな状態が1ヶ月ほど続き、諦めかけた時に、彼女は突然、態度を変え始めた。夜には「おやすみ」と言ってくれるようになり、自分から会おうと誘ってくれるようにもなった。
それを機に、俺は彼女に積極的にアプローチを始めた。何度か会ううちに自然と付き合うことになり、一年後、俺は彼女にプロポーズした。そして彼女は俺の妻になった。
絵美と須藤の関係については、今日まで疑ったことなど一度もなかった。彼女が俺の目の前で彼に甘えたり、抱きついたりする姿を見ても、ただの「仲のいい兄妹」としか思っていなかった。
今になって思えば、俺は本当に愚かだった。
ふと我に返り、ガラス扉に映る自分の姿を見つめた。タートルネックに白シャツ、そしてグレーのコート。これは絵美の好みに合わせて選んだコーディネートだ。だが今気づいた。これが須藤の普段の服装とまったく同じだということに。
喉に刺さった小骨のように、飲み込むことも吐き出すこともできない。それでも、俺はこのままじゃ終われない!
俺はコートを脱ぎ捨て、近くのゴミ箱に放り込んだ。そして絵美に電話をかけるが、無機質な音が流れるだけで、すぐに思い出した。俺はすでに彼女にブロックされていたのだ。仕方なく、俺は映画館の前で立ち尽くした。
今夜のことを、何もなかったことになどできない。たとえどれだけ傷つこうと、俺は真実を知るまで諦めない!
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)