和紙文あの夢が醒めなかったら · 第3話設定≡

あの夢が醒めなかったら第3話

この話は約1893字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

清子は、浩司が美加に対してこれ以上ないほど気を遣っている様子を眺めていた。

美加の腕にほんの小さな火傷を負っただけなのに、浩司は怒ったふりをして、もう二度と台所に入るなと言う。

「だって、浩司のために自分で料理を作りたかったんだもん」

「そんなの必要ない。俺の美加は俺と一緒にいるんだから、楽をさせてやるんだ。俺の機嫌を取るためにそんなことしなくていい」

清子はこの三年間を思い出した。彼が外食に飽きるんじゃないかと気にして、しょっちゅう自分で作った料理を届けていたあの日々。

一度、包丁で指を切った時でさえ、彼はただ淡々とこう言っただけだった。「どうしてそんなに不注意なんだ。次は気をつけろよ」

清子はじっと、あの二人を見つめていた。

美加が生理痛で辛そうにすると、浩司はしゃがみ込んで彼女のお腹をさすってあげる。

彼女の靴紐が解けると、丁寧に結び直してくれる。

お腹が空いたと言えば、もう彼女の好きな海鮮粥を用意していて、一口ずつフーフーと冷ましては、口元に運んでやる。

清子の目がじんわりと熱くなってきた。なるほど、好きな人の前では彼はこんな風なんだ。決してイライラしたり、水を差すようなことを言ったりはしない。

彼はただ冷たい性格で、人を慰める方法を知らないだけだと思っていた。違った。彼はできるんだ。ただ彼の目には、自分がその労わりを受けるに値しない女と映っていただけなのだ。

清子の心は乱れ、点滴の袋が空になっていることにすら気づかなかった。

駆け寄ってきた看護師が慌てた様子で言う。「大人のくせに、点滴が終わったのにも気づかないなんて!もう少しで逆流するところでしたよ」

青くなった手の甲を見つめ、清子は呆然と笑った。

その次の瞬間、浩司が彼女に気づき、大きな足取りで近づいてきた。

「病院に来てるのに、どうして教えてくれなかったんだ?今はどうなんだ?まだ辛いのか?」

浩司は見せかけだけ清子の額に手を当てた。その目には、かすかに後悔めいた色さえ浮かんでいた。

清子は笑い出したくなった。浩司、お前も罪悪感を感じるのか?

「家まで送るよ」

駐車場に着くと、清子は美加が助手席に座っていることに気づいた。美加は清子を見て、にっこりと笑いながら言った。「浩司、この方は?」

浩司はいつも通りに紹介した。「兄さんの友達だよ。兄さんが海外に行く前に、ちょっと面倒を見てやってくれって頼まれてさ」

三年間の隠された恋。

彼女は彼の口では「兄さんの友達」であり、「友達の姉」であり、「同僚の上司」だった。決して「彼女」ではなかった。

息が詰まりそうになり、清子は黙って後部座席に乗り込んだ。

美加が振り返り、笑顔で挨拶した。「一人で病院なんて大変だったよね?清子さんみたいに自立した方、羨ましい。私はダメなんだ。誰か一緒にいてくれないと、何もできないんだ」

そう言い終えると、今度は浩司に食事の話を持ちかけた。「浩司、せっかく私たちもご飯を食べに行くんだし、清子さんも一緒に誘いましょうよ。人が多い方が賑やかで楽しいし。病気なのに一人でご飯なんて、可哀想だもの」

清子は反射的に断ろうとしたが、浩司が先に彼女の分まで承諾してしまった。

その後は、清子は静かに二人が楽しそうに話し笑う声を聞いていた。

子供の頃、浩司がよく美加をからかっては泣かせてしまい、そのたびに必死になってあの手この手でなだめていた話。

高校時代、美加が隣の学校の不良に絡まれ、浩司が彼女のために初めて人と喧嘩をし、足首を骨折して三ヶ月も療養した話。

大学卒業時、美加が大学院に進みたかったのに、実家は早く帰って結婚するよう望んでいて、浩司だけが彼女の夢を追いかけるのを応援した話。

清子は浩司を見つめた。そうか、小さい頃から好きだった女の子なんだ。自分なんか比べものにならないのは当然だ。

店に着いて、それがグループでの集まりだと初めて知った。

「浩司と美加って、小さい頃からべったりだったよね。大人になっても仲良しで、すごいや」

「このままじゃ、結婚しないと収まらないんじゃない?」

みんなが二人を取り囲んで囃し立てる。一緒に来た清子の存在には、全く気づいていないようだった。

清子は隅の席を選び、スマートフォンを取り出して、ようやく一分前に浩司から届いたメッセージに気づいた。

【清子、美加はただの大事な妹みたいなもんだから、気にしないでくれ。次に機会があったら、必ず俺たちの関係を公にするから】

でも、浩司、もう私とあなたに「次」はないのよ。

清子は虚しさを感じ、外の空気を吸おうと立ち上がった。店を出た途端、数人の男に道を塞がれた。

「ねえ、お姉さんよ。ちょっと遊んでってくれないか?」

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)

第4話は公式アプリで

当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。

R49300
  1. 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
  2. アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
iPhone・iPad
で入手
Android
で入手

アプリで第4話を読む

作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。