あなたを離れて、よかった第1話
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「宿主、あなたはすでに伊賀修司(いが しゅうじ)の攻略を8回挑戦していました。現在の好感度は99%。これまでで最高の数値です。
もう一度攻略すれば、成功の確率は極めて高いと予測されます!
9回目の攻略を選びますか?それとも、リスクを取って攻略対象を変更しますか?」
システムの声を聞きながら、白鳥暖子(しらとり あつこ)はこれまでの8度の攻略を思い出した。
どんな身分で近づいても、修司には毎回、正体を見破られてきた。
最初は地震の中、彼を助けて命を落とした。
そのときは、ほんの少しだけど、彼も悲しんでくれた。
でも、彼が暖子が「復活」して再び自分に近づいてくるのを知ってからは、少しずつ彼女を人間として見なさなくなった。
7回目の死は、別荘の火事だった。
彼は、本命の飼い犬を助けに行けと命じた。
炎に焼かれて死んだあの痛みは、今でも思い出すだけで体が震える。
目を閉じて、かすれた声で暖子は答える。
「はい、変更する」
「了解しました。9回目の転生後、新たな攻略対象に変更します」
……
* * *
「宿主、あなたはすでに伊賀修司(いが しゅうじ)の攻略を8回挑戦していました。現在の好感度は99%。これまでで最高の数値です。
もう一度攻略すれば、成功の確率は極めて高いと予測されます!
9回目の攻略を選びますか?それとも、リスクを取って攻略対象を変更しますか?」
システムの声を聞きながら、白鳥暖子(しらとり あつこ)はこれまでの8度の攻略を思い出した。
どんな身分で近づいても、修司には毎回、正体を見破られてきた。
最初は地震の中、彼を助けて命を落とした。
そのときは、ほんの少しだけど、彼も悲しんでくれた。
でも、彼が暖子が「復活」して再び自分に近づいてくるのを知ってからは、少しずつ彼女を人間として見なさなくなった。
7回目の死は、別荘の火事だった。
彼は、本命の飼い犬を助けに行けと命じた。
炎に焼かれて死んだあの痛みは、今でも思い出すだけで体が震える。
目を閉じて、かすれた声で暖子は答える。
「はい、変更する」
「了解しました。9回目の転生後、新たな攻略対象に変更します」
*
暖子は湖畔に呼び出されたときに、すでに野次馬の令嬢たちとボンボンたちが集まっていた。
「さすが伊賀さんだな。必死な追っかけがこんなにいるとは」
「伊賀社長に一目見てもらうために、命すら惜しまないんだってさ」
「半年前に紀伊琴音(きい ことね)って追っかけが火事で死んだばっかなのに、今度は白鳥暖子が後釜かよ」
「この白鳥、前の七人よりも必死じゃね?一緒に飯食いたいがために、跪いて頼んだらしいぜ」
4年も修司を追い続けてきて、暖子はこういう噂話にはもう慣れっこだった。
最初の頃は、恥ずかしくて、傷ついて、泣いたこともある。
でも今は、もう何も感じない。心が麻痺してしまった。
人垣をかき分けて、暖子は修司のもとへ進み出た。
彼は蔓木安美(かぶらぎ やすみ)の涙を優しく拭いながら、暖子を鋭く睨んだ。
「もう30分も経った。遅いぞ!俺の言葉より大事な用でもあったのか?」
滲んだ血を手のひらから拭いながら、暖子はおそるおそる説明した。
「病院からここまで、距離があるよ。急いで来たんだが、道で転んで……」
だが彼は、最後まで話を聞く気などなかった。
「言い訳すんな。安美の大事なネックレスが湖に落ちたんだ。拾ってこい」
この天気では、湖面にも薄氷が張っている。
ダウンを着ていても、足元から冷えが染みてくるような寒さだ。
昔、溺れて死んだあの記憶でに、暖子の顔から血の気が引いた。
「高熱もまだ下がってないし、この寒さじゃ、水に浸かったら命に関わるよ。ネックレスのブランドを教えてください。蔓木さんに代わりの物を買ってくる」
その言葉を聞いた瞬間、安美が涙をこぼした。
「でも、あれは、母の形見なの……」
修司は彼女をそっと抱き寄せて、優しく慰めた。
そして暖子を睨みつけながら、怒りをあらわにした。
「行かないのか?だったら今後、二度と俺に会おうとするな」
彼は本当に、そう言って暖子を切り捨てたことがあった。
3回目の攻略のとき、彼は自分のデザイン作品を安美に譲れと、彼女に命じた。
暖子が拒んだら、それ以来、彼は一度も彼女に会おうとしなかった。
攻略期間が終わったとき、好感度はマイナスだった。
その後、交通事故に遭った彼女は、鉄骨に身体を貫かれ、内臓から大量出血した。
丸一日、苦しみ抜いた末に死んだ。
あれが、今までで一番、つらい死だった。
もう、怖い。
暖子は真っ青な顔で、修司の手をつかんだ。
「行く、行くから!お願い、見捨てないで……」
システムは言っていた。好感度を99%に保たなければ、攻略対象の変更はできないと。
迷いはもう捨てた。
暖子はダウンを脱ぎ、冷笑混じりの歓声の中、湖へと飛び込んだ。
氷水が、肌を突き刺す。
意識が遠のく直前、誰かの声が、必死に自分の名前を呼んでいる気がした。
修司ではなく、知らない声だった。
暖子が次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
目を開けた瞬間、修司からのメッセージが届いた。
【目が覚めたら帰ってきて。安美が、お前の作った料理を食べたい】
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