あなたへの愛は春まで待てない第2話
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南はうなずいた。
これで、辰巳の世界から、彼女の痕跡は完全に消える。
背後から騒がしい声が聞こえてきた。辰巳が友人を見送るために出てきたのだ。彼はすぐに入り口の外に立つ南に気付き、友人をその場に置き去りにして駆け寄ってきた。
近づくと、彼女の青白い唇がはっきりと見えた。
「おい、唇がこんなに青白いなんて!?どこか悪いのか?医者を呼ぶぞ……」彼は慌てて彼女の顔を両手で包みながら言った。
南は彼を止めて、静かに言った。「あなた、若子を見つけたんだね」
それは疑問ではなく、確信に満ちた言葉だった。
辰巳は一瞬たじろぎ、もう隠し通せないと悟り、素直に打ち明けた。「見つけたばかりだ。もう拘束させたけど、まだ君に伝える機会がなかっただけさ」
彼女が聞かなければ、彼は永遠に話すつもりはないだろうか?
南は胸が痛んだ。じっと彼を見つめながら言った。「あの事件からもう何年も経った。彼女もここ数年、逃げ回って苦しい思いをたくさんしたんだから、解放してやって」
「南、君は構わなくていい」辰巳の目にかすかな残酷さが走った。「あいつが俺にしたこと、必ず代償を払わせる」
代償を払わせる方法が、まさか婚姻届を提出することなのか?
南は無意識のうちに服の裾を握りしめ、力んで白くなった指がわずかに震えていた。
辰巳の不安そうな視線を感じながら、彼女はふいに力を抜き、何も言わずに部屋へと入っていった。
夜、辰巳が彼女を抱きしめてベッドに押し倒そうとしたとき、彼女の脳裏には今日目にした光景が一瞬よぎった。
胃のあたりがむかむかとし、彼女は首元に埋もれた彼の頭を押しのけ、淡々と言った。「疲れたわ」
そう言って布団を引き上げ、彼に背を向けて横になった。
しばらくして、腰に力強い腕が回り、彼女をしっかりと抱きしめた。その力は強く、いつもと同じだった。
本当は任務中に本気の感情を持つべきではないと分かっていた。けれど、辰巳は本気で、そして執拗なほどに彼女を愛していた。
かつて彼女が仇に拉致されたとき、辰巳は正気を失ったように彼女を探し回り、その事件で彼女を守るために銃弾を受け、ほとんど死にかけた。
あの出来事以来、彼はいつも彼女を強く抱きしめ、そばにいることを確認してようやく眠りにつくのだった。
辰巳のスマホの着信音が、彼女の思考を遮った。彼が自分を一目確認し、眠ったと判断してから、バルコニーに出て電話に出たのを感じた。
引き戸が閉まると、南はゆっくりと目を開けた。
電話の向こうから辰巳の専属アシスタントの声が聞こえてきた。「社長、既に白野さんを音ノ間別荘にお連れしました」
「庭の花はすべて抜け。隣の二軒も買い取れ。花粉アレルギーだから、花は一本たりとも残すな」その声は冷ややかだったが、言葉の内容はまるで正反対だった。「室内の温度は27度に保て。彼女の体調を崩したら、また俺が看病する羽目になる」
南は枕をぎゅっと抱きしめ、必死に唇を噛み締めた。それでも、目に浮かぶ涙を止めることはできなかった。
辰巳、これがあなたの復讐なの?
彼女をA市で最も高級な別荘地に住まわせ、花粉症であることも覚えていて、病気にならないよう細やかに気を配っていた。
けれども南は一つ、大切なことを忘れていた。愛がなければ、どうして憎しみが生まれるのだろうか?
バルコニーでは、辰巳が向こうに向かって注意事項を繰り返し伝えていた。その言葉の一つ一つが。まるで針で刺すように彼女の胸に突き刺さり、心がじんじんと疼いた。本当に、心が血を流しているようだった。
涙が頬を伝い、音もなく枕に吸い込まれていった。
翌朝、南は辰巳のキスで目を覚ました。彼女がぼんやりと目を開けるのを見ると、彼はさらに深くキスを重ね、息も荒くなっていった。
彼の手が勝手に動き始めたとき、南は彼の胸に手を当てて顔をそむけた。
それでも辰巳は怒ることなく、名残惜しそうに彼女の唇に軽くキスを落とした。「今日は君の誕生日だ。サプライズを用意したよ。早く支度して、一緒に出かけよう」
彼女はその言葉を聞いて一瞬戸惑った。昨日の出来事があまりにも突然だったせいで、今日は自分の誕生日だということすら忘れていた。
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