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あなたの悔いを待たない第3話

この話は約1801字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

陽向と過ごす日々は、死にかけた青春が蘇るようだった。

彼は本当に元気で、まるで小さな太陽みたいだ。

彼は私を学生街へ連れて行き、安くて美味しいB級グルメを食べさせてくれた。狭い店内で肩を寄せ合い、辛さに鼻の頭に汗をかきながら、私たちは大笑いした。

川沿いの散歩に連れ出し、体育会系の部活での失敗談を話して、私を腹の底から笑わせてくれた。

自転車の後ろに私を乗せ、プラタナスの並木道を駆け抜けてくれた。

夕暮れの風が私の長い髪をなびかせる。彼の背中に寄りかかると、自分が生き返ったような心地がした。

私は彼の母のために最高の腫瘍専門医を手配し、入院の手続きを済ませた。

彼は毎日、病院と私の家の間を行き来していたが、文句一つ言わなかった。私に会う時はいつだって、あの太陽のような笑顔を向けてくれた。

「汐里さん、笑った顔、すごく綺麗です。これからはもっと笑ってください」

私は自分の頬に触れた。そういえば、こんな風に心から笑ったのは、いつ以来だろう。

体は日に日に衰え、骨の奥底からの痛みは頻度を増している。だが、精神的な充足感は頂点に達していた。

この久しぶりの幸福が、蒼介をさらに苛立たせたようだ。

彼は当てつけのように、違う女を次々と家に連れ込み、わざと私の前でいちゃつくようになった。

以前なら、私は黙って部屋に逃げ込み、鍵をかけ、耳を塞いでいただろう。

だが今は、彼らの横を顔色一つ変えずに通り過ぎることができる。

それどころか、驚いて慌てふためく女の子に微笑みかけ、キッチンに入って自分用に熱々のラーメンを作る余裕さえあった。

私のこの平穏さが、蒼介を完全に激怒させた。

彼は、私が罪人のくせに心安らかに過ごしていることが許せないのだ。

ある日、バーのイベントに顔を出した。

陽向と一緒に選んだミニスカートを履き、完璧なメイクをした。

会場に入った瞬間、自分の中に久しく忘れていた自信が満ちてくるのを感じた。

そこへ、蒼介が女の子を連れて入ってきた。

桐谷麻衣(きりたに まい)。蒼介の最近の新しい女だ。

彼女は気まずそうな顔をし、私に向かって引きつった笑みを浮かべて何か言いかけたが、蒼介に睨まれて押し黙った。

グラスを握る私の指先が、怒りで白くなった。

「蒼介、そこまでする必要があるのか?」

彼は鼻で笑った。

「何がだ?今までずっとこうだっただろうが。

汐里、お前は母さんを殺したんだ。ドブネズミらしく下水道で生きてりゃいいんだよ。俺が何をしようと、お前は黙って受け入れろ」

十年。

この十年間、こんな言葉を数え切れないほど浴びせられてきた。

そのたびに、私は黙って耐えることを選んだ。罪悪感があったからだ。彼に借りを返さなければならないと思っていたからだ。

だが今日は、もう我慢したくなかった。

十年間溜め込んできた無念が、火山のように一瞬で爆発した。

前触れもなく涙が溢れ出した。私は彼を睨みつけ、初めて勇気を振り絞り、全身全霊で絶叫した。

「蒼介!私が誰かに頼んで、お義母様を轢き殺させたとでも言うの!?」

私の声は金切り声になり、涙声が混じり、一瞬にして周囲の注目を集めた。

「お義母様は私の誕生日を祝いに来てくれて、事故に遭った……誰よりも辛かったのは私だ!罪悪感に苛まれ、自分を責め、その苦しみの中で十年も生きてきた!

十年だ!私は自分を、贖罪のための囚人として生きてきた!残りの数十年も、ずっとそうやって生きろと言うの!?

私だって人間だ!痛みだって感じる!蒼介、あなたには心がないの!?」

私は泣き崩れた。彼に私の全ての悔しさと苦痛をぶちまけたのは、これが初めてだ。

蒼介は呆然としていた。

今まで従順だった私が、これほど多くの人の前で、ヒステリックに彼に怒鳴り散らすなんて、想像もしていなかったのだろう。

彼の顔に、複雑極まりない感情がよぎった。驚き、狼狽、そしてほんの僅かな……憐れみ?

だが、その感情は一瞬で消え去り、すぐにより深い怒りに塗り替えられた。

彼は、自分の権威が挑戦されたと感じたのだ。

パンッ!

乾いた音が響き、強烈な平手打ちが私の頬を打った。

世界が一瞬にして静まり返った。

頬が焼けつくように痛み、耳の奥でキーンという音が鳴り響く。

蒼介の胸は激しく上下していた。彼は自分の手を見て、自分でも驚いたように固まっていた。

だがすぐに、彼の目から動揺が消え、冷酷な光が戻った。

彼は「気狂いが」と吐き捨て、私を一瞥もせず、人混みをかき分けて去って行った。

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