99回ドッキリ結婚、もう限界です!第3話
この話は約2040字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
湊は携帯をぎゅっと握ると、申し訳なさそうに俯く。
「葵、戻ったらちゃんと説明するから。待ってて……」
そう言い残すと、梨花には目もくれず、湊はそのまま行ってしまった。
梨花が憎しみのこもった目で私を睨みつけてくる。
「これ全部あなたの仕業でしょ?わざわざ勝ち誇りに来たの?これで満足した?」
急に私に近づいてきた梨花は、意地の悪い笑みを浮かべた。
「私が妊娠したのが羨ましいんでしょ?いいこと教えてあげる。あなたが流産して病室で悲しんでたとき、私と湊さんは隣の病室で愛し合ってたんだよ。それに、私たちの子どもはその時にできたんだから」
私は怒りで全身が震え、ありったけの力で梨花の頬をひっぱたいた。
「よくも叩いたわね!あなたなんか、死んじゃえ!」
梨花が私を突き飛ばした。私の背後には窓があった。
はっとした私は梨花の手を掴む。死ぬなら一緒だ。
この階からだと5メートルぐらいの高さがあるから、落ちたら死なないまでも、大怪我はするだろう。
しかし、幸いなことに下は人工池だった。
そこへ、車のキーを梨花に預けたままだったことを思い出した湊が、ちょうど引き返してきて、私が池に落ちる瞬間を目撃した。
「葵、大丈夫だ!今すぐ助けに行くから!」
そのとき、誰かが叫んだ。
「女の子がもう一人、池に落ちたみたいだぞ!」
その声を聞いて、はっとした湊は躊躇うことなく向きを変え、梨花のほうへ泳いでいった。
「湊さん……」
助けられた梨花は、湊の腕の中で声を上げて泣き出した。
しかし、湊は私がまだ水の中にいることを思い出したのか、急に梨花を突き放す。
「葵は?葵がまだ水の中にいる!」
湊がまた水に飛び込もうとしたとき、私がもう岸に上がっていることに気づいた。
「お前……いつのまに泳げるようになったんだ?」
湊の言う通り、私は確かに泳げなかった。
昔、何度もスイミングスクールに申し込んだけど、いつも湊に止められてた。
「俺がいるんだから、お前が水に落ちるようなことは絶対にさせないって!」
でもその後、私はあの男に出会った。男は私に水泳も、クライミングも、アーチェリーも、全部自分で教えてくれた。
彼が傍にいられないときでも、私が自分の身を守れるようにって。
私は静かに答えた。
「婚約者が教えてくれたの」
その場を去ろうとしたけど、ふと思い立って釘を刺しておいた。
「それと、平野さんのこと、ちゃんと見ておいてね。じゃないと、私が彼女に何するか分からないよ?」
「婚約者?」
湊は不思議そうな顔をしていたが、梨花の叫び声が聞こえるとそちらに向かって行った。
「湊さん、痛い。お腹が、急に……」
湊はかがみこんで、すぐに梨花の様子を見る。
二人の茶番をこれ以上見る気にはなれなかった私は、躊躇うことなく背を向けて立ち去った。
……
私が池に落ちたことを知った男は、守ってあげられなかったと自分を責め、湊の会社を潰す計画を加速させた。
きっともうすぐ、湊は全てを失って無一文になるだろう。
2週間後、結婚式は予定通り開かれ、会場には大勢のゲストが詰めかけていた。
ちょうど男が少し席を外していたので、私が一人でゲストを迎えている時、湊と梨花が来た。まさか彼らも招待されていたなんて。
私を見た湊は一瞬固まったが、すぐに私の腕を掴んで隅に連れていく。
「ここは俺の叔父の結婚式だぞ?なんでお前がここにいるんだよ?」
「私は……」
私が答える前に、湊が一方的に話し続けた。
「まだ俺に未練があるのは分かる。でもここは俺の親戚ばっかりなんだぞ。誰かの機嫌を損ねて、将来困ることになっても知らないからな」
私はなんとか湊の手を振りほどく。
「今日は私の結……」
しかし次の瞬間には、側にいた梨花が悲鳴を上げた。
「湊さん、お腹がまた痛いの。赤ちゃんが蹴ってるのかな?」
湊は慌てて私から離れ、梨花のところに駆け寄る。
しばらくすると、司会者がステージで挨拶を始め、結婚式が始まった。
ドレスに着替えてメイクも終え、私が出番を待っていると、湊と梨花の声が聞こえてきた。
「今日の結婚式、絶対見に来た方がよかったよ。本物の一流ってものが、見れるんだからさ」
梨花が声高に話している。
湊の仲間たちも口々に賛同していた。すると、その中の一人が、ふと思い出したように湊に尋ねる。
「そういや、葵さんがお前を追いかけて結婚式場まで乗り込んできたって聞いたぞ。なあ、どうなってるんだよ?」
湊は少し沈黙した後、口を開いた。
「正直、葵には悪いことしたって思ってる。でも、梨花はうつ病を患っているし、彼女の両親にも面倒を見るって約束したから、仕方ないだろ?」
「そういえばさ、俺たちが前にした賭け、覚えてるか?葵さんがいつ結婚できるかってやつ。でも、こんなしつこい性格のようじゃ、一生結婚なんて無理だろうな」
その言葉が終わるや否や、司会者の新婦入場のアナウンスが流れた。
音楽が流れ始め、重厚な扉がゆっくりと開かれる。
私は最高級のウェディングドレスに身を包み、ゆっくりと会場へと足を踏み入れた。
湊と目が合う。
彼は完全に固まっていた。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R67770- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。