裏切りの夫には地獄の制裁を第3話
この話は約1937字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
父親をダシにして、私を脅しているっていうの?
四年前、父の篠原浩二(しのはら こうじ)は突然脳卒中で倒れ、手術の末に植物状態となってしまった。
この四年間、私が面会に行く時はいつも一人だった。その都度、誠也が事前に人払いをするよう手配していた。
それもすべて、「お義父さんのことが誰かに知られて、脅迫のネタにされるのを防ぐため」だと彼は言っていた。
私はその言葉をすっかり信じ込んでいた。
なのに、よりによって一番最初に父をダシにして私を脅迫してきた人間が、彼自身だなんて。
彼の言う「極秘事項」などという口実は、玲奈との不貞関係を隠すためのただの隠れ蓑に過ぎなかったのだ。
だからいつも私を一人で面会に行かせていたのだ。すべてを自分の思い通りにコントロールするために。
「誠也、一体どの面下げて私をぶったわけ?」
私が低い声でそう言い放つと、彼の顔色があからさまに変わった。
誠也は深呼吸をすると、社員たちの方へと向き直り、必死に取り繕った笑みを浮かべた。「みんな、見苦しいところを見せて悪かったな。
実はこの女、俺に異常な執着を抱いているストーカーなんだ。彼女の父の医療費を俺が援助してやっているものだから、自分が特別な存在だと勘違いしてしまって。
彼女も哀れな女なんだ。病気の父の介護に追われ、その上、莫大な借金まで背負っている。
だが、まさかここまで常軌を逸した真似をするとは思いもしなかった」
彼はたった数言で、私を「偏執狂のいかれた女」に仕立て上げた。
私は鼻で笑い、一歩、また一歩と彼に詰め寄った。
周囲の社員たちは蜘蛛の子を散らすようにサッと後ずさりする。――誰も「いかれた女」の巻き添えなど食いたくないからだ。
玲奈に至っては誠也の背後にぴたりと身を隠し、震える声で叫んだ。「こ、来ないでよ!」
誠也は彼女を庇うように立ち塞がり、冷徹な目を私に向けた。「寧々、いい加減にしろ!これ以上騒ぐな!」
騒ぐ?
彼は今に至ってもまだ、私がただ「ヒステリーを起こして騒いでいるだけ」だと思っているのか?
「私があなたのストーカーですって?私があなたからお金を恵んでもらって、借金に首が回らなくなっているとでも?」
誠也は顔をしかめて言い放った。「お前が俺に好意を寄せているのは知っている。だが、俺にはもう家庭があるんだ。これ以上付きまとうのはやめろ。お前の父にはまだ治療が必要だろう。費用ならこれからも俺が払ってやる」
彼は相変わらず父を脅しの切り札にして、私が真実を暴露しないようにコントロールしようと企んでいた。
私は冷めきった目で彼を見つめた。この期に及んで、これ以上どんな胸糞悪い戯言をほざくつもりなのか、見届けてやろうと思ったのだ。
彼は言葉を続けた。「お前が一時的に感情を抑えきれず、子供に手を出してしまったことは分かっている。だがな……」
パァンッ。
私は彼の顔面に思い切り平手打ちを食らわせ、その気色悪い言葉を断ち切った。
息つく間もなく、彼の腕を掴んで背中側へ捻り上げ、そのまま膝の裏に強烈な蹴りを入れた。
ドスンッという鈍い音とともに、誠也は無様に床へと膝をついた。
さらに私は、玲奈の腕を掴み、鮮やかな背負い投げで床へと叩きつけた。彼女はあまりの痛みに絶叫を上げた。
私は床に這いつくばる二人を見下ろし、冷酷に吐き捨てた。「揃いも揃って、最低のクズどもね」
現場は完全にパニックに陥った。まさか私が問答無用で実力行使に出るとは、誰も予想していなかったのだ。
誠也はこれ以上ない屈辱に顔を歪め、ついに感情を爆発させた。
「寧々!こっちが穏便に済ませてやろうとしてるのに、あくまで楯突くつもりなら、もう容赦しないぞ!
俺に手を上げた上に、俺の妻まで殴りやがって!今すぐお前の父を病院から叩き出してやる!」
彼の血走った目を真っ向から見据え、私はただただ滑稽に思えた。「お父さんのことで私を脅す?あなたごときの分際で、よくそんな大口が叩けたものね」
「だったら試してみろ!」
誠也はギリッと歯を食いしばってスマホを取り出すと、病院へ電話をかけた。「集中治療室の45番ベッドの患者への投薬を中止しろ!今すぐ病院から追い出せ!」
それは、父のベッド番号だ。
彼、本当によくもそんな真似を……
私は怒りで我を忘れ、彼のスマホを力任せに奪い取った。「お父さんに手を出す気なら、こっちだって一切容赦しないからね!」
誠也はスマホを取り返そうと飛びかかってきたが、私はすかさず彼の顔面にもう一発、強烈なビンタを浴びせた。
彼は憎悪に満ちた目で私を睨みつけた。「寧々、自分を何様だと思ってるんだ!俺に容赦しないだと?お前にそんな真似ができる力があるのか、よく考えやがれ!」
「力ですって?この会社が私のものだっていう事実だけで、十分すぎるんじゃない?」
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