空っぽの愛第3話
この話は約1517字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
説明する必要はある?
鈴のために大勢の人を呼んで私を説得し、面と向かって私が心が狭いと責め立てるつもりなの?
私はそんな愚かなことはしない。
【行かない。用事があるから】
私はきっぱりと断った。
顕久に嘘をついたわけではない。本当に忙しかった。
今、私は自分の物を片付けていたから。
この家は顕久が買ったもので、彼の婚前財産にあたる。
もう別れることになったから、当然引っ越さなければならない。
長い間一緒に住んでいたので、物が多く、大きな箱をいくつか買わなければならなかった。
家を出たところで、顕久に出くわした。
「どこに行くんだ?」
顕久が私を引き止めた。
「ちょっと買い物」
私は横に体を向けて、早くその場を離れようとした。
すると、顕久は私を車に引き寄せた。
「意地を張るなよ、今日はみんな集まってるんだから、来てないのはお前だけだぞ」
私は無言のままだった。
スマホをいじりながら、ふと気づいた。
助手席の足元のマットが、いつの間にか可愛いイラストの柄に変えられた。
セーラームーンの柄だった。
私がそのマットをじっと見ていると、顕久が少し照れたように言った。
「鈴ちゃんが、俺の車はちょっと堅苦しすぎるって言って、勝手に足元のマットを変えたんだ」
私は顕久の足元を見てみると、確かに同じような可愛いイラストのマットになっていた。
顕久が車を買ってから、誰にも勝手に車を飾らせないと言っていた。
私が以前、いくつか可愛い小物を助手席に置いたとき、彼に「そんなものを置くな」と言われ、すぐに取り除かれたことを思い出した。
「まともな車なのに、こんなものを置くなよ」
それから私は二度と車に飾りを買わなくなった。
でも、今思うと、物の価値を下げるのは、小物ではなくて、もしかしたら私自身だったのかもしれない。
そのことに気づき、少し笑ってしまった。
「うん、悪くないね」
顕久は口を開きかけて何か言おうとしたが、結局何も言わず、ただアクセルを踏んだ。
彼が怒っているのは分かっていた。私がまた細かいことでやきもちを焼いていると思っているのだろう。
以前なら、私もわざと冷たくしていたが、結局いつも私が妥協して終わった。
だから、もう自分を不愉快にさせる必要はない。
レストランに着くと、車を降りる前に、鈴がまるで小鳥のように飛び込んできた。
首にお守りが揺れながら、灯りの下でキラキラと輝いている。
「心さん、来てくれてありがとう」
鈴は親しげに私に腕を絡めてきて、まるで私たちが実の姉妹のように見えた。
座って少しすると、鈴はまるで女主人のように他の人たちを迎えた。
「皆さん、遠慮せずに、今日は顕久くんがご馳走してくれるから」
「顕久くん」という言葉を聞いて、私は少し気分が悪くなった。
鈴は私に向かってグラスを持ち、申し訳なさそうに言った。
「心さん、顕久くんと一緒にウェディングフォトを撮ったのは、特に変な意味はなかったの。ただ、少し夢を叶えたかっただけ。私の体では結婚することは無理だって、分かってるよね?」
鈴がそう言うと、涙が頬を伝って流れ落ち、まるで可憐な姿を見せているようだった。
周りの人たちが騒ぎ始めた。
「そうだよ、鈴ちゃんはそういう子供っぽいところがあるから、心ちゃん、気にしないで」
「やっぱり鈴ちゃんはいい子よね。心ちゃん、ほら、それを飲んで、また仲良くしよう」
みんなが私を見つめて、まるで私が鈴の謝罪を受け入れないことが罪のように感じさせた。
私は顕久を見た。彼は両腕を組み、上を向くことなく、余裕そうな表情をしていた。
つまり、彼のメンツにも関わっているから、私は公然と彼の顔をつぶすことができないと思っているのだろう。
故に、私は受け取るしかなかった。
私は少し笑い、鈴のグラスを受け取った。
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