社長令嬢だと知らずに、私をクビするつもり?第2話
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強張ったまま振り返ると、そこには空のコップを持つ玲奈が立っていた。
その顔には、悪気のないフリをして、勝ち誇るような笑みが張り付いている。
数秒ほど視線がぶつかると、玲奈はコップを握りしめたまま後ずさりし、途端に目を潤ませた。
「ご、ごめんなさい……わざとじゃなくて……」
「わざとじゃない?」
私は立ち上がり、声を荒らげた。
「このオフィスで遊んでるのは、あんただけじゃない!
みんな必死でやってきたプロジェクトなのに、今度はパソコンまで壊す気!?
なんでまだいんのよ!さっさと消えなさいよ!」
健太がすかさず割って入り、玲奈を背に庇った。その声には苛立ちが滲んでいる。
「怒鳴るなよ!玲奈はわざとじゃないって言っただろ!
お前のために水を持ってきてくれたのに、その気遣いも分からないのか?」
「気遣いって?」
あまりの理不尽さに、私は乾いた笑い声を漏らした。
パソコンを何とかしようとしたが、画面は漆黒のままだ。
電源ランプすら点灯しない。完全に壊れてる。
怒りが再燃し、振り返って罵声を浴びせようとしたその時、健太の嘲るような声が飛んできた。
「無駄な努力はやめろよ」
彼は腕を組み、冷ややかな目で私を見下ろしている。
「パソコンがそんな状態じゃ、今夜中に企画書なんて無理だろ。
分かってるくせに騒ぎ立てて、玲奈に八つ当たりしたいだけじゃないのか?」
「八つ当たり?」
私は彼を睨みつけた。我慢していた涙が、堰を切ったように溢れ出す。
「このプロジェクト、私が三ヶ月もかけて準備してきたのよ!何日も徹夜して、十回以上も修正して……
明日の打ち合わせ直前なのに、あいつのせいで全部パーじゃない!」
私の剣幕に驚いたのか、玲奈は健太の腕にしがみつき、震える声で囁いた。
「江川さん……高橋さんって、プライベートでもいつもこんな感じなんですか?……すごく怖いです……」
メンツを潰されたと感じたのか、健太の顔色が一瞬で変わった。
彼は腕を振り上げ、私の頬を力任せに打ち抜いた。
――バチンッ!
さっきよりも遥かに重い一撃。
衝撃で顔が弾かれ、口の端から血が滲むのが分かった。
「いい加減にしろ!みっともない!」
誰もいないオフィスに、健太の怒号が響く。
「たかがプロジェクト一つだろ?消えたもんは仕方ないだろ。
それを狂ったみたいに喚き散らして……わざと難癖つけたいのか?」
私はジンジンと熱を持つ頬を押さえた。口の中は鉄の味がする。
けれど、顔の痛みより、心の痛みのほうが百倍も辛かった。
私は健太を睨み据え、震える声で言った。
「この商談が流れたら、会社にどれだけの損失が出るか分かってるの?
その責任、あんたたちが取れるわけ!?」
彼は鼻で笑い、心底馬鹿にしたように言い捨てた。
「お前には関係ない」
目の前にいる二人の醜い本性を見て、吐き気すら催した。
結局、この人たちにとって私の努力なんて、ゴミ同然なのだ。
怒りを通り越して笑いが出てきた。
もうこれ以上、この人たちと話しても時間の無駄だ。
私は背を向け、デスクの書類をまとめ始めた。
明日、別の方法を考えるしかない。
だが、二歩ほど歩き出した瞬間、髪を強く鷲掴みにされた。
強引に引き戻され、あまりの痛みに涙が滲む。
健太は私の髪を掴んだまま、氷のような冷徹さで言い放った。
「誰が勝手に行っていいと言った?」
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