炎に消えたはずの妻が戻ってきた!? 後悔し続ける父と息子第1話
この話は約1998字。当サイトでは第1〜2話を試し読みできます。
夫と息子は、私の反対も聞かずに、離婚したばかりの彼女を家に迎え入れた。
彼女はずる賢く、陰で私と夫の仲をかき乱し、何度も争いを引き起こした。
我慢も限界に達した私は、彼女に出て行けと告げたのだ。
だが、それを聞いた夫と空は激怒した。
夫は「お前は妬むだけで同情心もない。乃愛の魅力には到底及ばないんだ。出て行くなら、お前が出て行け」とまで言った。
そして、息子さえも彼女の肩を持ち、「ママが謝らないなら、もうママなんか認めない」と宣言した。
自分を裏切る二人を見て、私の心はすっかり冷え切り、ついに離婚を決意した。
離婚の日、彼女と言葉をぶつけ合い、私を閉じ込めるようにして部屋のドアを鍵でかけ、ガスボンベに火を点けて爆発させたのだ。
夫は消防隊と駆けつけたものの、彼女を助けると、私のことは見向きもせずにその場を去ってしまった。彼は、私がその火事で死んだものと見なしたのだった。
再会の日、夫と空は私の姿を目の当たりにして、驚愕の表情を浮かべた。
「お前......俺たちを苦しませたくて、死んだふりなんかしたのか......」
* * *
颯斗は私の手をがっちりと掴み、その力はまるで骨が砕けそうなほどだった。
彼は目を見開き、声を張り上げる。「死んでなかったなら、なんで帰ってこなかったんだ!
お前はこの三年間、俺と空がどんな苦しみを味わったか......わかっているのか!」
颯斗は空をぐいと前に押し出した。空は一瞬ぼんやりした表情を見せたが、次の瞬間には私に飛びつき、大声で泣き始めた。
「ママ、死んじゃってなくて本当によかった......ママがどれだけ恋しかったか、わかる?」
成長した空の姿を見て、私の心がチクリと痛んだ。
最後に空を見たのは、あの離婚を決意した日の前日だった。
私は空に「一緒に行く?」と聞いたが、空は険しい顔で私を強く突き放し、「お前なんか出ていけ!」と叫んだのだ。
「僕は乃愛さんにお母さんになってほしいんだ!パパも乃愛さんが好きなんだから、邪魔しないでくれ!」と。
私はその時のことを思い出しながら、空を力いっぱい押し返し、颯斗の手からも振りほどいた。そして冷たく言い放つ。
「あなたたち、私を誰かと間違えているわ」
空は顔の涙を拭きながら、眉をひそめて私を見つめる。「嘘だ......君はママだよ!ママの手の甲にはほくろがあったはずだ、見せてよ!」
空は私の反対も聞かず、小さな手で私の手をしっかりと掴んだ。そして、手の甲に痣がないこと、無数の傷跡で覆われた私の手を見て、呆然とした様子で言った。
「ママ、どうしてこんなに手が焼けてる......」
肉が焼け縮み、皮膚の色もまだらになった手を見つめながら、私は目を颯斗に移した。
あの日、私は離婚の準備で荷物をまとめていた。突然、大きな爆発音がして、家全体が揺れたのを覚えている。
慌てて外に出ようとしたが、寝室のドアが鍵をかけられていた。私はドアを必死に叩きながら、急いで消防に電話したが、外の火勢はどんどん強まって、すぐに部屋にまで火が回ってきた。
燃えやすいものが多い寝室に、火が入り込むと瞬く間に炎が天井まで広がり、家全体が燃え上がった。恐怖に震えながら浴室の浴槽に身を縮め、燃え盛る火を見つめながら、震える手で何度も颯斗に電話をかけ続けた。だが彼の電話は、ずっと通話中のままだった。
しばらくして、外で物音がした。必死にドアまで這いずりながらドアを叩いていた私の耳に、颯斗の声が聞こえてきた。
「急いで乃愛を助けろ!こんな火事じゃ、中に誰かいても助かるわけがない......」
颯斗が遠ざかっていく足音を聞きながら、私は絶望の中でドアにもたれかかった。
その時、突然熱波が顔に押し寄せてきて、私は咄嗟に両手で顔を覆ったが、手は瞬く間に焼けただれ、血が滲んだ。
必死に痛みを堪えながら、もう一度浴室に戻ろうとしたその時、突然崩れ落ちてきた燃える梁が足を直撃した。
私の右脚は炎をまとった梁の重さで砕かれ、焼き尽くされた......
ここまで思い出して、体が小刻みに震えた。当時の痛みが全身を襲い、私は拳をきつく握りしめ、手を引っ込めたまま、再び言い放つ。
「だから、あなたたち、人違いだって言ったでしょう」
颯斗は眉をひそめ、私をじっと見据えた。
「もう無駄だよ。お前が琴音であることは間違いない
俺は許そう。お前が俺たちと一緒に戻ることさえ承諾すれば、乃愛への嫉妬から火を放って死んだふりをした三年間のことは、不問にしてやる。
ただし、お前も彼女と一緒に暮らすことを受け入れるんだ。彼女はお前の死で重度のうつ病になったんだぞ。俺たちには彼女を支える義務がある」
颯斗はまるで裁きでも下すような顔で私を見据え、恩赦を与えるかのような口ぶりで語った。
私はその高慢な態度に嫌悪感がこみ上げ、口元を引きつらせながら、左手の薬指にはめられた結婚指輪を見せつけた。
「私はもう、他の人と結婚しているのよ」
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)