海に散る星、届かぬ夢第1話
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結城晴香(ゆうき はるか)と桐生真也(きりゅう しんや)は、幼い頃から同じ孤児院で育った。
互いに寄り添い合い、支え合いながら、相手こそが自分にとって唯一の存在だと信じていた。
十八歳のとき、真也が告白し、二人は同じ大学へ。学内でも評判の良いカップルとなった。
二十二歳でプロポーズを受け、二人で新居を飾りつけながら幸せな未来を思い描いていた。
だが結婚式の直前、晴香はその新居で浮気をし、しかもその現場を真也に見られてしまった。
激しい怒りに駆られた真也は、晴香を責め立て、容赦なく傷つけた。しかし、その出来事の裏には、誰も知らない真実が隠されていた!
* * *
薬物研究所から解放されたあと、結城晴香(ゆうき はるか)はその足で葬祭センターへ向かい、自分の葬式の手配を始めた。
正面の大きなスクリーンには、桐生真也(きりゅう しんや)と椎名家の令嬢が一か月後に結婚するというニュースが流れていた。
記者がマイクを向ける。「真也社長は神原市のテクノロジー業界で『カリスマ』と呼ばれる若き経営者です。美玲さんとのご結婚は、まさに大物同士の誕生だとも言われています。挙式の準備だけで二十億円以上をかけられたとか?」
真也は隣の椎名美玲(しいな みれい)を見つめ、優しく答えた。「美玲と出会えたのは、俺にとって奇跡なんだ。彼女のためなら、どれだけお金を使ったって惜しくない」
記者たちは一斉に賛辞を並べ立て、二人を「理想のカップル」「絵に描いたような美男美女」と持ち上げた。
晴香は目を伏せた。三年前、本来なら彼女が真也の妻になるはずだった。
二人は幼い頃、同じ孤児院で育った。
互いに寄り添い、支え合い、相手こそが唯一の存在だと信じていた。
十八歳のとき、真也が告白し、二人は同じ大学へ。学内でも評判のカップルとなった。
二十二歳でプロポーズを受け、二人で新居を飾りつけながら未来を夢見ていた。
だが結婚式の直前、晴香はその新居で浮気をし、しかもその現場を真也に見られてしまった。
――彼の取り乱した姿はいまも忘れられない。
血走った目で晴香をその男の腕から引き剥がし、「なぜだ!」と叫んだあの瞬間を。
彼女は唇に冷たい笑みを浮かべ、言い放った。「もうバレたんだし、隠す意味なんてないわ。あなたは急性心不全で、すぐに死ぬんでしょ?だから私は次の相手を探すしかないの」
血を吐きながらも、真也は信じられず問い詰めた。「本当は理由があるんだろう?」
胸をえぐられる思いを押し殺しながら、晴香はさらに突き放した。「理由?もう惨めな暮らしはしたくないだけ。拓海様と一晩過ごせば二十万円。それにこのバッグも、彼からのプレゼントよ。百九十六万円」
その日、真也は狂ったように新居を壊し、晴香を追い出した。
それが、三年前の最後の別れだった。
「お客様、ご予約の葬儀プランですが、総額は百七十二万円になります」
提示された金額に、晴香は手元のキャッシュカードを見下ろした。残高は百万円。望む死に方すら、今の自分には贅沢だった。
彼女はカードを差し出した。「百万円しかありません。残りは数日待っていただけますか?」
職員は一か月以内に補えばいいと応じた。
だが、一か月で七十二万円を稼ぐのは容易ではない。それでも、一つだけ思い当たる方法があった。
晴香は神原市で最も華やかなジュエリーパーティーの会場前に立った。
招待状がないため、警備員に追い返され、それでも三時間待ち続けた。
やがて会場から人が出てきた。
真也が美玲の手を取り、堂々と姿を現す。
傍らにいた社交界の令嬢が声を弾ませた。「美玲さん、本当に幸せ者ね。十六億円の指輪を落札するなんて、真也社長ったら一瞬も迷わなかったわ!」
美玲は甘く微笑んだ。「真也は言ってくれたの。結婚は一度きりだから、すべてを最高のもので揃えてあげたいって」
「まあ、それ『絶対に離婚しない』って誓いみたいなものじゃない?」
二人が黒いリムジンに乗り込もうとしたとき、晴香は声を張り上げた。
真也が振り返る。
彼女の姿を見た瞬間、その瞳にはさまざまな感情が去来し、やがて憎しみだけが残った。
晴香は歩み寄り、首から外した貝殻のネックレスを差し出した。
「真也。このネックレスを七十二万円で買い取ってほしいの」
それは、二人が付き合い始めた頃に真也が海辺で拾った貝殻をつなぎ、手作りしてくれたものだった。――「晴香、信じてくれ。このネックレスがあれば、いつか俺と世界で一番大切なものを交換できる」
真也はそのネックレスを乱暴に奪い取り、晴香を睨みつけた。
「……三年ぶりに現れて、金目当てか?」
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