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永遠の毒薬第3話

この話は約3145字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

「誰かが君を殺そうとしてるって言ったよな?生きてるかどうか確認しようと思ってさ」

男の声には皮肉がたっぷり込められていた。

乃亜は無意識にスマホをぎゅっと握りしめ、一語ずつ吐き出すように言った。

「私、運がいいのよ。死ぬもんですか」

そう言うと、電話を切り、そのまま相手の番号をブロックした。動作には一切の迷いがなかった。

その頃、創世グループ傘下の病院、高級VIP病室では、美咲がベッドに横たわっていた。顔色は異常なほど青白く、まるで風に吹かれるだけで倒れてしまいそうなほど弱々しい。

凌央はスマホを手に持ち、表情には何か複雑な感情が読み取れた。

美咲は心の中で不安に駆られながら、恐る恐る口を開いた。

「凌央......乃亜さん、大丈夫だった?」

凌央はスマホをポケットにしまいながら、短く答えた。

「無事だ」

美咲は心の中で乃亜を何度も呪いながら、わざと優しい声で言った。

「だったら、あなたは乃亜さんのところに戻ってあげて。私ならお医者さんや看護師さんがいるし、平気よ」

しかし、凌央は淡々とした表情で返した。

「寝ろ。今日は俺がここにいる」

美咲は心の中で歓喜を覚えながらも、困ったような表情を作り、「でも......今夜帰らなかったら、明日乃亜さんがきっとおじいさまに文句を言いに行くわ。おじいさまの体に負担がかかるといけないから......」と消え入りそうな声で言った。

「余計なこと言わずに、さっさと寝ろ」

美咲は唇を噛みしめながら、じっと凌央を見つめた。

「本当に、今夜は私のそばにいてくれるの?」

「ああ。だから早く寝ろ」

翌朝、乃亜が目を覚ますと、目の前には紗希の怒りに満ちた顔があった。

「朝から何よ?なんでそんなに怒ってるの?」

紗希はスマホを乃亜の目の前に差し出し、声を荒げた。

「見て!美咲って、本当に性格悪い女よ!今度はまたトレンドを買って自分を話題にしてる!」

乃亜がスマホを受け取ると、そこには「衝撃!有名ダンサーが妊娠か?婚約者が夢幻館に現れる」というタイトルの記事が表示されていた。

記事を開くと、エコー写真と共に、凌央が美咲を抱きかかえながら夢幻館を出てくる写真が載っていた。

その腕に見えるパテックフィリップの時計――桜華市であの時計を持っているのは凌央だけだった。

乃亜は目頭が熱くなり、胸の奥に鈍い痛みが広がるのを感じた。心臓がまるで鈍い刃物でじわじわと抉られていくような痛み――呼吸すら苦しくなるほどの辛さだった。

たとえ離婚を決意したとはいえ、9年間も愛してきた人だ。この感情を簡単に断ち切れるわけがない。

紗希は彼女が苦しんでいる様子に気づくと、自分の腕を叩きながら悔しそうに叫んだ。

「ごめん、乃亜!妊娠してるのに、こんなこと言うべきじゃなかった!」

乃亜が何か言おうとしたその時、スマホが鳴り出した。

画面に表示されたのは見知らぬ番号。彼女は出るべきか迷ったが、もしかすると依頼人かもしれないと思い、しぶしぶ電話に出た。

すると、受話器越しから凌央の怒鳴り声が聞こえてきた。

「乃亜!昨日の夜、俺は病院で美咲を看病してただけなのに、お前はわざわざトレンドを買って美咲を叩いたのか?いい加減にしろよ!」

乃亜は胸の奥で沸き上がる怒りを必死で抑えながら、冷たい声で言い返した。

「私じゃない」

そんな卑劣な手段で美咲を陥れるつもりなんて、毛頭なかった。

「だったら、今すぐ訂正しろ!お前が俺と揉めて腹いせにやったって公表するんだ。それが終わったら、離婚に同意してやる」

凌央の言葉は刃のように冷たく、彼女の心を深く傷つけた。

乃亜は目に涙が溢れそうになるのを感じたが、必死に感情を抑え、声を張り上げた。

「凌央......あなた、頭おかしいんじゃないの?何も確かめずに私に訂正しろなんて、私の人生を潰す気?」

もし乃亜がこの記事が自分の仕業だと認めれば、桜華法律事務所から追い出されるどころか、美咲から虚偽の罪で訴えられるのは間違いなかった。

今日一日が終わる前に、彼女は完全に「叩かれる存在」になり、世間から見放されるだろう。

桜華市で名を馳せたトップの離婚専門弁護士は、ただの笑いものに成り下がる。

凌央、なんて非情な人なの......

「美咲が妊娠していることを知っているのはお前だけだ。なのに、今朝になって彼女のエコー写真が流出したんだぞ。お前以外、誰がこんなことをやるんだ?」凌央は冷たい笑みを浮かべ、問い詰めるように言った。

乃亜は胸の痛みを堪えながら、冷たく言い返した。

「彼女が妊娠していることを知っている人間がどれだけいるかなんて、本人にしか分からないことでしょう?凌央、この件は私の仕業じゃない。私に罪を着せようなんて、無駄よ」

昨日の夜の車の事故、そして今朝のトレンド報道――どちらも美咲自身が仕組んだものだと乃亜は確信していた。

自分に罪を押し付けるなんて、冗談じゃない!

「乃亜。俺の言う通りにしなかったらどうなるか、分かってるだろうな。お前の親友のデザイン事務所なんて、すぐに潰されるだろうし、おばあさんの治療費だって止まるかもしれないぞ」凌央の声は冷酷そのものだった。

乃亜の胸はまるで刃物で抉られるような痛みでいっぱいだった。

心をえぐるような言葉――凌央は、それを平然と言い放つ男だった。

「午前中のうちに答えを出せ」凌央はそれだけ言うと、電話を切った。

乃亜は震える手でスマホを握りしめ、目に涙を浮かべていた。

そんな彼女を見た紗希は、胸が締め付けられるような思いになり、黙って乃亜を抱きしめた。そして泣き笑いしながらも、心の中で一つの決意を固めた。

一呼吸置いて、紗希は感情を抑え、彼女をそっと抱きから離した。真剣な表情で言った。

「乃亜、先に顔を洗ってきて。私はちょっと仕事場に戻らなきゃ」

乃亜は彼女に軽く頷いて、「行ってきて。忙しいなら無理して来なくていいよ」と答えた。

紗希はジュエリーデザインの仕事をしており、最近いくつか大きな依頼を受けていた。乃亜は彼女の邪魔をしたくなかった。

「じゃあ、行ってくるね」紗希は再び彼女を抱きしめてから、部屋を出て行った。

朝食を終えたばかりの乃亜のスマホが鳴り響いた。

画面に表示されたのは山本祐史の名前だった。

なんとなく胸騒ぎを覚えながら電話に出ると、すぐに紗希の怒りの声が飛び込んできた。

「凌央、この最低男!殺したいなら私を狙いなさいよ!どうして乃亜にちょっかい出すの!?乃亜は昨日、あんな目に遭ったばかりなのに......」

乃亜は焦って彼女の声を遮り、「凌央に電話を代わって!」と叫んだ。

「少々お待ちください」祐史がそう答えた直後、冷たい男の声が電話越しに響いてきた。

「妻が親友を使って美咲に危害を加えようとした。すでに警察に通報済みだ。何か言い分があるなら、警察でどうぞ」

警察に通報したという凌央の言葉を聞いて、乃亜の心は凍りついた。

それでも、なんとか平静を装いながら言った。

「もし私が指示したというのなら、紗希を解放して。代わりに私が警察に行く」

凌央が本気で動けば、親友の小さなデザイン事務所などあっという間に潰されてしまう。紗希の夢が詰まった事務所を守るためなら、乃亜は何でもする覚悟だった。

凌央は冷たく笑いながら答えた。

「いいだろう。乃亜の言う通りにしてやる」

そう言うと、スマホを祐史に投げ渡した。

「彼女を解放しろ。そして、乃亜を警察に連れて行け」

電話越しにその言葉を聞いた紗希は慌てて言った。

「乃亜は昨日事故に遭って、まだ病院で横になっているのよ!警察に連れて行くなんて無理!」

本当なら、乃亜が妊娠していることを凌央に伝えるつもりだった。だが、今はそんな気すら失せていた。

こんな最低な男に乃亜の妊娠を知られたら、きっと無理やり子供を堕ろさせようとするに違いない。

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