和紙文母が命じたベランダでの反省 ―息子はお盆の日に十八階から落ちた― · 第2話設定≡

母が命じたベランダでの反省 ―息子はお盆の日に十八階から落ちた―第2話

この話は約1824字。当サイトで読める2話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第3話からは公式アプリで読めます。

若い警官は同情的に私の肩を叩くと、検死結果はすぐには出ないと説明し、しばらく慰めた後、私を家まで送ってくれた。

深夜0時、中央広場を通り過ぎる頃には、これから始まる連休を祝う人々で賑わっていた。

誰も出ない電話を見つめながら、この世界から見放されたような気持ちになった。

街に輝く明かりの数々。もう二度と、その中の一つが私のものになることはない。

帰宅すると、息子へのプレゼントに用意していたトランスフォーマーを抱きしめたまま、茫然とソファに座り込んだ。

空っぽの部屋には、もう息子の気配すら残っていない。

息子の担任の山田先生から電話があった。声は既に涙声になっていた。

「陽太くんのお父様......陽太くんのことを聞きました......」

電話の向こうで先生が声を詰まらせる。他人でさえこれほど息子を案じているのに、妻は......胸に針が刺さるような痛みを覚えた。

かすれた声で今日の出来事を説明すると、ベランダに閉じ込めたという話に、先生は言葉を失っていた。

「実は今日、陽太くんが心瑚ちゃんを押してしまって......心瑚ちゃんが泣いていたので、お迎えの時に奥様にお話ししたんです。その時、奥様はとても怒って、厳しく叱っていました。

でも、私はその時に状況を説明したんです。心瑚ちゃんが陽太くんの積み木を故意に壊して、『ママのいない子』と馬鹿にしたから、陽太くんは押してしまったんです。

心瑚ちゃんはシングルマザー家庭で、少し気の強い子なんです。それに奥様が特別に心瑚ちゃんを可愛がっているせいか、陽太くんをよく意地悪するんです。でも奥様はいつも『大丈夫よ、女の子だから我慢しなさい』って......」

電話を切った後、心の中は荒野のように虚しかった。

今回もまた、心瑚のことだった。

心瑚は、妻の真木言咲の元恋人、古村明の娘だ。

陽太が幼稚園で心瑚と出会って以来、妻は心瑚の告げ口を信じては息子を叱りつけ、息子はその女の子を心から嫌うようになっていた。

妻は育児系インフルエンサーで、教育学の修士号も持っている。息子が生まれてからは「科学的な育児」を提唱していた。

息子に対してはいつも厳しく、ほんの些細なミスでも必ず叱った。私が相談するたびに、「これは心理的強化よ。子供の間違いを正すために必要なの」と真面目くさって説明するのだった。

「あなたには分からないでしょうけど、世間は女の子に『身を守りなさい』と教えるばかりで、男の子の親に『息子を正しく育てて、人を傷つけないように』と教えることは少ないのよ。

三つ子の魂百までって言うでしょう?今きちんと教育すれば、息子は大人になってきっと私に感謝するわ!」

そんな持論をSNSで発信し、たちまち多くのフォロワーを獲得して育児インフルエンサーとなった。

最初は私も信じていた。ただ少し厳しいだけだと。母親が自分の子を愛さないはずがないと思っていた。

でも古村明の娘が現れてから、すべてが変わった。

妻は毎日の迎えで心瑚を我が家に連れ帰り、優しくおもちゃで遊んだり、絵本を読んだり......古村が仕事を終えるまでずっと面倒を見ていた。

リビングには心瑚の好きな人形が溢れ、息子のロボットのおもちゃは全部、狭い子供部屋に追いやられた。

心瑚が悪いことをしても、妻は優しく諭し、甘やかすように接した。

「女の子は小さなお姫様だから、甘やかして当然よ!」

でも息子が何か失敗すれば、厳しく叱りつけ、自室で反省するよう命じるのだった。

子供たち同士で揉め事が起きる度、妻は陽太にこう言い聞かせた。

「心瑚ちゃんはお母さんがいないの。可哀想でしょう?だから陽太は妹のことを思いやってあげないと」

「男の子なんだから、妹と何でも争うのはよくないでしょう」

妻は全ての愛情と優しさを他人の娘に注ぎ、自分の子どもは、まるで孤児のような扱いだった。

だから心瑚は、陰で陽太のことを「お母さんのいない子みたい」と馬鹿にするようになった。

この件で私は妻と何度も喧嘩をした。その度に妻は離婚を持ち出した。

息子は私たちが離婚すると聞くだけで怯え、何日も眠れなくなる。その様子を見るたび、胸が張り裂けそうだった。

息子のために、私は我慢に我慢を重ねた。まさか、このような形で息子を失うことになるとは。

リビングに所狭しと並ぶ人形たちを見ていると、怒りが込み上げてきた。

心瑚の玩具を片っ端から集め、段ボールに詰めて廊下に放り出した。そして、空っぽになったリビングで、涙が止まらなかった。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)

第3話は公式アプリで

当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第3話からそのまま読み進められます。

R58085
  1. 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
  2. アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
iPhone・iPad
で入手
Android
で入手

アプリで第3話を読む

作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。