死んだ後、彼氏は授業で私を解剖した第2話
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夜が更ける中、嶋田雪は大きな瞳を見開いて陸田和彦に尋ねた。
「和彦、一緒に寝てもいい?子どもの頃みたいに……私、ちょっと怖くて」
陸田和彦は一度拒絶しようとしたが、彼女の怯えた無邪気な目に触れ、口元でつっかえた言葉を呑み込んだ。
彼は彼女の過去の辛い経験を知り、また幼馴染としての情を思い返したのだ。
「いいぞ」
二人は服を着たまま小さな病室のベッドに横になった。
ぼんやりとした夜の闇の中、嶋田雪は無意識を装いながら私の話題を口にした。
「和彦、安紀さん、まだ拗ねてるの?」
私の名前が出た瞬間、陸田和彦の眉はぐっと寄り、険しい表情を浮かべた。
「彼女の話をするな。戻りたいなら戻ればいいし、外で野垂れ死んでも構わない」
彼はまだ、自分の言葉が現実になるとは思っていなかった。
私は本当に外で死んでいたのだ。
嶋田雪が足を捻挫し、陸田和彦が彼女を病院に連れて行ったあの夜、私は命を落とした。
死の間際、私は残された力を振り絞り、彼に電話をかけた。
「陸田和彦、助けて……危険な目に遭ってる」
必死の思いだったが、電話越しに彼が返してきたのは冷たい笑いだった。「お前みたいに命がしぶといやつが、何の危険に遭うって?雪ちゃんが足を捻ったんだ。俺は今、病院で彼女といる。周藤安紀、くだらない騒ぎはやめろ」
「本当だよ……本当に怪我したの。陸田和彦、私、次の瞬間には死んでしまうかもしれない……」
長い沈黙が続き、一瞬だけ希望が灯ったかに見えた。だが、それは次の彼の言葉で無残に打ち砕かれた。
「何か言いたいことは?なければ、これで切るぞ。彼女を病室に運ぶから」
彼は最後まで私の言葉を信じることはなかった。
「……もう何もない」
その夜、私は二度力を振り絞った。一度は彼に助けを求める電話をかけ、もう一度はその電話を自分で切るためだった。
「陸田和彦、さようなら。もう二度と会うことはない」
暗闇の中、嶋田雪の瞳には狡猾さと得意げな光が宿っていたが、それに陸田和彦が気づくことはなかった。
だが、私はその表情をよく知っている。
幼い頃、彼女がその顔を見せるたびに、私は父に叱られていた。
「安紀、雪は初めてうちに来たんだ。仲良くするんだぞ。彼女をいじめるなんて、許されないことだ」
「安紀、お父さんの教えを無駄にするつもりか?どうして雪の靴に画鋲を入れるようなことをするんだ」
陸田和彦と付き合うようになってからも、その表情は私たちの間に争いを生んだ。
「周藤安紀、俺は彼女を妹としてしか見ていない。それなのに、どうしてわざわざ彼女を困らせるんだ?
お前はどうしてそんなに心が歪んでいるんだ。雪ちゃんが作ってくれた弁当を捨てるなんて!」
そして今、彼女は勝利を確信していた。
私は彼女の手によって間接的に命を落としたのだから。
三日前の夜を、私は決して忘れない。
「安紀さんはずっと私によくしてくれたよね。私が和彦にとってどれだけ大切かもわかってるよね。だから、二人の関係が私のせいで壊れるのは嫌だよね?それに、安紀さんは法医学者なんでしょ。半分は警察みたいなものだよね。だから、この悪いやつを捕まえるのは、適任だよ!」
目を閉じる間際、私はすべてを知った。
暗い夜道で、微かな明かりの中、嶋田雪は私を引きずる犯人と手を叩き交わし、彼の差し出した煙草を悠然と吸っていた。
「いい仕事だったね。金は後日振り込むよ」
「どういたしまして」
私が死んでから四日目のこと、法医科の課長である許山英樹教授が陸田和彦を訪ねた。
「和彦、本来なら君にこんなことを頼むべきではないが、安紀が出かけてしまっているんだ。彼女と肩を並べるような腕の持ち主が見当たらなくて、それで君にお願いしに来たんだ」
許山英樹教授は四十代で、私たちを指導してくれた教授だった。
その言葉に、陸田和彦は皮肉めいた冷笑を浮かべ、冷ややかに言い放った。
「彼女は本当に身勝手だな。こんな大事件が起きているのに、のんきに外出なんてしているとは」
四日前、私のSNSには海辺で休暇を楽しむ写真が投稿されていた。
そして今日、警察署から郊外での失踪事件に関する緊急連絡が入ったが、私はそれに何の反応も示していなかった。
許山教授は陸田和彦とは異なり、私を庇うような言葉を口にした。
「きっと君との喧嘩が原因だろう。彼女は心を痛めているんだよ。安紀は仕事熱心で、事件を放っておくことなんて一度もなかったじゃないか。今彼女が戻らないのは、単に連絡を見落としているだけだろう」
陸田和彦は返事をせず、痛むこめかみを揉みながら話を切り替えた。「それで、要件は何ですか?」
「3日前、郊外で大量の血痕と引きずられた痕跡が発見された。犯行に使用された車両は押収されたが、被害者の遺体はどこにも見つかっていない。現場の分析によれば、被害者は20歳から25歳くらいの若い女性で、身長は165センチから168センチ、均整の取れた体格だった。
常に運動をしていたらしく、数百メートルも引きずられた後に立ち上がる力があったよう
だ。
しかし、現在までに被害者の遺体は行方不明で、犯人の手がかりもつかめていない」
「わかりました。この事件を引き継ぎます」
要件が済むと、陸田和彦はその場を離れようとしたが、許山教授に呼び止められた。
「和彦、君と彼女の間には、彼女の父親や嶋田雪の存在といった壁があるのはわかっている。だが、どんな健全で前向きな関係も、双方の努力と支え合いが必要だ。君たちの場合、ずっと彼女が一方的に努力してきた。彼女もいつか疲れてしまう。もし本当に彼女を失いたくないなら、プライドを捨てることが必要だ」
「彼女を失いたくないですか?」陸田和彦はその言葉を繰り返し、苦々しく笑った。「いや、彼女のしつこい追いかけがなければ、俺たちはそもそも始まりもしなかったんでしょう」
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