歪んだ愛第3話
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家の中の物をざっと確認した。
高価な物は一切持たず、季節に合った服と身分証明書だけを選んでまとめた。
妊娠してからというもの、いつも体がだるい。
荷造りをしているうちに夜になり、気がつけばソファに突っ伏したまま眠ってしまっていた。
翌日、玄関の扉が外から開く音で目を覚ました。私は驚いて慌てて起き上がった。
そして――想像もしていなかった光景が目に飛び込んできた。清司が帰ってきたのだ。
しかも、その手には一人の若い娘の手が絡んでいる。澪だ。
写真で見たことはあったが、実物はそれ以上に瑞々しく、写真ではその半分の美しさしか伝わらないだろう。
彼女の手には高級ブランドの紙袋がいくつもぶら下がり、ハイヒールに散りばめられたダイヤモンドが目を射るほどに輝いている。
――もう、完全に機嫌を取ってやったらしい。
胸の奥がずしりと沈んだ。こんなに早く戻ってくるとは思わなかった。
そして無意識に首へ手をやった。あのときの息苦しさが、また蘇ってきた。
自分でも信じられないが、私は清司が怖くなっていた。
唾を飲み込み、ソファから立ち上がった。
清司は澪を私の目の前まで連れてきて、私の目の前で彼女の髪を優しく整えると、淡々とした目で私を見た。
「お前、澪に謝れ」
思わず耳を疑った。
たとえ私たちが決裂し、彼が私の家族の生計を断ち、昨日は首を絞めようとしたとしても、それだけで十分狂気の沙汰だと思っていた。
なのに――その情婦に謝れと?
私が呆然としていたと、彼は私の顎を掴み、顔を澪の方へ向けさせた。
「聞こえなかったのか?澪に謝れ」
清司は商売人だ。人の心をどう打ち砕くか、熟知している。
たとえそれが、何年も共に過ごした妻であっても。
澪は部屋に入ってきてから、一度も私をまともに見なかった。
伏せた目、わずかに結んだ唇――言葉にせずとも、耐え難い屈辱に耐えているかのような、守ってあげたくなる顔つき。
「篠原さん、そんなことしなくても……私の立場なんて元から後ろめたいものだし、悠さんが私を嫌うのも当然だわ」
そう口にしながらも、私は確かに彼女が目を上げ、私を鋭く睨んだのを見た。
私が沈黙を貫いたと、澪は清司の袖を引っ張った。
「篠原さん、ちょっと疲れちゃった。休みたいわ」
清司は彼女の頬にキスを落とし、優しい声で言った。
「分かった、じゃあ部屋で休んでおいで」
澪は大きな瞳で私を一瞥し、不安そうに尋ねた。
「でも、ここは篠原さんの家でしょ?私、どこで休めばいいの?」
清司は何のためらいもなく、彼女を私たちの寝室へと案内した。
その意味は、言葉にしなくても分かる。
私は全身がひどく震えていた。歯を食いしばって必死に耐えたからこそ、狂ったように罵り散らすことはなかった
必死に呼吸を整え、彼が彼女を丁寧に部屋へ送り届けるのを見届けてから、背中に向かってかすれた声を投げた。
「清司……離婚しましょう。あなたは私の尊厳をゴミのように踏みにじり、両親が一生をかけて築いた事業も滅茶苦茶にした」
目を赤く染めながらも、必死に冷静を装い、言葉を続けた。
「全部私のせいよ。初めから、私は目が曇っていたんだから」
清司は眉をわずかに上げた。
両手をポケットに突っ込み、整った顔を私の間近に寄せた。
その表情は歪み、私には理解できない含みを帯びていた。
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