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愛人が妊娠?親権と慰謝料をもらい即離婚する第3話

この話は約1786字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

翠は顔を上げ、じっと考えてから頷いた。「ママがどこにいても、ついていくよ」

翠は少し間をおき、小さな声で付け加えた。「パパはいつも忙しいから、ママが一緒にいてくれたら嬉しいの」

子供の世界は、かくも単純で正直なものだ。

雅美の胸はチクリと痛み、身を屈めて翠の額に口づけをした。

「いい子ね。でも、このことはまだパパには内緒にしておこうね?」

「わかった!」

翠を寝かしつけ、家政婦に任せて自宅へ戻ったとき、雅美のスマホが鳴った。秘書の拓也からだった。

受話器の向こうの拓也は、雅美がすぐに激怒しないよう、おずおずと言葉を選んでいる。

「奥様、渉様が『澄波ヶ丘』の鍵を持ち出されました。どうやら新しい恋人の菊地遥(きくち はるか)という、芸能界でも目立たない端役の女性に渡したようです」

雅美はスマホを握りしめた手に、自然と力がこもった。

澄波ヶ丘は、雅美が結婚前に購入した物件だった。

場所の選び方も、彼らしいというべきか。

雅美は電話越しに、淡々と言い返した。「そう、わかったわ」

電話を切ると、すぐに東都の相場に基づいた家賃の請求書を、渉へ送りつけた。

人の物件に住まわせるのなら、それなりの家賃は払ってもらわねばならない。

渉からの返信はなかったが、間もなくして銀行から、かなりの大金の振込通知が届いた。

それからの数日間、渉が顔を見せることはなく、雅美にとっては静かで穏やかな日々が流れた。

もう渉の行動に振り回される必要も、執着して騒ぎ立てる必要もなくなったからだ。

さらには、2年ぶりに曲作りまで再開できた。視線を渉から離すと、心が驚くほど軽くなっていた。

ただ、共通の友人が投稿するインスタのストーリーで、彼の姿は目に入ってきた。

昨夜は海外のVIPカジノで豪遊していたらしく、遥が渉に寄り添って上機嫌に笑っていた。

その前の晩はプライベートクルーザーでのパーティー。写真の中の彼は遥の腰に手を回し、背景には海から打ち上がる花火が輝いている。

そして最新の投稿は、有名なプロデューサーがアップした撮影現場の合間の様子だった。

驚いたことに、渉が恋愛リアリティーショーの収録現場に現れていたのだ。

彼はモニターの横に気ままに座り、遥を見つめていた。

数年経っても、一度切れたはずの女をここまで寵愛し、自ら現場まで足を運ばせるとは、彼女もなかなか大したものだと雅美は思った。

翠の誕生日パーティーは週末に開かれ、会場は各界の著名人で溢れ返っていた。

パーティー始まる直前、雅美は翠の3歳の誕生日を完璧にするため、キッチンでメニューをもう一度確認しに行った。

会場に戻ると、真っ先に楓が不愉快そうな表情をしているのが目に飛び込んできた。

大勢の輪の中心で、翠の目の前にしゃがみこんでいる女がいた。間違いなく、遥だ!

遥は高価そうなブレスレットを手に、わざとらしく微笑んでいた。

「翠ちゃん、プレゼントだよ。可愛いでしょう?つけてあげよう?」

翠は怖かったのか、反射的に後ろへ身を引いて、小声で必死に拒否した。

「やだ……」

遥は翠の拒絶を無視して無理やり腕を掴もうとしたため、翠は思わず身をひるがえして逃げ出した。

遥は顔を上げ、近くにいた男を潤んだ瞳で見つめた。

「翠ちゃん、私に慣れてくれないみたい。仲良くしたいだけなんだけど……」

雅美はその光景を見て、一気に頭へ血が上るのを感じた。

数歩で歩み寄り、遥を突き飛ばすと、震えている翠をしっかりと抱き寄せた。

座り込んだ遥には目もくれず、真っ直ぐ渉を射抜くように見た。

「渉。外の汚らわしい事はここへ持ち込まないでって言ったでしょう。翠の目が汚れるわ」

その場が凍りついた。突き飛ばされた遥は驚いた表情をした後、わざとらしく目を赤くした。

遥は今にも泣きそうな顔で渉にすがりつく。

「渉さん……言われた通りに翠ちゃんへのプレゼントを持ってきただけなのに……」

渉は顔色を曇らせた。

雅美を一瞥してから手を差し伸べ、地べたに座る遥を立ち上がらせた。

「どこか打たなかったか?」

遥は彼にもたれかかりながら、か弱げに首を横に振った。

ようやく渉は雅美に視線を移し、苛立ちを隠そうともしなかった。

「最近はおとなしくなったと思っていたが、やはり分別のないままだな。

遥は新たに雇ったプライベートアシスタントだ。翠のことを知ってもらうために連れてきたのに、それすら許せないのか?

原田家の妻としての自覚はどこへ行った?」

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