愛人が妊娠?親権と慰謝料をもらい即離婚する第1話
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除夜の鐘が鳴り響く中、原田雅美(はらだ まさみ)に今年の最初のプレゼントが届いた。
夫が他の女と親密にしている写真だった。
10分前まで娘を抱いてパフォーマンスを見ていた夫が、今は別の女と寝ている。
ほぼ同時に、原田グループの御曹司が新人女優と密会しているというゴシップが、SNSのトレンドを埋め尽くした。
屋敷では、パーティーの参加者たちが一斉に雅美に視線を注ぎ、彼女の反応を待っていた。
「奥様……」秘書の中村拓也(なかむら たくや)が早足で近寄ってきたが、どこか緊張している様子だ。
「いつものやり方で、トレンドをさらに盛り上げ、火をつけてしまいましょうか?」
雅美の声は淡々としていた。「ううん。広報部に連絡して、噂をもみ消して」
拓也は呆然と立ち尽くした。
* * *
除夜の鐘が鳴り響く中、原田雅美(はらだ まさみ)に今年の最初のプレゼントが届いた。
夫が他の女と親密にしている写真だった。
10分前まで娘を抱いてパフォーマンスを見ていた夫が、今は別の女と寝ている。
ほぼ同時に、原田グループの御曹司が新人女優と密会しているというゴシップが、SNSのトレンドを埋め尽くした。
屋敷では、パーティーの参加者たちが一斉に雅美に視線を注ぎ、彼女の反応を待っていた。
「奥様……」秘書の中村拓也(なかむら たくや)が早足で近寄ってきたが、どこか緊張している様子だ。
「いつものやり方で、トレンドをさらに盛り上げ、火をつけてしまいましょうか?」
雅美の声は淡々としていた。「ううん。広報部に連絡して、噂をもみ消して」
拓也は呆然と立ち尽くした。
周りのひそひそ話が一瞬止まったかと思うと、さらに大きなざわめきとなって爆発した。
「……今の聞いた?揉み消す?聞き間違いじゃないわよね?」
「昔なら、渉さんの顔を潰すために何でもやっただろうに」
「本当よ。前に渉さんがモデルと車でいるのを撮られた時は、車をハンマーで壊してたわ」
「前回だってそう。パーティーの最中にあの豪華なクルーザーを焼き払ったのよ」
「毎度あの騒ぎぶりだものね。狂ったふりじゃ渉さんの心は留められないと気づいたのかしら?戦術を変えて、物分かりのいい妻を演じ始めたのね?」
そんな陰口は、容赦なく雅美の耳にも届いた。
雅美は聞き流し、何食わぬ顔でパーティーの進行を続けた。
誰もが彼女は、ただ騒ぐよりも手段を変えただけなのだろうと思っていた。
けれど2年間も続いて、雅美ももう疲れてしまったのだ。
パーティーのあと、遊び疲れて寝入った娘を寝室に運ぶと、雅美は書斎に向かった。
扉を叩くと、原田楓(はらだ かえで)がソファで眉間を押さえながら座っていた。
「お義母さん」雅美がそっと呼びかける。
楓は顔を上げ、隠しきれない申し訳なさを表情に滲ませた。
「雅美、本当に辛い思いをさせたわね……今すぐあのバカ息子に電話するわ!」
通話ボタンを押すとスピーカー越しに鋭い声が響いた。
「渉!年越しに家にいないでどこにいるの?すぐに戻ってきなさい!」
電話の向こうからは賑やかな音楽と、女の嬌笑が聞こえてくる。原田渉(はらだ わたる)の声はひどく投げやりだった。
「母さん、今は忙しいんだ。明日になったら謝りに行くから。
今日は友達の誕生日なんだよ。一緒にケーキを切る約束をしててさ。あ、雅美によろしく言っておいて。今日の対応は良かった、物分かりが良くなったなって。少しは『社長夫人』らしくなってきたよ。またな」
楓は胸を大きく波打たせて怒り、スマホをソファに叩きつけた。
「本当に救いようのない子ったら!」
雅美はふわりと笑った。瞳には穏やかな光が宿っていた。「お義母さん、今日はもう彼への非難を聞きに来たのではありません」
楓がきょとんとする。
雅美は穏やかに告げた。
「5年前に私の母の肝臓が限界を迎えた時、命を繋いでくださったのはお義母さんの善意でした。その恩は決して忘れません。
ですから、渉を繋ぎ止めて落ち着かせてほしいと頼まれた時、私は承諾しました。
精一杯努めましたよ。でも、翠が生まれて1年も経たずに元通りになってしまいました。ここ2年間、私も見っともないほど泣き叫んだし、出来る限りのことは全てやりました。でも、私には彼を留められませんでした」
楓は深い溜息をつき、冷たくなった雅美の指先をそっと握った。
「可哀想なことをしたね。恩で縛り付けてしまったのは、私の方よ。いいわ、望むことは何でも言ってごらん」
雅美は手元から一通の書類を取り出し、楓の前へ差し出した。
「離婚させてください。それから、翠の親権を譲ってください」
楓は複雑な表情でしばらく沈黙していたが、静かに頷いた。
「いいよ。手配してやる。その代わり、あと2週間だけ私のそばにいてちょうだい」
雅美は微笑んで小さく頷き、その場を後にした。
ドアノブに手をかけた時、背後から独り言のように楓の声が聞こえた。
「渉は最初、あなたに一目惚れしたから、あんなに執拗に追いかけ回していたのに……」
雅美の足がわずかに止まった。
確かに、かつての渉は雅美に真心があったのだ。
東都きっての遊び人が、雅美のために女遊びをキッパリとやめ、ひたむきであろうと学んでいた時期があった。
プロポーズの時、渉は公証書類を渡し、「俺のすべてはお前のものだ。そして、俺自身もお前のものだ」と言ってくれた。
娘の原田翠(はらだ みどり)が生まれた夜、雅美が難産で命が危うかった時、彼は初めて神仏にすがり、「自分の寿命の半分と引き換えにしてもいい」と願った。
かつて渉が注いでくれた愛情の全ては嘘ではないと思いたかった。世間の誰もが、「遊び人の改心」というお伽話を信じたのだ。
けれど真心ほど、移ろいやすいものはない。
1階へ降りると、スマホの画面が明るく光った。
渉からの多額の振り込み通知と共に、メッセージが表示されていた。
【みんなお前が丸くなったって言ってるぞ?いい女ぶりを見せるなんて、ガラじゃないな】
【今から『クラブ・星影』へ来るんだ。先月お前が潰そうとした例の会員制クラブだけど、再開したばかりだ】
【コンドームを持参しろ】
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