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愛をやさしく語り合った第3話

この話は約1688字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

「うん」私はおとなしく毛布にくるまり、頷いた。

けれど、ついまた視線が運転に集中している彼へと向かう。

無表情なときの良太は、いつも冷たくて近寄りがたく見える。

学校では彼を好きな子がたくさんいたけど、誰も告白なんてできなかった。

彼は翔真と同じ寮のルームメイトだった。

私はよく翔真を訪ねてその寮へ行っていたけれど、行くたびに良太は私をうっとうしそうに見ていた。

そして今も、迎えに来てくれたのに、態度はやっぱり冷たいまま。

さっき車に押し込まれたときは、手加減なんて一切なくて——

手首にはまだ赤い跡が残っているし、ひりひりと痛んでいた。

どう見ても、彼がずっと密かに私のことを想っていた、なんて信じられない。

私はそっとまつげを伏せた。

夢の中で見たことは、今のところ、すべて現実になっている。

でも——私が動き出したことで、少しずつ変わりはじめたこともある。

じゃあ、良太の気持ちも……変わってしまったのだろうか。

それとも、最初から私のことなんて、何とも思ってなかったのか。もしそうなら、私の行動は彼に迷惑をかけているだけじゃないか……

「寮に戻るか?」

突然、良太が横目で私を見て、問いかけてきた。

私の心臓がどきりと跳ねた。気づけば、口をついて出た言葉は——

「うん、あなたの寮に戻る」

良太はハンドルを握ったまま、鼻で笑うように嗤った。「翔真は今夜、戻ってこないぞ」

「知ってる」

私は毛布の端を握って、ぎゅっ、ぎゅっと指先に力を込めていく。

「別に、彼に会いたいわけじゃない」

次の瞬間、車が急ブレーキをかけて、路肩に停まった。

良太がこちらに振り返る。その瞳の奥にある冷たい霜のような色が、胸の奥をずしんと打った。

「紗季、俺をお前らの茶番に巻き込むな」

「ちがう、そんなつもりじゃ……」

彼は私をじっと見つめたまま、スマホを手に取った。

「タクシー呼んでやる。自分で帰れ」

「……良太」

私は唇をきつく噛みしめて、思わず彼のスマホを奪い取った。

「紗季」

彼は私を見つめたが、その目には怒りや嫌悪はなかった。

ただ、深く澄んだその瞳には、無数の感情が渦巻いていた。

私は突然、言葉にならない悲しさが溢れてきた。

「……良太、帰りたくない。寮に戻ったら、みんな笑うの」

「家にも帰れないの」

「ねえ……あなたの寮で、一晩だけ過ごさせてもらえない?」

私は彼のスマホを背中に隠しながら、声をだんだん小さくしていった。

「もちろん、もし本当に……私のことが嫌で、顔も見たくないって言うなら……いい。諦める」

その言葉が静かに落ちると同時に、涙がぽろり、と目から零れ落ちた。

ひと粒ずつ、静かに、音もなく。

良太は何も言わなかった。

だけど、彼は黙ってエンジンをかけ、車を再び走らせた。

向かったのは学校。そして車は、彼の寮の建物の前で止まった。

私は黙って良太について寮の中へ入った。

彼はクローゼットからきれいなスウェットを一着取り出して、私に差し出した。「風呂、あっち」

良太は背が高いから、渡されたスウェットは私にはぶかぶかで、

膝まで届くその丈は、まるでワンピースみたいだった。

シャワーを浴びたあと、そのままスウェットを着て、素足のまま部屋に出る。

良太は私をちらりと一瞥したが、すぐに目をそらした。

私は翔真のベッドの横を通り過ぎて、良太のベッドの端にそっと腰を下ろす。

濡れた髪の先から水滴が落ちて、シーツにしみをつくった。

私の体にふんわりと残る香りは、良太が使っているシャンプーとボディソープのものだった。

狭いこの空間に、彼と同じ匂いがほんのりと漂いはじめる。

それは、言葉にできないけれど、どこか曖昧で、静かに芽生えるなにかだった。

良太はタバコの箱を手に取り、軽く咳払いをして言った。「ちょっとタバコ吸ってくる」

そして、バルコニーへと出ていった。

私は少しだけ興味をそそられて、良太のベッドを見回す。

淡いグレーのシーツと布団は、きちんと整えられていて清潔そのもの。

机の上にはパソコンと数冊の本が置かれ、無駄のない整った印象だった。

なんとなく、彼の机の置物にも目を向けようとした、そのとき——

突然、携帯が鳴った。

画面に表示されていた名前は、翔真だった。

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