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愛は雲間に隠れる第1話

この話は約1528字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私が胃の病気で倒れそうになっている時、野田安里(のだ あさと)はちょうど自分のアシスタントと一緒に誕生日ケーキのロウソクを吹き消している。

私は痛みで意識が飛びそうなのに、彼は一度もこっちを見ないで、アシスタントの鼻を甘く撫でる。

「結月、またひとつ大人になったね。バースデイ・ガールはちゃんと願い事するんだよ!」

そのあと私は激痛で意識を失って病院に運ばれる。安里に何十回も電話をかけるけど、全部すぐ切られる。

一方で、アシスタントはSNSに投稿して、九枚の写真でも収まりきらないほどのプレゼントを自慢している。

「最高!安里ちゃんって世界一番優しい人!結月はずっと安里ちゃんと一緒にいられるように!」

私は電話で問い詰めるけど、安里は全然悪びれない。

「結月の誕生日なんだから、俺が一緒にいて何が悪いの。嫌なら別れれば?」

これで九十九回目の「別れよう」だ。彼は相変わらず、私が絶対に別れないと思い込んでいる。

でも今回、私は同意する。

* * *

私が胃の病気で退院する時、一人でタクシーに乗って家に戻る。

いつも通り鍵を取り出すけど、どうしても開かない。

中から物音がして、私はインターホンを押す。

一回、二回、三回……

しばらくしてやっとドアが開く。

伊藤結月(いとう ゆづき)が顔を出して、舌をぺろっと出しながら謝ってくる。

「思乃さん、ごめんなさーい!昨日の誕生日が遅くまでで、安里ちゃんが一人で帰るの心配だから、ここに泊めてもらったんだよね!

昨日の夜、帰ってこなかったのはどこ行ってたの?」

私がまだ答える前に、安里が彼女の頭を甘やかすみたいに撫でる。

「結月みたいにかわいい子が一人で帰るなんて危ないだろ」

そう言いながら、彼は私を横目で睨む。

「放っとけよ。昨日わざと胃が痛いふりして黙って離れたんだろ。そんなみえみえの嫉妬の芝居、何度も見てきた」

昨日、安里は確かに私が苦しんでお腹を押さえるのを見た。

でも彼にとって、それは私の「嫉妬の芝居」にすぎない。

目の前の結月は、髪が濡れて安里の大きなシャツを着て、挑発的な目で私を見ている。

そして安里は上半身裸で、体には生々しい爪痕と赤い跡が散らばっている。

私は感情をあまり出さずに、静かに口を開く。

「安里、あなたにとって私はもうそんな下品な女なの?」

彼は鼻で笑う。まるで世界で一番おかしい冗談を聞いたかのように。

「で?胃が痛いんじゃなかったの?もう治ったのか?

早くもなく、遅くもなく、わざわざ結月の誕生日の時に痛くなる?俺には、結月の誕生日をぶち壊したかったとしか思えねぇな」

彼はわかったふうに私を上から下まで見回す。

「もういい、今回のワガママは大目に見てやる。結月は心広いから気にしない。

さっさと俺たちに料理を作ってこいよ。結月、お腹空いたってさ」

昔の私なら、気持ちを押し殺して黙っていくつかの薄味の料理を作るだろう。

でも今の私は、もう自分を犠牲にしない。

「作らない。作りたいなら自分で作る」

安里の顔が一気に曇る。

「明里思乃(あかり しの)、いい加減にしろ。俺が結月の誕生日に付き合ったくらいで、そんなに機嫌悪くするか?

もう三十歳近いくせに、若い子相手に嫉妬してどうするんだ。

もういい、食べない。お前の顔見たら食欲失せたぜ」

結月が前に出て、彼の腕にぎゅっと絡みつく。

「安里ちゃん、怒んないでよ!あとで展覧会に行くんだから!」

安里はうなずき、声には甘さがあふれる。

「結月の言う通りだ。全部君に従うよ。

その時は才能あるデザイナーをもっと見つけてくれ。でないと、誰かさんが俺は彼女なしじゃダメだとか勘違いしちゃうからな」

そう言って、安里は結月の手を引いて、そのまま振り返りもせずに出て行く。

ドンッとドアが閉まる音は、まるで私の心を粉々に砕くようだ。

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