愛は消えゆく第1話
この話は約2007字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
「清水文乃(しみず ふみの)、本当に黒川陽斗(くろかわ はると)を華国科研機密プロジェクトに推薦するつもりなのですか?
このプロジェクトは期間が10年にも及びます。君たちは長いあいだ離れ離れになりますよ」
プロジェクト責任者は私を見つめ、その目には驚きと疑いが満ちている。
社内では、私と陽斗は誰もが認める模範カップルだ。あの時、陽斗が私を助けるために、全身の血のほとんどを輸血した話は今も語り継がれている。
スマホに映る監視カメラの映像には、陽斗と後輩が私たちのベッドで絡み合う姿が映っている。
私は迷わずうなずく。
「ええ、離れたいからです」
陽斗が私を裏切ることを選んだなら、私を失うという代償を払わなければならない。
去るべきなのは彼であって、私じゃない。
* * *
「清水文乃(しみず ふみの)、本当に黒川陽斗(くろかわ はると)を華国科研機密プロジェクトに推薦するつもりなのですか?
このプロジェクトは期間が10年にも及びます。君たちは長いあいだ離れ離れになりますよ」
プロジェクト責任者は私を見つめ、その目には驚きと疑いが満ちている。
社内では、私と陽斗は誰もが認める模範カップルだ。あの時、陽斗が私を助けるために、全身の血のほとんどを輸血した話は今も語り継がれている。
スマホに映る監視カメラの映像には、陽斗と後輩が私たちのベッドで絡み合う姿が映っている。
私は迷わずうなずく。
「ええ、離れたいからです」
陽斗が私を裏切ることを選んだなら、私を失うという代償を払わなければならない。
去るべきなのは彼であって、私じゃない。
責任者の事務室を出ると、同僚たちが笑顔で祝いの言葉をかけてくる。
「清水、おめでとう!もうすぐ黒川との結婚式でしょ」
「黒川、京市中の花屋を回って、清水の大好きなスズランで会場をいっぱいにするって聞いたよ」
「そんな花より、アフリカでプロジェクト中に清水が大出血した時、黒川は命がけで助けたんだよね」
羨望のまなざしを向けられながら、私は薬指のダイヤの指輪を撫で、少しぼんやりしている。
一ヶ月前、陽斗は私にプロポーズした。
このプロポーズのため、彼は3ヶ月以上も準備を重ね、会場の設営から進行まで全て一人で整えた。
大勢の祝福の中で、私は涙が止まらなかった。
彼は私の両親の前でこう誓った。
「文乃、僕は一生をかけて君を愛する。君の体には僕の血が流れている。僕たちは一生の恋人だ。絶対に裏切らない」
あの瞬間、私は永遠に幸せだと思った。
しかし翌朝、目を覚ますと枕の下に見知らぬイヤリングがあった。
その日、陽斗の後輩の鈴木和花(すずき のどか)がインスタにそのイヤリングの写真を投稿し、片方は落としてしまったが、これは自分が密かに想っている人からもらったものだと書いていた。
私は陽斗に内緒で、寝室の監視カメラの電源を入れた。
この監察カメラは、陽斗が出張中、連続強盗事件が起きていたため、私の安全を心配して設置したものだった。
皮肉なことに、今では不倫の証拠を押さえるために使っていた。
数日後、急な残業をしている夜、突然監視カメラの通知が届く。
画面には、陽斗と和花がベッドで絡み合う姿が映っている。
和花は陽斗の首に腕を回し、甘えた声で言った。
「先輩、私と付き合ってください」
荒い息をついていた陽斗は、ふと動きを止め、目つきが冷たくなった。
「しっかりしろ。僕が愛するのは一生、文乃だけだ。
君とはただの刺激を求めてるだけだ。文乃と結婚したら、もう会わない」
和花はすぐに涙を溢れさせる。
「ただ好きになっただけなのに、そんなに冷たいの?」
彼女の涙を見ると、陽斗はすぐに抱きしめて慰め、再び絡み合い始める。甘い息遣いが室内に響く。
私は携帯を持つ手が震え、涙で視界がぼやけた。
胸に鋭い痛みが走り、息もできないほどだ。
家に帰ると、和花の姿はなく、陽斗が台所から熱いスープを持って出てくる。
「残業疲れただろう?手を洗って夜食を食べて」
近づいて初めて、彼は私の腫れた目に気づき、心配そうに尋ねた。
「文乃、目はどうしたの?誰が泣かせたの?」
私が黙っていると、一緒に残業した同僚に問い合わせようと電話を取り出す。
私はそれを止める。
「誰にもいじめられてない。ただ、さっき見た映画で、男が愛してると言いながら恋人を裏切る話で、悲しくなっただけ」
陽斗は安堵の息をつく。
「文乃、映画は作り物だよ。僕は絶対に君を悲しませない」
「陽斗、もし私を愛していなくなったら、教えて。別れればいいから」
彼は唇を尖らせて私を抱きしめる。
「文乃、絶対に別れない」
彼の襟に付いた和花の香水の香りを感じながら、私は心の中で悲しみに沈んだ。
チャンスはあげた。だが彼は告白しなかった。
それから一ヶ月、私が残業するたび、監視カメラの通知が届いた。
結婚式が近いせいか、二人の関係はより頻繁になっている。
同僚の歓声が、私を現実へ引き戻す。
「清水、黒川って本当に優しいね。週末の残業にまで花を届けるなんて」
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