息子の結婚式、夫は初恋の相手と壇上に上がった第1話
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息子の陽翔(はると)がもうすぐ結婚するというのに、本来なら一緒に準備を手伝うはずの夫の高橋圭一(たかはし けいいち)は、最近ずっとスマホばかり見てぼんやりしていた。
その様子に私は不快になり、圭一が注意をそらした隙に、彼のスマホをこっそり見た。
【キミはもう帰国しないと聞いたから、俺は言われるがまま好きでもない女を妻にした。もしキミが帰ってくると知っていたら、俺は……】
【私はもう二度と離れない、あなたに会いたいわ】
私は何事もなかったようにスマホを元に戻した。
圭一がスマホを開くのを見ていると、彼は突然子供のように涙をぽろぽろとこぼし始めた。
私は陽翔の結婚式を最初から最後まで全て一人で取り仕切った。
しかし圭一は、結婚式当日、初恋の相手を連れてきた。
結婚式が終わった後、私はついに我慢するのをやめて、離婚を切り出したのだった。
* * *
息子の陽翔(はると)がもうすぐ結婚するというのに、本来なら一緒に準備を手伝うはずの夫の高橋圭一(たかはし けいいち)は、最近ずっとスマホばかり見てぼんやりしていた。
その様子に私は不快になり、圭一が注意をそらした隙に、彼のスマホをこっそり見た。
【キミはもう帰国しないと聞いたから、俺は言われるがまま好きでもない女を妻にした。もしキミが帰ってくると知っていたら、俺は……】
相手からは【私はもう二度と離れない、あなたに会いたいわ】と返事が来ていた。
私は何事もなかったようにスマホを元に戻した。
圭一がスマホを開くのを見ていると、彼は突然子供のように涙をぽろぽろとこぼし始めた。
私の心は完全に冷え切り、陽翔の結婚式が終わった後、離婚を切り出したのだった。
「陽翔、私はあなたとお姉ちゃんを産んで育て上げて、やっとあなたが家庭を持った。母さんもこれからは自分の人生を過ごしたいのよ」
嫁いできたばかりの陽翔のお嫁さんは意味がわからない様子で、ただ陽翔の脇腹をつつくばかりだった。
陽翔は険しい顔で言った。「母さん、良い歳して父さんと離婚するって?俺と瑠奈が結婚したばかりなのに離婚を言い出すだなんて、側から見れば俺と瑠奈が母さんに何かしたみたいじゃないか。
父さん、そうだよな?」
ソファーに座りスマホを見つめていた圭一は、ようやくまぶたをあげ、今日初めて私を正面から見て言った。「明日着る服、アイロンはかけてあるのか?」
私は反射的にアイロンをかけに立ち上がりかけたが、ぐっと足を止めて返した。「圭一、あなた、私に何か言うことはないの?」
圭一は少し考えてから、首を横に振った。
私は唇を強く噛み締め、下唇にじんわり血の味が広がった。
陽翔の結婚式で、本来なら私と肩を並べるはずの圭一は、私の知らない女を隣に連れてきた。式の間ずっと甲斐甲斐しく世話を焼き、水でさえ温度を確かめてからその女に口にさせていた。
私は親戚や友人からの視線に耐えながら、そんな圭一の行いを笑顔でやり過ごした。
結婚して三十年、夫婦仲は淡々としていたが、こんなふうにみんなの前で圭一が私の顔を潰すのは初めてだった。
私は圭一を見つめて叫んだ。「私たちの息子の結婚式だと言うのに、私の席に別の女を連れてきておいて、なんの説明もないの?」
圭一はようやくはっとして、めんどくさそうな目を向けてきた。「白川玲(しらかわ れい)のせいで離婚だと?
何年も会ってなかったただの昔からの友達だ」
横で聞いていた陽翔まで圭一の味方をする。「そうだよ母さん。玲さんのスピーチがなかったら、母さんのその口下手じゃ、俺は笑われてたかもしれないんだぞ」
私は鼻で笑い、何も言わずに立ち上がった。圭一の明日着る服を取り出して、アイロンを温め、一つ一つ丁寧に皺を伸ばしていく。
圭一と陽翔は私がいつもの従順な姿に戻ったと思ったのか、ほっとしたような顔をしていた。
二人は仕事の話をし、時折瑠奈さんが相槌を打っていた。
私は話についていけず、口を挟もうとするたびに煙たがられた。
シャツの皺が一つまた一つと伸びていくたびに、私の離婚への気持ちは固まっていった。
三十年間、私は家庭内の全てを担ってきたが、圭一が私に優しい目を向けてくれたことは一度もなかった。
私たちはお見合いで知り合った。最初は好きな気持ちなどなく、ただ生活を共にする日々だった。
しかし一緒に暮らすうちに、私はちゃんとした家庭を築こうと思うようになった。
圭一は冷たいところはあったけれど、それ以外に欠点はないと思っていた。
まさか圭一に何年も忘れられない初恋の相手がいるだなんて思いもしなかった。
私はアイロンを立て、服をハンガーにかけた。
寝室の近くまで来た時、陽翔の弾んだ声が聞こえた。
「玲さんってそんなにすごい人なの?父さん、今度俺にも紹介してよ」
私はどうしようもなく目を伏せた。
私が大事に育ててきた陽翔までも、玲さんに会っただけで心を奪われてしまった。
私は部屋に戻ると、全身の力が抜けたようにベッドへ倒れ込んだ。
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