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恋人の異性関係、どこまでなら許せる?第3話

この話は約1694字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

涼介は満足げに歩み寄り、私の頭を撫でた。

「行ってくる。夜は戻らないかもしれない」

ドアが閉まる。

その瞬間、私は車のキーを掴み、すぐに後を追った。

涼介の車はスピードを上げる。

会社の逆方向へ曲がり、高級レジデンスの敷地へ入っていった。

私は車で、こっそりと彼の後をつけた。

涼介の車が、専用駐車スペースに停まっていた。

ドアが開き、彼が降りた。

ちょうどその時、エレベーターホールから、ミニスカートの女の子が歩いてきた。

ゆるふわの巻き髪に、完璧なメイク。まさに「甘々バービー」。名前も佐藤天乃(さとう あまの)らしい。

彼女は涼介を見ても、私が想像していたように飛びついたりはしなかった。

彼女は腕を組んで、不機嫌そうに足をトントンさせていた。

「遅い!もう五分も待ったんだけど?」

あの涼介。

私の前では常に上から目線で、誇り高いあの男が。

今は慌てて駆け寄り、必死に機嫌を取っている。

「ごめん、渋滞してて……」

「言い訳ばっか!」

天乃は甘えるように、彼を軽く蹴った。

高級スーツのパンツに、くっきりと靴跡が残る。

涼介は怒るどころか、しゃがみ込んだ。

「ストラップ、緩んでるよ。転ぶと危ない」

彼は片膝をつき、丁寧に彼女のヒールのストラップを直してやった。

車内からその光景を見つめながら、私は吐き気を覚えた。

天乃は見下ろすように彼を見て、ふっと笑った。

彼女は足を伸ばし、涼介の膝の上にそっと置いた。

「ねえ。昨日の話、まだ生きてる?」

涼介は顔を上げ、その瞳は恍惚としていた。

「もちろん。約束だ」

「じゃあ、言ってみて」

天乃はつま先をそっと揺らした。

駐車場は静まり返っていた。

私は息を呑んだ。次に何が起きるのか、信じられなかった。

涼介はあたりを見回し、誰もいないのを確かめた。

そして、彼はうつむくと、天乃の靴に顔を寄せた。

「……ワン」

低く、媚びるような犬の鳴き声が聞こえた。

音は、誰もいないガレージにこだました。

この瞬間、私の価値観は完全に打ち砕かれた。

馬鹿げている。

あまりに馬鹿げている。

あの理知的な仮面の下に隠れていたのは、こんなにも卑しく醜い本性だったのだ。

天乃はくすくす笑い、彼の頭を撫でる。

「いい子。いい子。

で?あの地味女とはいつ別れるの?

早く涼介の別荘に住みたいんだけど」

涼介は立ち上がり、膝の埃を払う。

声はいつもの冷静さに戻っていた。

「もう少しだ。

姉がヨーロッパでのプロジェクトの所有権を俺に渡せば、その時点で別れる。

今はまだダメだ。

彼女は家柄も問題なくて、気も弱い。そんな扱いやすいタイプが姉は好きなんだ。

彼女は俺にとって最高のカモフラージュだから。

彼女がいないと姉がうるさいんだよ。そうなったら、こんなふうに楽しくやれないだろ?」

カモフラージュ。

気が弱い。

扱いやすい。

彼にとって、私はただの都合のいい存在だったんだ。

冷たいコンクリート柱にもたれ、爪が食い込むほど強く拳を握りしめた。

泣かない。

こんな男のために、涙なんて使わない。

私はスマホを取り出し、ある番号を押した。

涼介が唯一、逆らえない相手。

榊家の実権を握る人物――榊涼子(さかき りょうこ)。

受話器の向こうから、落ち着いた女性の声が届いた。

「どちら様?」

私は深く息を吸い、声を整えた。

「榊社長、遥です。

少し、お時間をいただけますか。

社長の弟のこと――そして、御社のヨーロッパ事業について」

……

涼子は私をあるプライベートクラブに呼び出した。

彼女は隙のないビジネススーツに身を包み、その存在は圧倒的なオーラを放っていた。

「座っていいよ」

彼女は一口お茶を啜ると、単刀直入に切り出した。

「弟があなたを利用していること、知っているわ」

私は一瞬、言葉を失った。

彼女は全てお見通しだったのだ。

「涼介のあの程度の小賢しさなんて、あなたのようなお人好ししか騙せないわ」

涼子はバッグからファイルを取り出し、私の目の前に滑らせた。

「これは榊家が彼のために用意した縁談相手、小林家の令嬢よ。

涼介は縁談相手を嫌がっている。でも私に逆らう度胸もない。だからあなたを前に立たせて盾にした。

彼は、あなたが従順で、扱いやすく、後ろ盾もないから、自分の手のひらで転がせると思っているのよ」

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