恋する十五年第1話
この話は約1406字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
裕也と付き合って15年間、ずっと幸せな時間を過ごしていた。
ある女性が現れるまでは。
彼は突然冷たくなり、あらゆる手段を使って私に離婚を迫るようになった。
私は必死に彼にしがみつき、どんなに傷ついても、いつか彼は心を入れ替えてくれると信じていた。
だが、ついに悟ったのだ。
この思いは、確かに終止符を打たなければならないと。
* * *
江城の年に一度のオークションには、父と一緒に参加した。
今日は、私にとっても、父にとっても非常に重要な日だ。
母の遺品がこのオークションに出品されているからだ。
オークションの主催者は、父の旧友であり、私たちは最前列に席を用意された。
しばらくして、母のルビーのネックレスが出品された。
「2,000万!」
私はいきなり高値をつけた。
「1億」
数秒後、誰かがその価格を数倍にも引き上げた。
その声には聞き覚えがあった。
振り返ると、驚くべきことにそれは裕也の秘書だった。
彼は私に気づいた途端、戸惑った様子で、すぐに視線をそらした。
秘書が1億もの大金を持っているはずがない。間違いなく裕也が出したものに違いない。
彼の表情を見て、私は瞬時に悟った。このネックレスが誰の為に買われるものなのか。
今、裕也が大切にしている女性、深山菫の為だと。
「あれは裕也くんの秘書じゃないか?」
父も彼に気づいた。
「彼はお前の為に入札しているのか?彼に今日来るって伝えなかったのか?」
私は首を振った。
最後に裕也が家に帰ってきたのは1ヶ月以上前。私たちは暫く連絡を取っていない。
仮に伝えたとしても、彼は気にも留めなかっただろう。
私の表情を伺った父は何かを悟ったように、顔を曇らせ、「1億2,000万」と札を上げた。
「2億」
向こうは全くためらわずに再び札を上げた。
「3億」
「6億!」
父の手は震え、再び札を上げようとしているようにも見えたが、最終的には無力に膝の上に手を下ろした。
父は小さな会社を経営していて、そんな大金は持ってない。
「バン、バン、バン」
ギャベルの音が鳴り響き、落札が決定された。
私は父と共に、母の遺品がケースに戻され、裏側に運ばれていくのをただ見つめていた。
その後のオークションには、もう身が入らなかった。
オークションが終わると同時に、私はすぐに立ち上がり、裕也の秘書の元へと向かった。
「田中さん」と私は彼を呼び止めた。
彼は一瞬足を止め、振り返った。
「なぜオークションに来たんですか?」と私は尋ねた。
心の中に、まだごく僅かな希望があった。
もしかしたら、裕也の指示ではないのかも知れない。
彼が答える前に、上階からイキイキとした女性の声が聞こえてきた。
「三好さん、彼は私の連れです」
顔を上げると、ピンクのドレスを纏った若い女性が階段を降りてきた。
彼女は流行りの可愛らしいメイクをしていて、ぽっちゃりとした顔がピンク色に染まり、小柄で、見る者に愛おしさを感じさせる。
まさに、裕也が好きなタイプだ。
彼女の為に、裕也は私との離婚を迫っている。
上階のVIPルームは、財力と権力を兼ね備えている者だけが入れる場所だ。
裕也の妻である私には無理で、深山菫は立ち入りできる。
彼女は無邪気なふりをして、私の前に立った。
「裕也さんは、私がルビーのネックレスが好きだって知ってて、でも彼は出張中で間に合わないから、代わりに秘書の田中さんに付き添わせてくれたの」
深山菫は上目遣いで、「ただ、三好さんもこのネックレスが気に入ってたとは思わなかったわ」と言った。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)