彼氏が婚約式を葬式に…今更、後悔しても遅い第3話
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これ以上、どう味方をしろというのだろうか?この10年、正人が剛に反抗して無茶な行動をするたび、いつも後始末をしてきてあげたというのに。それに私が二宮(にのみや)家の娘だから、剛は私にいい顔をしてくれるが、そのせいで正人から数えきれないほどのひどい扱いを受けてきた。
私はただ、普通で幸せな結婚がしたかっただけ。でも正人にとっては、私たちの婚約披露パーティーを台無しにした柚のほうが大切だったようだ。
「お前、会社に入ってから本当に父さんそっくりになってきたよな。自分のことばかりで、俺の気持ちなんてまったく考えない。大体この結婚だって、一度でも反対したことあったか?父さんがお前を気に入ってるのを知ってて、それに乗っかっただけだろ!」
正人はそう言い募るうちに、次第に感情を高ぶらせ、声には悔しさと不満、そしてどこか拗ねたような響きまで滲み始めていた。
どうやら私の間違いだったようだ。両親に無理を言ってまでこの結婚を認めてもらうべきじゃなかった。10年も追いかけてきたこの恋に、素敵な結末が待っているなんて夢見た私が馬鹿だったのだ。
「じゃ、お二人とも末永くお幸せにね」もうなんの感情も感じなかった私は、ただ正人を見つめてそう言った。
欲しいものは、もう正人には与えられない。そう思いながら、入れ忘れた物はないかと辺りを見回していると、ベッドサイドテーブルが空っぽなのに気づいて、思わず声が漏れた。
「あの木の人形は?」
「なんだって?」興奮がまだ収まっていない正人は、私が何を言っているのか分かっていないようだ。
すると、そばにいた使用人がおどおどと口を開く。「あのお人形でしたら、小川様が誤って壊してしまいまして……旦那様から、捨てるようにと」
あの人形は、正人が18歳の誕生日に、私のために彫ってくれたプレゼントだった。どこへ引っ越すときも、必ず持って行っていた。もう10年以上も、ずっと一緒だったのに。
「もう出ていくくせに、人形なんか持って行ってどうするんだよ。それに、あれは俺が作ったんだから、俺の味方をする人間にしかやらない」正人は腹立ちまぎれに、そう吐き捨てた。
たしかに、その通りだ。別れるというのに、元カレのプレゼントを持っていくなんておかしいことだ。
「そうね。じゃあ、私たちの関係はここまでね。今までありがとう」私はそう言い残し、家を後にした。
一瞬躊躇ったがやはり追いかけようとした正人だったが、柚に引き留められた。
「先輩。今追いかけたら、先輩のお父さんの思うつぼよ。きっとどこかでほくそ笑んでるんだから。それに、先輩が恵美さんの言うことをなんでも聞くから、お父さんも強気で婚約話を進められたのよ」
正人は足を止め、閉まったドアを見つめる。
人形が壊れたんだ、きっと恵美は傷ついているだろう。
まあ、あいつが謝ってきたら、また新しいのを彫ってやればいいか、と正人は心の中で呟いた。
私は母に紹介された、安藤要(あんどう かなめ)という人物と会った。家柄も釣り合っていているし、性格は穏やかで、見た目も正人にひけをとらない。結婚相手としては申し分なかった。
しかも要は私の好きな白いバラの花束をくれた。
「実は俺たち、同じ大学の出身なんだよ」驚く私を見て、要は優しく微笑みながら言う。「君はコンテストやインターンで忙しそうだったから、覚えていなくても無理はないか」
あの頃の私は、頭の中が正人のことでいっぱいだった。会社に行くか正人に会うかの繰り返しで、周りのことにはほとんど関心がなかったのだ。
私が口を開こうとした、その時だった。突然、強い力で肩をつかまれ、ぐいっと後ろに引かれた。すかさず要がその腕をつかんで振り払い、私をかばうように前に立ってくれた。
「こいつは誰だ!」正人が険しい顔つきで、私を睨みつける。私の腕の中のバラの花束に気づくと、まるで棘が刺さったかのように、正人の瞳が痛みに歪んだ。
私は思わず花束を強く抱きしめる。「正人、やめて。ここで騒ぎを起こさないで。私たち、もう別れたんだから」
しかし、正人はくだらない冗談を聞いたかのように鼻で笑った。「別れた?俺から離れられるとでも思ってるのか?拗ねるのも大概にしろよ。別れるなんて、そんな軽々しく口にするな。今すぐその花を捨てろ!」
あまりにばかげた言い分に、私は返す言葉も見つからなかった。
「私、来月結婚するんだよ。正人、一体何をおかしなこと言ってるの?」
「知ってるよ、俺とだろ」そう言うと、正人は表情を緩めた。「もう考えたんだ。お前が結婚式をめちゃくちゃにされるのが嫌なら、父さんを式に呼ばなければいい。それなら文句ないだろ?」
要が眉をひそめる。「何か勘違いをしているようだけど?新郎は俺だ」
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