彼氏が婚約式を葬式に…今更、後悔しても遅い第1話
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婚約披露パーティーの席だというのに、ある後輩から供花が贈られてきた。私が受け取らなかったことを理由に、高田正人(たかだ まさと)は会場を丸ごと葬儀場のような設えに変えてしまった。
喪服に着替えた正人は、小川柚(おがわ ゆず)に線香が詰まった籠を手渡しながら、私に聞こえるよう悪意たっぷりに言う。「柚の言う通りだ。結婚は愛の墓場……まさに、今のこの状況はぴったりだよな」
そして、正人が柚に線香を渡そうとしたその瞬間、手元が狂ったのか、籠が床に落ちてしまった。床に散らばった線香とともに、私たちの10年にわたる恋も、まるで葬られてしまったかのようだった。
それなのに、結婚式の新郎が自分ではないと知った途端、立ち去る私に正人は泣きながら縋り付いてきた。
しかし、私は笑いながら言い返す。「今更泣きついてくるなんて、遅すぎると思わない?」
* * *
婚約披露パーティーの席だというのに、ある後輩から供花が贈られてきた。私は当然それを断ったのだが、私が受け取らなかったことを理由に、高田正人(たかだ まさと)は会場を丸ごと葬儀場のような設えに変えてしまった。
喪服に着替えた正人は、小川柚(おがわ ゆず)に線香が詰まった籠を手渡しながら、私に聞こえるよう悪意たっぷりに言う。「柚の言う通りだ。結婚は愛の墓場……まさに、今のこの状況はぴったりだよな」
そして、正人が柚に線香を渡そうとしたその瞬間、手元が狂ったのか、籠が床に落ちてしまった。床に散らばった線香とともに、私たちの10年にわたる恋も、まるで葬られてしまったかのようだった。
それなのに、結婚式の新郎が自分ではないと知った途端、立ち去る私に正人は泣きながら縋り付いてきた。
しかし、私は笑いながら言い返す。「今更泣きついてくるなんて、遅すぎると思わない?」
……
バシンッ。怒りで顔を真っ赤にした正人の父親、高田剛(たかだ つよし)が、生まれて初めて正人を殴った。「何考えてるんだ!今すぐこいつらを叩き出して、恵美(えみ)に謝れ!」
正人は顔を背けた。殴られた頬は赤く腫れあがっているが、なぜだか口元には笑みが浮かべ、すごく機嫌が良さそうだった。
「謝る?なんで?これは俺と恵美の婚約披露パーティーだ。それに、当の恵美だって何も言ってないんだから、余計な口出しはしないでくれよな」正人はぐいっと私の肩を引き寄せ、耳元で熱い息を吹きかける。「なあ、恵美?」
しかし、私は生まれて初めて正人を無視して、ただ静かに、彼の足元に散らばっているバラの花びらを見つめた。
この時期にバラを手配するのはかなり大変だったから、一生懸命探したのにな……
「自分が何をしてるか、分かってる?」私は静かに尋ねた。
正人の笑顔が凍りつき、自信に溢れていた目からは光が消え、私の肩を掴んでいた手からも力が抜けていく。私が正人の味方をしないことが、信じられないようだ。
「分かってるよ。けど、たかが婚約披露パーティーだろ?それに言われた通り、ちゃんとおとなしく来てやったのに」正人の顔からは表情が消えた。彼は近くにあったトレイから無造作に指輪を一つ取る。「輪っかをはめるだけなのに、何をそんなにピリピリしてるんだ?」
そして、正人は手を伸ばし、柚の左手を取って指輪をはめた。
「どうかな?」
柚は嬉しさの中にも、少し恥じらいを見せ正人の腕に抱きついた。「うん、すっごく!でも、恵美さんが……」
「恵美のことなんか気にするな。誰がつけたって同じなんだから」そう言う正人は、私を今にも殺しそうな目つきで睨んでいた。正人は昔から父親の剛を憎んでいて、少しのことでもよく突っかかっている。だから、さっき私が正人の味方をせず剛の味方をした、仕返しのつもりなのだろう。
私は笑みを浮かべ、代々受け継がれてきた結婚相手に渡すネックレスをそっと箱に戻す。
「そうだよね。誰につけても同じこと」
正人の言葉をそのまま返したからか、正人は表情をさらに厳しいものにし、私の耳元に口を寄せた。
「お前、今日はなんでも俺に逆らう気なのか?何か文句があるなら、家に帰ってから言えよな!」
正人が怒りで唇を震わせているのを見て、私の心にも憎しみが芽生えた。
正人と父親の折り合いが悪いのは、今に始まったことではない。これまでに長い時間があり、他にもいくらでも機会があったはずなのに……よりにもよって、私との婚約披露パーティーの日に、しかもこんなやり方で親に反抗するなんて。
私が口を開くより先に、正人の継母の高田智子(たかだ ともこ)が慌てて仲裁に入ってきた。
「恵美、正人はそんなつもりじゃ……あなたたち、もう何年も一緒にいるんだから、正人のこと分かってくれてるでしょ?だから、許してあげてくれないかしら?私たちはずっと、あなただけがうちのお嫁さんだと思ってるから。あ、それに、この指輪は汚れちゃったから、新しいのを買いに行かなきゃね」
正人はふっと鼻で笑い、心底馬鹿にしたように言う。「馬鹿馬鹿しい。ちょっと触っただけで汚れただって?じゃあ、俺に上から下までべたべた触られてる恵美はもっと汚いはずだけど?」
私は身体が固まった。後ろにいる両親の方を振り向けない。
これが雪の中で一晩中頭を下げ続けて、やっとのことで許してもらった婚約だと思うとなんだか情けなくなった。
すると、隣で柚が声を上げて笑い始めた。
「恵美さんって純情なのかと思ってたけど、結局はベッドで媚びるだけの女だったのね。ねぇ先輩、恵美さんがベッドでどんな風に乱れるか教えてよ」
「黙れ!」剛が怒鳴り、酒のボトルを掴んで投げつけようとするのを、私は慌てて止める。
しかし、正人は得意満面の笑みで、柚の言葉に乗っかった。
「お前は知らないだろうけど、ベットでの恵美は最高なん……」なんの躊躇いもなく話を続けた正人だったが、急に言葉を途中で止め、私の顔を見つめたまま、一言も話さなくなった。
そして、媚びるように続きを促している柚を荒々しく突き飛ばし、消え入りそうな声で私の名前を呼ぶ。
「恵美……」
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