彼らに見捨てられた私は、無人島に向かった第2話
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でも、私には選択肢がなかった。
着替えるのを拒んだら、母に髪をつかまれて服を引き剥がされ、そのまま試着室に放り込まれた。
「帰ってきてからの服は、全部美夜が譲ってあげたんでしょ?あなた、すごく嬉しそうだったじゃない。
なのに、どうしてこの一着だけは着たくないの?」
美夜がおずおずと涙声で口を添えた。「お姉ちゃん、まだ私のこと怒ってるの……?」
何度も急かされて、私は吐き気をこらえながら、そのドレスに袖を通した。
結婚式の会場に立った瞬間、参列者たちのひそひそ話が四方から押し寄せてきた。
「ドレス、あれで本気?なんか……安っぽすぎない?さすが田舎から拾われてきた子ね。センス終わってる」
「ていうか、あのメイク……まさかの海外セレブ風?式に合ってなさすぎて引くんだけど」
両親は順番に登壇し、来賓に向けて祝辞と乾杯の挨拶を始めた。私は差し出されるグラスを次々と空けていく。安物の化粧品に覆われた肌は、時間と共に腫れて熱を帯びていった。
やがて綾瀬美夜がグラスを持って前に出てきたとき、私は声を潜めて問いかけた。「……あんた、何か仕込んだでしょ?」
すると彼女は突然大げさに胸を押さえ、ぶんぶんと首を振った。「お姉ちゃん、私、もうちゃんと祝福したよ……なのに、まだ責めるの?」
そう言って浅く息を何度か繰り返したかと思うと、そのままその場で倒れ込んだ。
隣にいた奏真が私を突き飛ばし、美夜を抱きかかえる。
「誰か!美夜を病院に連れてって!」
母は冷たい目で私を射抜くように睨みつけた。「こんな大勢の前で、まだ美夜を刺激するなんて……あの子、心臓が悪いってわかってるでしょ? 本気で殺す気なの?」
顔のアレルギー反応で口もろくにきかず、私は息を荒げながら、体を折り曲げるようにして小さく懇願した。「……私のことも、助けて……」
けれど、誰も耳を貸してくれなかった。
家族は私を式場に置き去りにし、慌てて美夜を病院へ連れていった。
私は客たちの好奇心と嘲笑が入り混じった視線に耐えながら、残された気力で舞台を降り、自ら救急車を呼んだ。
病院で目を覚ましたとき、スマホには一件の安否確認すら届いていなかった。
当然だ。美夜のことで手一杯なあの人たちが、私が置き去りにされたことなんて気にかけるはずがない。
ポケットのスマホが小さく震えた。美夜からのメッセージだった。
【お姉ちゃん、本気で結婚できると思った?あの人たちが愛してるのは私よ。あなたに何があるの? 何で私と張り合うの?】
私はスマホを力なく置き、そっと目を閉じた。
……いいの。私にはこれから、本当に私を大切にしてくれる家族ができるから。もう誰かの指の隙間からこぼれ落ちる、そんなわずかな愛情なんて、乞うように求めたりしない。
ひとりで病院から帰ると、リビングでは三人が団らんしていた。
母は美夜のために豪華な料理を用意していたようで、テーブルの上には食べ終えたあとの冷めた残り物しか残っていなかった。
昔と何も変わらない。私の分なんて、最初から用意されていない。
目立たないように、部屋へ戻って荷物をまとめようとしたときだった。
父は目を上げて私に「止まれ」と合図を送り、眉間に深く皺を寄せた。私がどうしてこんな遅くに帰ったのか、そんなことには一切関心を示さず、開口一番に怒鳴りつけた。
「今日の件、まだ済んでないぞ。結婚式はお前がめちゃくちゃにしたんだ!」
私は黙って父を見つめた。記憶の中では優しかった父が、今や別人のように険しい顔で私を睨みつけている。
「ドレスを台無しにしたのは、美夜でしょ」
そう静かに返すと、父の顔が一瞬で怒りに染まった。「証拠もないのに、よくそんな口が利けるな!」
美夜は目に涙をためて、わざとらしく二滴ほどこぼした。すかさず奏真が彼女を抱き寄せる。
父はその様子を見て、そして改めて私の方に視線を戻した。
「そもそも、お前なんかが黒江家の若様にふさわしいわけがない。あの婚約だって、向こうの祖母のゴリ押しで無理やり決められたんだ。見てみろ、式の準備を始めてからトラブルばかりじゃないか。これは運命が合っていない証拠だ」
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