宿敵の子を宿したら、元夫が壊れた第3話
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「瑛くん……」
その呼び方が、針のように私の耳に突き刺さった。結婚八年、私は一度も彼をそう呼ぶことを許されなかった。
瑛人はかつて冷淡に訂正した。「その名前は、誰でも呼べるわけじゃない」と。
そう、その名前を呼べる人間は、ずっと存在していたのだ。
ただ、私ではなかったというだけだ。
今、そのか細い呼びかけを聞いた瞬間、瑛人の全身から、骨を砕くような暴力性が、不思議と霧散した。
瑛人は慌てて秋穂のそばに駆け寄り、緊張した口調で尋ねた。
「どうした? びっくりしたのか? 腹でも痛むのか?」
秋穂は彼に寄りかかり、静かに首を横に振ったが、こっそり私を一瞥した。
それは、勝利者の憐憫に満ちた視線だった。
胃の奥から、吐き気が込み上げてきた。
怒りではない。八年遅れてやってきた、完全な覚醒だ。
瑛人の心の中に、早逝した初恋がいることは知っていた。
私はかつて、それは少年時代の後悔の影に過ぎず、彼が私に見せた病的なまでの所有欲と支配欲は歪んだ愛の証明だと、愚かにも信じていた。
違った。
所有欲は所有欲として、愛は愛として存在する。
彼もまた、ある一人の女性のためなら、彼女がほんの少し眉をひそめるだけで、すべての凶暴さを捨てて、慎重に、そして目には彼女しか映らなくなる。
私は手を上げ、流れかけた血を拭った。
陸生が肩を抑え、私の隣に立った。悪態をつきながら、複雑な眼差しで私を見た。「お前……」
私は首を振り、彼を遮った。
瑛人が秋穂を連れて慌てて去るのを見届けた後、私はスマホを開き、弁護士に連絡して離婚の準備を始めた。
だが、瑛人が帰宅したのは、それから一ヶ月後のことだった。
私はサイン済みの離婚届をテーブルに叩きつけた。
瑛人はそれを一瞥しただけで、受け取りを拒否した。
「やめろ、梓。くだらないことで騒ぐな。
いい知らせがある。秋穂が妊娠した。
子供が生まれたら、お前に母親の役割を演じさせてやる」
私の全身の血が凍りつき、頭の中でキーンと鳴り響いた。
「……私に、育てる、と?」
彼は私を見た。
「俺は昔、夏見に誓ったんだ。将来、二人で子供を持つって。
秋穂は夏見によく似ている。彼女の子供が、一番ふさわしい」
荒唐無稽な話だ。
私は掠れた声で問い詰めた。
「瑛人、もし私にも子供ができたら?」
彼は即答した。迷いも、一瞬の躊躇もなかった。
「お前に子供はできない」
私は呆然とし、声が震えた。
「今、何と言ったの?」
彼は数秒沈黙し、窓の外に視線を逸らした。
「この八年間、毎晩終わった後に飲ませていた体調を整える滋養スープには、ずっと避妊成分が入っていた。だが心配するな、医者に聞いたら、長期服用でも体に大きな影響はないそうだ」
大きな影響はない?
私は目の前が真っ暗になり、よろめいた。
八年間、二千日以上の夜、私は期待に胸を膨らませ、そして何度も失望し、自分が欠陥品なのではないかと疑い始めた。
検査結果はいつも異常なしと出た。
彼が「子供は気にしない」と慰めるたびに、私は罪悪感からさらに尽くすしかなかった!
「私がどれほど自分の子供を望んでいたか、知っているの?」
私の幼少期は、両親の絶え間ない喧嘩とドアを叩きつける音の中で過ごした。
後に両親が離婚した時、誰も私を必要としなかった。
だから、私はいつも願っていた。
私の血を引く小さな命が、無条件に私を必要としてくれる…それだけでいい、私の人生には意味ができる。
瑛人の眼差しには、微塵の罪悪感もなかった。
「梓、誰の血筋かは重要ではない。重要なのは、その子がママと呼び、俺たちの名義で育つことだ。それでいいじゃないか」
彼はいつものように、私の額の髪を払いのけようとし、珍しく優しい口調になった。
「秋穂が子供を産んだら、お前は母親になれる。それでいいじゃないか?」
吐き気がした。
抑えきれない吐き気。私は口元を覆い、腰をかがめて、制御不能な嘔吐を始めた。
瑛人の動きが止まった。
彼は涙で濡れた私の顔を見て、二秒間静止した。
「お前……妊娠しているのか?」
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