和紙文家から追い出された養女の華麗なる帰還 · 第3話設定≡

家から追い出された養女の華麗なる帰還第3話

この話は約1798字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

「楓がもし変なことを考えないというなら、別に帰ってきても構わないけどな」

たったそれだけの、短い言葉。

三年前の私が見たら、息ができないほど胸が痛んだかもしれない。でも、今の私は……

私は二通目のメッセージに目をやった。

【楓へ。松浦家が嫁のために用意したブレスレット、あなたが持ってるでしょう?時間がある時に返しに来なさい。自分のものでもないのに欲張らないで。持ち主に返しなさい】

これは大輔の口調じゃない。

この二つのメッセージを送ってきたのが誰かなんて、私はすぐに悟った。

私が帰国したことは、結局、松浦家の両親にも知られてしまった。

ちょうど大輔の母親である松浦美智子(まつうら みちこ)の誕生日パーティーの日で、美智子から電話があり、家に戻るように言われた。

私は少し黙り込んだあと、頷いて了承した。

私が着いた頃には、松浦家にはもう大勢の客が招かれていた。

三年前、松浦家の養女が、身の程知らずにも松浦家の唯一の跡取り息子に恋をしたという噂は、京市では知らない者はいなかった。

私がパーティー会場の入り口に姿を見せると、周りの視線が一斉に私に集まった。

驚き、好奇心、そして軽蔑……

澪が美智子の周りで甲斐甲斐しく世話を焼いていたけど、美智子はどこかそっけない態度だった。

でも、私が現れた途端、彼女はくるりと向き直って澪の腕を取り、嬉しそうに微笑んだ。

そして、さも驚いたという顔で私の方を見た。

「あら楓、帰ってたのね。こっちにいらっしゃい!紹介するわね、この子が大輔の彼女よ」

美智子は「大輔の彼女」という部分を、ことさらに強調した。私はただ、静かに微笑んだ。

私は持ってきた二つのプレゼントの箱を取り出した。

一つは大輔にもらった松浦家のブレスレット。もう一つは、美智子への誕生日プレゼントだ。

プレゼントを手渡しながら、私は少しだけ躊躇って、でもやっぱりこう呼びかけた。

「お母さん、お誕生日おめでとう」

美智子は私の手を取って、当たり障りのない挨拶を交わした。

ブレスレットは受け取ってくれたけど、誕生日プレゼントの方は、無造作に傍らのテーブルに置かれただけだった。

今日は大勢の来客があったから、美智子も私にばかり構ってはいられないようだった。

私はそっとその場を離れ、松浦家の裏庭に出た。

三年ぶりに来たけど、ここはすっかり変わってしまった。

物思いに耽っていると、ふと誰かの視線を感じた。

顔を上げると、少し離れた場所に、深く、吸い込まれそうな黒い瞳があった。

まさか、啓太だった。

この人、今日は出張だって言ってなかったっけ……

黒いスーツに身を包んだ彼は、人だかりの中心にいた。

大輔も啓太のそばにいて、昨日彼が抱きしめていた女は誰なんだと、しきりに問い詰めている。

啓太は何も答えず、ただ黙って指にはめた指輪を撫でていた。

それは、昨日私が彼にプレゼントしたペアリングだった。

彼の手にあるのは、私に無理やりはめさせた指輪。

そして、私の指にあるのは、彼が……

昨日のことが頭をよぎり、彼に見つめられているのが気になり、急に恥ずかしくなってきた。

向きを変えて、以前使っていた自分の部屋がまだあるか見に行こうとした時、目の前に誰かが立ちふさがった。

目の前にいたのは、澪だった。

彼女は声を潜め、険しい顔で私を睨みつけた。

「私が送ったメッセージ、見てないの?

大輔がいるところにどこまでも追いかけてくるなんて、ほんと図々しいわね」

私は言葉を失った。

「たまたま、通りかかっただけだけど」

でも澪は、突然私の手を掴んで大声を張り上げた。

「楓、あなたが大輔さんのことを好きなのは知ってるわ。でも、私たちは今とっても愛し合ってるの。お願いだから、私たちの邪魔をしないで!」

彼女の声に、周りの人たちの視線が一斉に私たちの方へ集まった。

軽蔑、侮り、嘲笑……あらゆる視線が一瞬で私に突き刺さる。三年前と、全く同じ光景だった。

ぎゅっと掴まれた腕が痛くて、私は思わず眉をひそめた。

「放して」

「楓、お願いだから。私と大輔は、やっとの思いで一緒になれたの。もう彼のことは諦めてくれない?」

彼女は懇願するような口調で言いながら、さらに強く私の手首を握りしめた。

爪が、私の腕に深く食い込む。

あまりの痛さに、私は思わず彼女の手を振り払おうとした。

大して力なんて入れてないのに、彼女は甲高い悲鳴をあげて、その場に倒れ込んだ。

何が起きたか理解するより早く、頬に鋭い痛みが走った。

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