子を失って、愛も手放した第1話
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七年付き合って、再び自分が妊娠していると気づいた時――彼氏はビップ病室で「本命」の女と一緒にいた。
ドア越しの窓から見えたのは、藤原明人(ふじはら あきと)がその女と裸で向き合い、互いしか見えていない姿。
その瞬間、スマホにメッセージが届いた。
小林佳菜(こばやし かな)の得意げな言葉は、画面から溢れんばかりだった。
「七年も経って、まだ分からないの?あんたなんて、明人さんにとって、ただの『無限の血液バッグ』でしかないのよ!」
心は奈落に突き落とされ、私は海外へ行き、先生の研究チームに参加することを決めた。
けれど――私が去ったあとで、夫である彼はこう言ったのだ。
「お前のこと、好きになった」と。
* * *
七年付き合って、再び自分が妊娠していると気づいた時――彼氏はビップ病室で「本命」の女と一緒にいた。
ドア越しの窓から見えたのは、藤原明人(ふじはら あきと)がその女と裸で向き合い、互いしか見えていない姿。
その瞬間、スマホにメッセージが届いた。
小林佳菜(こばやし かな)の得意げな言葉は、画面から溢れんばかりだった。
「七年も経って、まだ分からないの?あんたなんて、明人さんにとって、ただの『無限の血液バッグ』でしかないのよ!」
心は奈落に突き落とされ、私は海外へ行き、先生の研究チームに参加することを決めた。
……
夕方、明人は冷たい空気を帯びて家に入ってきた。
病院で見せるような穏やかな表情は影を潜め、再び陰鬱な顔になり、不快そうな眼差しを向けている。
「お前を一日中病院で待ってたんだぞ!」
これまでは毎月中旬になると、私は素直に病院へ行って献血をした。彼の治療の邪魔をしてはいけないと怖がっていたからだ。
この七年間、一度の欠席もなかった。
それがたった一日分欠けただけで、こんなにも不機嫌になるなんて。
乾いた唇を舐め、私は目の前の男に理屈を言おうとした。
「明人、今日診療所で検査したら、私、妊娠してたの。先生が言うには、赤ちゃんのためにもあんまり献血は良くないって。
これからは献血しなくていい?」
彼は少し黙り、椅子に腰掛けて水のコップを手に取り、眉をひそめ考え込んだ。
私がいつも用意していた適温のハチミツ水は、そこにはない。やがて彼は口を開いた。
「また妊娠か……そうか、妊娠中に献血するのは体に良くない。じゃあ、しばらくはちゃんと休めよ」
頭上にかかっていた暗雲は一瞬で晴れ、私は思った――七年寄り添ってきた分、彼の心にはまだ私がいるのだと。
だが次の瞬間、彼の声はあっさりとして、私の最後の期待を打ち砕いた。
「二、三日でその子を堕ろしてきてくれ。そしたら献血のことはまた話そう。
わかってるだろ。うちには治療費も、子どもを育てるお金もないんだ」
彼は長年の配達員の仕事で荒れた私の手を引き、重々しく諭すように言った。その腕に目を移すと、高級そうな腕時計がさりげなく光っている。
それは街角の広告で見たことがある代物で、私が一生宅配を続けても稼げないだろう価格だった。
その時、私の内側は冷たい静寂に満ち、頭は真っ白になった。
「俺の病気は血がないと持たない。ちょっとでもミスしたら命に関わる。そうなれば子どもに父親がいなくなって、あいつが悲しむだろ?」
甘く、取り繕うような口調――だが私は、以前味わった幸福感を感じられなかった。
数えると、これで五度目の妊娠だった。
一度目は、彼の治療に差し支えないようにと、自ら中絶を申し出た。
その後の三度は、彼に心配をかけまいとこっそり中絶した。
そのとき彼は私を抱きしめ、涙を流して感謝してくれた。
「恵美子、本当に優しいな。金が貯まったら、必ずお前を迎えに行く!」
当時の私は、彼がいつか幸せにしてくれると固く信じていた。
でも今――真実が目の前に突きつけられ、胸は刃物でえぐられるように痛かった。
今日、医者に言われたことを思い出す。私の体はもうひどく傷んでおり、これから妊娠しにくくなるだろう、と。
そして病室で見た彼の姿。金回りの良さそうな振る舞い、上品な身なり。
子ども一人なんて、彼が本当に養えないはずがあるでしょうか?
私は両手でお腹を包み、小さな命を守りたいと強く思った。
深く息を吸い込み、湧き上がる不満と悔しさ、切なさ、悲しみを飲み込む。
「明人、この子を産みたいの」
私が初めて強く否定したのを受けてか、彼は眉を寄せたまま黙り込んだ。
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