君に捧げた一生、背負うは千行の涙第1話
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川村紗奈(かわむら さな)は、福井隼翔(ふくい はやと)にとって留学中四年間ずっと心の支えだった。
四年もの歳月が過ぎ、彼の愛はもうすっかり消え去ってしまっただろうと、彼女は思っていた。
しかし、彼が帰国するやいなや、大々的にプロポーズしてきたのだ。
誰もが紗奈のことを、隼翔が最も愛する女性だと口にした。
紗奈は感動し、ついに勇気を出して隼翔を受け入れた。
しかし、彼女は見てしまった。隼翔が、自分に隠れて、腹違いの妹である川村真奈(かわむら まな)と結婚しているところを。
紗奈は狂ったように理由を問い詰めた。
だが、隼翔は何事もないように答える。
「四年前、お前が何も言わずに消えた時、ずっとそばにいたのは真奈だったんだ。彼女はいま余命わずかで、結婚だけが唯一の願いなんだ。だから俺は、それを叶えてやるしかなかった」
その言葉に、紗奈はただ静かに微笑んだ。
彼が知らないのは、四年前、紗奈が彼のもとを去った理由も、彼女が不治の病を患っていたからだということ。
その後、紗奈の病気が再発し、隼翔に関するすべての記憶を失った。
しかし、隼翔はまるで狂ったように、何度も何度も彼女の部屋のドアを叩き続けた。
* * *
福井隼翔(ふくい はやと)が盛装して、腹違いの妹川村真奈(かわむら まな)との結婚式に現れたのを見て、川村紗奈(かわむら さな)は呆然とした。
ほんの30分前、真奈から隼翔との結婚披露宴に招待されたばかりだったのだ。
紗奈は胸が締め付けられる思いで、真奈から送られてきた住所へ車を走らせた。
案内されて控え室に入ると、隼翔が真奈のウェディングドレスの裾を、とても大切そうに整えているところだった。
結婚式を控えた二人の姿。そして部屋いっぱいに飾られた、自分の婚約者と妹が写るウェディングフォト。
その光景に耐えきれず、紗奈は涙を滲ませて声を上げた。
「隼翔、今週は実家に帰るって言ってたのに、ここで何してるの!」
紗奈の声に、隼翔はぴたりと動きを止め、笑みを浮かべていた唇から血の気が引いた。
「紗奈、どうしてここへ?」
彼は、無意識に真奈をかばうように前に立ち、紗奈を見る目は警戒心に満ちていた。
その目に傷つけられた紗奈は、悔しそうに口を開いた。
「私の婚約者が他の女と結婚するのに、私は何も知らされない……なのに、どうしてここにいるのかってあなたに聞かれなきゃいけないの!」
感情が高ぶって、紗奈はよろめきそうになった。
隼翔は真奈をさらにしっかりと背後に隠した。
彼が紗奈に向ける視線は冷たく、そして淡々としていて、紗奈がまるで理不尽にわめくヒステリックな女に見えた。
ドアの外から司会者が急かす声が聞こえ、隼翔は真奈の手を掴むと、振り返って静かに言った。
「あの時、お前が何も告げずに姿を消した。その間、ずっと真奈がそばにいてくれた。今の彼女は不治の病を抱えていて、唯一の願いが俺と結婚することなんだ。だからその望みを叶えてやるのは当然だろ。
ここは引いてくれ。披露宴が終わったら、すぐに戻る」
その言葉を聞き、紗奈は二人が繋いだ手を見つめながら、苦笑を浮かべるしかなかった。
視線を隼翔の背後へ移すと、得意げに微笑む真奈の姿があった。
四年前、彼女に諭されて隼翔の元を去った時の言葉が、耳元に蘇る。
紗奈は母から先天性の心臓病を受け継いでいて、治る確率は限りなく低い。
それでも隼翔のそばにいたいと願い続けた。
けれど、その頃の隼翔は会社のトラブル続きで忙殺されていた。
そこへ真奈が現れ、取引を持ちかけた。
「もしあんたが彼のもとを去るなら、お母さんに頼んで隼翔を助けてあげる。よく考えなさい。
どうせ今ここに残ったって、彼に余計な負担をかけるだけでしょ」
そう言われ、苦渋の末に身を引いた自分。
だが今、真奈はその隙を突いて隼翔を奪い取り、自分は隼翔にとって裏切り者にされてしまった。
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