十億当てた私にたかる家族を華麗に叩き潰してみた!第1話
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宝くじで十億円が当選した瞬間、私はその場で辞表を叩きつけ、実家へと帰る決意をした。
家族みんなに豪邸と高級車を贈る計画を胸に、高揚感いっぱいで家路を急ぐ。
しかし、玄関を開けるなり、冷たい現実が容赦なく私を叩きのめした。
「あんた、毎月の給料を全部渡してたから犬の世話をしてやったけどさ。今じゃ無職なんだろ?この犬、まだここに置いておくつもりか?それならいっそ、私の体の栄養にでもなってもらうわ」
弟の嫁の美羽(きりたに みう)が膨らんだお腹を撫でながら毒づいた。
「もうすぐこの家は五人家族になるんだから、あんたが居場所を取れるわけないだろ?分かってるよな、さっさと出ていけ!」
それに弟の智樹(ともき)も追い打ちをかけるように賛同する。
「そうだ、まずはこれまで親父とお袋が使った金を全部返せ。それから、その犬が食べたエサ代と水代も一円単位で払えよ。払えないなら、俺が訴えてやるからな!」
当選した喜びは喉の奥に押し込め、私はただ目を伏せた。
この家を建てる金を出したのも家具を買ったのも私だ。それなのに、愛犬を殺しておいて、今度は私に家から出ていけとは……
怒りで震える体を抑え、私は呟いた。
「犬小屋で寝ればいいじゃない」
* * *
仕事帰りに何気なく買った宝くじが当たり、額を見た瞬間に頭がクラクラした。
十億円。
一瞬で人生が変わる金額だ。
すぐに会社を辞める決意を固め、上司の机に辞表を叩きつける。あの女好きの上司の顔を見ることももうない。
その足で新幹線に飛び乗り、故郷への切符を握りしめた。
車内では興奮が冷めやらず、家族それぞれにどんなプレゼントを贈ろうかと想像が膨らむ。
母さんには広大な庭付きの豪邸、義妹の美羽には五部屋ある川沿いの大きなマンション。
父さんには愛用しているSUVの最新モデル、弟の智樹には夢にまで見たスポーツカーを……
一つひとつ計画を立てながら、ふと電話をかけた。迎えに来てもらおうと思ったのだ。
「もしもし、父さん?私、帰ってきたよ」
「ああ?どうして帰ってきた?」
「仕事を辞めたんだ。実はその理由は……」
だが、その言葉を最後まで聞いてもらうことはなかった。電話は途中でブツリと切れ、ビジー音が鳴るだけになった。
胸に抱いていた喜びは半分以上消え失せ、不安を抱えたまま家の扉を開ける。
だが、その先に待っていたのは温かい家族の迎えなどではなく……
熱い液体が頭から降りかかり、立ち尽くす私の足元にいつも駆け寄ってきてくれる愛犬のマロンの姿はなかった。
「マロンはどこ?」
凍えるような冷たさが全身を走り、私は掠れた声でそう問いかけた。
美羽が血に染まった桶を放り投げ、嘲るように私を見つめる。
「当然殺したわよ。今まであんたの稼ぎも大して残らなかったのに、あんな犬のエサ代なんて無駄だったのよ」
「それに、今はお前、無職なんだろ?そんな貧乏人の犬なんて誰が面倒見るかっての。それより肉にして栄養にした方がマシじゃない?」
愕然としたまま、台所へと駆け込む。そこにあったのは、小鍋に浮かぶ血まみれの肉片だった。
マロンは、私が両親に中学を辞めさせられ、働かされるようになった頃から、ずっと一緒だった。
辛い時、悲しい時、彼は私の手を優しく舐めてくれた。
しかし、そのマロンはもういない。
無念だったのだろうか。台所には抵抗した痕跡すらなかった。
マロンが最期に思ったことは何だったのだろう。
なぜこんな仕打ちを受けたのか、きっと彼には分からなかったに違いない。
怒りと悲しみが胸に押し寄せる。
「私、毎月家に四十万円も送金してたのよ。なのに、マロンには残飯しか食べさせていなかったって近所の人から聞いたわ。それなのにお金はどこに消えたの?」
マロンにはもっと美味しいご飯を食べさせて、これまで一緒に耐えてくれた苦労を少しでも報いたかった。
でも、もう遅すぎる。
「あんたさ、たかが犬のために私たちを監視してたんだね!」
美羽が目を吊り上げて非難し、あからさまに白目を向けてきた。
「だいたい四十万円なんて家族全員に全然足りないんだけど?うちの弟はまだ小学生だし、両親だって働いてない。そんな中で犬なんか飼ってられるわけないでしょ?」
さらに膨らんだお腹を軽く撫でながら、彼女は不敵な笑みを浮かべて続ける。
「それにね、この家ももうすぐ五人家族よ。あんたの居場所なんて最初からないの。住みたいなら毎月八十万円出しなさいよ、倍額ね!
それができないなら、この家からさっさと出ていきなさいよ。居座ってタダ飯食おうなんて虫が良すぎるってもんよ!」
まるでこの瞬間を待っていたかのように、美羽の言葉が家中に響く。
マロンの死は、ただの警告だったんだ。
私がこの家に居座り続ければ、次は私自身が同じ目に遭う――そんなメッセージ。
私は深く息を吐き、怒りを押し殺すように低い声で言い返した。
「美羽、この家のことを仕切るのはあんたじゃない」
電話を取り出し、父さんと母さんに無理やり電話をかけ、いつものように通っている麻雀仲間の家から呼び戻す。
中学を途中で辞めさせられたあの日から、私は家族のために毎月お金を送り続けてきた。
自分のためには月に数百円のカップ麺とパンしか買わない生活でも、家族に仕送りするのが当然だと思ってた。
家に帰るたび、母さんが私のために好物の料理を作ってくれる。
それが唯一の救いだったから、少しでも感謝してもらえるはずだと思ってた。
でも、その思いも完全に間違ってたんだ――この家族に期待してた私がバカだったんだよ。
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