初恋の呪い、裂かれた妻の魂第1話
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私はかつて刑事課で一番優秀な潜入捜査官だった。
しかし、潜入生活の最後の摘発作戦で、夫である宮崎剛志の「初恋」に命を奪われた。
それ以来、私は「裏切り者」と呼ばれるようになった。
* * *
解剖台の上にある死体の断片は、まるで巨大なクラゲのように膨れ上がっていた。薄黄色の粘液が絶え間なく滲み出し、ぽたぽたと垂れている。
臭いんだろうなあ。
もう死んでしまった私は、匂いを感じることはできないけれど。
「宮崎隊長が来たよ」
扉の音に気づいた検視官の海斗が、作業の手を止めて顔を上げた。
剛志は眉をひそめ、鼻を指でつまみながら言った。
「状況はどうだ?」
「遺体は完全に巨人観を呈しており、表面にもタトゥーのような目立った特徴はないです。女性だということは辛うじてわかりますけどね」
「随分と残酷だな。遺体を切り刻む前に、多くの骨がすでに粉々に砕かれていたようだ」
海斗はため息をつきながら続けた。
「でも、金庫に付いていた海底の苔から、死亡推定時期は約5年前だと判断できました」
剛志の手が一瞬止まった。しかしすぐに冷静さを取り戻し、手袋をしっかりはめ直すと、海斗と共に解剖の作業を続けた。
――もう、死んで5年も経っていたのか?
私は空中に浮かびながら、自嘲気味に口元を歪めた。
何かの理由で、私は死体を海に捨てられた後も、深海のその場所に長く彷徨っていた。
人気のないその場所では、鳥さえも滅多に姿を見せない。
嵐や雷がどれほど荒れ狂おうと、私は消えることができなかった。
そんなある日、禁漁期にこっそり深海に入って、一儲けしようとした船がやってきた。
彼らが引き上げたのは――私の死体だった。
しかし、刑事課の隊長である剛志が、今回の解剖に自ら立ち会うとは思ってもみなかった。
彼は重度の潔癖症なのに。
「うっ......!」
巨人観の死体の悪臭は、通常の死体よりもはるかに強烈だ。百戦錬磨の海斗ですら、最初の一刀を入れた瞬間、ゴミ箱にしがみついて激しく嘔吐した。
剛志も数歩後退した。
しばらくして、彼はもう一度確かめるように聞いた。
「今日は香織がいないんだな?」
「香織さんは結婚ドレスの試着で休んでますよ」
海斗は顔を拭いながら力なく答えた。
「分かってます、宮崎隊長。この件は香織さんには黙っておきますよ。お二人はもう妊活を始めてますから、こんな臭いものは、身体に良くないですし」
「そうだな」
剛志は小さくうなずき、冷たいはずのその目に、わずかな優しさが浮かんだ。
その瞬間、私は雷に打たれたように感じた。
最愛の夫が、私を殺した犯人と結婚しようとしている?
それだけじゃない、妊娠まで計画しているのか?
「剛志!どうしてそんなことができるの!」
私は抑えきれず、絶叫した。
「山下香織が私を殺したんだよ!」
だが、私の声は誰にも届かない。解剖は続けられていた。
「臓器も体表も腫れすぎていて、DNAの採取は無理ですね」
「長骨や歯なら可能性はあるが、骨は粉々に砕かれていて、頭蓋骨も見当たりません」
「犯人は遺体を完全に闇に葬ろうとしているんですよ!」
海斗は怒りをあらわにし、拳で解剖台を強く叩いた。
「さらに酷いことに、被害者の子宮内にはまだ形成途中の胎児がいたんです!」
「三ヶ月にも満たない胎児が!」
私は空中で呆然としながら、解剖台を見つめていた。
すっかり膨れ上がり、醜く変わり果てた私の子宮が切り開かれ、その中には同じく腫れた胎児が静かに横たわっていた。細い臍の緒で私と繋がり、一つだった。
あの時......私、妊娠してたの?
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