兄が生き返った第3話
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しかし彼が踏みにじっているのは、兄が生涯手にすることを望みながら結局得られなかったものだ。
雑巾を握る手が、わずかに強張った。
私は黙って頭を下げ、必死に堪えた。
「これが小林家長男を死なせた厄病神じゃないか?」
颯の後ろにいた御曹司が、嘲るように私を見た。
「小林家はまだこいつを養ってるのか?」
それは私を養うしかないのだ。
何しろ、私を追い出したら、彼らは誰を痛めつければいい?
どうやって私に兄の罪を償わせる?
「聞いてんのか?俺が話してるんだろ!」
突然、颯が私の手の甲を踏みつけ、高価なスニーカーのかかとで指の関節をぐりぐりと押し潰した。
私は、指の骨が砕ける音さえ聞こえるような気がした。
「あなたはお兄ちゃんじゃない。お兄ちゃんが亡くなるまで欲しがっても手に入れられなかった靴を、あなたが履く資格なんてないの。
あなたの体には、私と同じ血なんて流れてないの。お兄ちゃんのものを奪う権利なんてどこにもないよ」
我慢の限界で噴き出した言葉は、彼の平手打ちで遮られた。
「今の俺は小林家の長男だ。将来、小林家の財産を継ぐのは俺だ。お前みたいな厄病神が、俺と張り合えると思うな」
私は使い古された雑巾のように、颯に地面へ放り捨てられた。
そのとき、父がこちらへ歩いてきて、いきなり私の頭を蹴りつけた。
「この家にいたくないなら、地下室へ行け。この恥さらしめ!」
頭を強く蹴られた衝撃で、私は地面に叩きつけられた。そして、体が痙攣し、意識が少しずつ遠のいていった。
お兄ちゃん、ごめんね。もうタピオカなんて飲まないから、置いていかないで……
私、もう本当に限界だよ……
……
どうやって地下室に運ばれたのか、私にもわからない。
目を覚ますと、ネズミが私の爪をかじっている。
撫でようとすると、ネズミが驚いたように逃げていってしまった。
ほらね、ネズミですら私を不吉だと思って近寄らない。友達になってくれないの。
ぼんやりしていると、私は地下室の外から声が聞こえてきた。
「それ、お父さんとお母さんが神社で俺のために特別にお願いしてくれたお守りなんだ。
両親の思いがこもった物なのに、急になくなった。まさか、俺が愛されてるのを妬んで……」
言い終わる前に、地下室のドアが勢いよく蹴り開けられた。
数人が中に踏み込んだが、湿気とカビの臭いにむせて後ずさった。
靴が床を踏みつけ、埃が舞い上がる。
彼らは文句を言いながら適当に探し回った。
そしてついに、ガラクタの山から一つのお守りを見つけた。
客たちのざわめきが一気に広がった。
「小林家の厄病神は本当に性根が腐ってるな。実の兄を死なせただけじゃない。
今度は義兄のお守りを盗んで殺そうとしてるんだって?これは小林家の後継ぎを絶やして、財産を独り占めするつもりか」
「亡くなった小林家の長男、彼女と一番仲が良かったらしいぞ。馬鹿だよな、一番可愛がってた妹に殺されたなんて」
その言葉は私を深く突き刺した。
怒りに目を見開いた私は、地面から起き上がろうとしながら、彼らの言葉に反論したかった。
――私は泥棒なんかじゃない。兄も愚かなんかじゃない。
彼は世界一の兄だ。
「咲月が欲しいならあげようよ。家族の愛を欲しがるのは普通だし」
俯いた颯の表情は、かつて私のために罪を背負った兄の姿と不気味に重なった。
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