傷だらけの再会第3話
この話は約1638字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
私は呆然と健人を長い間見つめていた。
彼が不安そうに私に謝り、近づこうとする。
「ごめんなさい、結衣さん、ごめんなさい」
私は彼を見つめ、目一杯溜まった涙をこぼすまいと堪えた。
「健人、嘘つき」
待ってろって言ったのは、あなたでしょ。
それなのに迎えにも来ないで、私の居場所を、あんなにあっさり他の女の子に譲って。
大嫌い。
私は健人の謝罪を拒絶し、彼の連絡先をブロックした。
D国へ向かう機内で、彼に関する写真はすべて削除した。
彼を思い出しそうな心の隙間をすべて埋めるように、私は勉強と社交に没頭した。
D国に来て二年目、論文を書いていたある深夜、突然ある感情が込み上げてきた。
私は普段使っていないSNSの裏アカウントで一言だけ呟いた。
「あの店の桜もなかが食べたい」
ただの一時の郷愁で、投稿したことさえ忘れていた。
しかし半月後、大学のコンサートが終わったばかりの校門で、一人の中年男性に会った。
彼は私を見るとほっとしたように、桜もなかが食べたかった高橋結衣かと尋ねた。
私は躊躇いながら頷いた。
彼は笑って紙袋を私に渡した。
「健人君に頼まれてね。私が帰国することを知ってわざわざ訪ねてきて、これを買った後、早くD国へ戻れって急かされたんだ。
若者の恋愛ってのは、人使いが荒いもんだね」
彼がいつ私の裏アカウントを知ったのかは分からない。
桜もなかが舌の上で溶けた瞬間、涙が不意にこぼれ落ちた。
心の隙間なんて、ちっとも埋まっていなかったのだ。
私は最短で帰国する航空券を予約し、慌てて学校に休暇を申請した。
空港まで送ってくれた千雪は、目を輝かせている私を見てひどく馬鹿にしたような態度をとった。
搭乗ゲートへ向かう時、彼女は私の不甲斐なさに本気で腹を立て、「その重度な恋愛脳、証拠として残しておくから!」と怒りながらカメラを向けてきた。
「結衣、ここに来た時はそんなこと言ってなかったわよ。絶対許さないって言ってたじゃない」
チケットを握る私の手は震えていた。顔が熱くなるのを感じたが、それでも反省の色は見せなかった。
もしかしたら私は本当に重度の恋愛脳なのかもしれない。健人が少し手招きするだけで、何もかも捨てて彼のもとへ走ってしまうのだから。
でも、彼との思い出があまりに美しすぎて、どうしようもなかった。
D国で最速のスポーツカーを運転することは覚えたけれど、焼きたてのたい焼きを買うためだけに、モーターバイクに私を乗せて街の半分を駆け抜けてくれる人は見つからなかった。
夜風の中の少年は、いつもぼんやりと夢の中に現れた。
忘れられない、諦められない。
だから私は最後にもう一度、飛んで火に入る夏の虫のように彼のもとへ向かった。
「今回は違うわ」
数多の恋愛小説に出てくる恋愛脳のヒロインのように、私は小声で言った。
千雪は呆れて言葉を失っていた。
飛行機が着陸態勢に入ると、心臓の鼓動が自分でも怖くなるほど速くなった。
スーツケースを引きずって健人のもとへ向かう道中、私は近づくほどに臆病になる、奇妙な不安に襲われていた。
しかしドアを開けた先で、私は彼らを見た。
健人は亜美をきつく抱きしめていた。
亜美は彼の肩で泣いており、彼は亜美の背中を優しく叩いて慰めていた。
私に気づくと、彼は一瞬呆然とし、亜美を離してこちらに来ようとした。
だが、亜美が彼の袖を軽く引くと、彼の足はぴたりと止まった。
そして、私に紹介した。「僕の彼女だ」
私は彼が人に託してD国まで送り、また私が持ち帰ってきたその桜もなかを持ったまま、茫然と立ち尽くしていた。
「じゃ、どうして桜もなかなんて送ったの……」
彼は数秒沈黙し、亜美の手を強く握りしめて言った。
「僕たち、結婚することになったんだ。君はD国にいて、結婚式には来られないだろうから……その桜もなかは、少し早い引菓子代わりだと思ってくれ」
彼の言葉が終わるや否や、甘ったるい吐き気が喉までこみ上げてきた。
愛の証だと思って大切に味わった桜もなかが、一瞬にしてこの世で最も気持ち悪いものに変わり、胃の中をかき回した。
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