偽善夫、妹に精子を貸す第3話
この話は約1250字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
翌日、武藤白遠から共有られてきたレストランのアドレスに向かった。
個室に入る前、扉越しに彼らの無遠慮な会話が聞こえてきた。
「いやあ、染谷清緒なんて産まれない女さ、白遠さん、早く離婚しちまった方がいいって!」
「そうそう、性格も悪いし、結婚して何年経つのに子ども一人もいないんじゃ、会社を将来誰に継がせるつもりだよ?」
「その点、芸ちゃんは本当に気が利くし、お腹も優秀だよな。あっという間に男の子を妊娠してくれるなんて!」
染谷芸子が照れたように笑いながら、こう答えていた。
「いやだわ、これも白遠が頑張ってくれたおかげですよ」
個室の中は一気に下品な笑い声で満たされた。
その瞬間、私はドアを開けて中に入った。
「まあまあ、みんな早いのね」
部屋の空気が一瞬で凍りついた。武藤白遠の友人たちは慌てて表情を作り直し、媚びるような笑みを浮かべて話しかけてきる。
「おや、清緒さんいらっしゃい。さあさあ、こちらへどうぞ」
「いや、しばらく見ない間に清緒さん、ますます美人になりましたね。そういえば、郊外のあの土地、お父さんも関心があるとか。もしよければ、少し分けてもらえませんか?」
「それと、前に言ってた海外の投資会社、清緒さんから紹介してもらえませんか?そちらが仲介すれば、きっと話もスムーズに進むでしょう」
「やっぱり清緒さんは頼りになりますね!ところで、うちの新しいプロジェクトにもちょっと投資してもらえませんか?ご心配なく、絶対に損はしませんから!」
「そうそう、最近うちのプロジェクトが止まってるみたいなんですが、お父さんとお母さんに少し話をしてもらえませんか?」
「その通り!以前契約すると言ってた話、どうして最近返事が来ないんです?清緒さん、さすがに色々と忙しくて忘れちゃったんでしょうか?」
彼らは媚びへつらいながら、先ほどの会話をなかったことにするかのように振る舞っていた。
私は席に腰を下ろし、無表情のままお茶を一口飲むと、淡々と言った。
「どうしたかって?ちょっと機嫌が悪いのよ。だから、仕事のことなんて考える余裕がないの。だってさ、旦那が不倫してまで作られたんだもの。考えるだけでイライラするわ。両親がこんな扱いを受けた私の状況を知ったら、きっと怒るに決まってる。父が怒れば、あなたたちの仕事だって、うまくいかなくなるわよね?」
そう言いながら、私は笑顔を浮かべたまま、染谷芸子に視線を向けた。
「でもね、その女とその子どもをどうにかしてくれるなら、きっと私の気分も晴れると思うのよ」
その言葉を聞いた途端、先ほどまで染谷芸子と談笑していた武藤白遠の友人たちは、一斉に彼女の方を向いた。その視線はまるで獲物を狙うように鋭く、容赦のないものだった。
染谷芸子の顔には初めて怯えの色が浮かんだ。
「な、なにを見てるの?な、何をするつもりよ!」
「何をするつもりかって?」その中の一人がテーブルを勢いよく叩き、立ち上がった。
「そりゃあ、天罰を代わりに下して、清緒さんの気を晴らすってことさ!」
染谷芸子は体を震わせ、その場で縮こまった。
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