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偽善夫、妹に精子を貸す第1話

この話は約2253字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

ある日、私の妹が突然SNSに妊娠検査の結果を投稿した。

それにつける文にはこう書かれていた。

「最も助けが必要だった時に、手を差し伸べてくれた愛する義兄に感謝します。おかげで、母になる夢が叶いました」

その投稿を見た私は、驚きと怒りでいっぱいになりながらも、「いいね」を押し、こうコメントを残した。

「おめでとう!じゃあ、旦那もついでにあげようか?」

ところが、その夜、旦那が帰宅すると、私に対して露骨に不機嫌な態度を取った。

「俺はただ芸子に精子を貸しただけだ。そんなに大げさに騒ぐなよ」

* * *

染谷芸子がSNSにその投稿をしたとき、私は武藤白遠のために、心を込めて夕食を準備していた。

しかし、その内容を目にした瞬間、手にしていたコップを思わず落としてしまい、床に散らばるガラス片を見つめるしかなかった。

信じられない......私の旦那が、他の女性と子どもを作っただなんて!

しかもその女性は、私の妹......それも、こんなにも堂々と、この事実を突きつけてくるなんて!

羞恥、悲しみ、怒り、失望......様々な感情が胸の中で渦巻き、私は立ち尽くすばかりだった。

そしてその失望感は、武藤白遠が仕事から帰宅した瞬間、頂点に達した。

彼は私を何も知らないと思っているのか、帰るなり責め始めた。しかし、私は何も言い返さず、ただ背中を向けて、小さく膨らみ始めたお腹にそっと手を当て、深呼吸をした。

「赤ちゃん、ごめんね......」

心の中でつぶやきながら、涙があふれ出しそうになるのを必死にこらえた。

数日後は武藤白遠の誕生日で、彼にサプライズを準備していた。でも、今の彼にはその必要がないと痛感した。

お腹の中の子は妊娠3ヶ月目。私は、この子の誕生を心から待ち望んでいた。

武藤白遠がスマホで妊婦や赤ちゃんのケアに関する情報を、調べているのを偶然見かけたとき、本当に嬉しかった。やっと私たちの子どもを一緒に育てる気持ちになってくれたと思った。

でも、今となっては、すべてが思い違いだったとわかった。

彼の行動は、私のためではなく、別の誰かのためだったのだ。

その日、武藤白遠は普段より2〜3時間も遅く帰宅し、体からかすかな粉ミルクの匂いがした。

相手が誰か、言うまでもない。

玄関に入るなり彼は、怒りをあらわにして、私にこうまくし立てた。

「今日、あのコメントはどういう意味だ?芸子に精子を提供しただけだろ?それを大袈裟に騒ぎ立てる必要がある?」

私は彼と口論する気にもなれず、無言で寝室へと向かった。

間もなく、浴室からシャワーの音が聞こえてきた。彼は風呂上がりに寝室に戻ると、満足げに一つのブレスレットを取り出して私に差し出した。

「ほら、これ見て!芸子とは何もないって言っただろ?精子提供は、ただその願いを叶えるためだけだ。清緒の妹だぞ、助けて当然だろ?子どもが生まれたら、きっぱり縁を切るから」

彼の言葉とその手にしたブレスレットを見た瞬間、私は吐き気を覚えた。

このブレスレット......先月、染谷芸子のSNSで見たばかりのものだ。

「他人のお下がりを私に渡す?妹だって?彼女と私は血縁関係すらないのよ。ただの養女にすぎない」

染谷芸子は私の実の妹ではなく、私の家が引き取った養子だ。そう言いながら、私は彼に背を向けた。

それを聞いた彼は、明らかに不機嫌そうに声を荒げた。

「せっかくこうして下手に出ているのに、何がしたいんだ!昔、俺と一緒にいたいって言ったのはお前だろ?妬み深い女みたいな真似をするな!正直に話してやっただけ、感謝してほしいくらいだ。それなのにお前は......こんな態度を取るなんて、まったく話にならん!」

彼の言葉を黙って聞き終えたあと、私は疲れたように口を開いた。

「じゃあ......離婚しましょう」

「はぁ?」

彼は一瞬固まり、その後さらに怒りを募らせた様子で寝室を飛び出した。

「こんなことで離婚を切り出すのか?その度量の狭さには呆れる!ほんと、がっかりだよ」

彼がドアを力任せに閉める音を聞きながら、私は思わず笑ってしまった。

自分の愚かな結婚に、そして、そんな男にすべてを捧げた自分自身に。

彼にとって、謝罪は私への「施し」であり、それを受け入れない私が悪者だ。

この数年、彼への愛は、彼を傲慢な男に育て上げる一方で、私自身を安っぽい存在にしてしまった。

こぼれた涙をそっと拭いながら、翌日の中絶手術を予約した。

朝早く、武藤白遠の姿はすでになかった。ここ数日、早くに出かけ、遅くに帰る。

仕事が忙しいのだと思っていたが、今となっては染谷芸子の世話をしていたのだとわかる。

私は予約を済ませた後、タクシーで病院へ向かった。手術はあっという間で、10分ほどで終わり、ストレッチャーで外へ運ばれた。

そして偶然にも、会計手続きをしている時に武藤白遠と鉢合わせした。

彼の第一声は、「体調は大丈夫?」ではなく、私を鋭い目で睨みつけながらこうでした。

「お前、俺を尾行してた?」

私は、無視して彼の横に立つ染谷芸子を見た。

彼女は目をそらし、武藤白遠の耳を引っ張りながらふざけたように言った。

「何言ってるのよ、お姉さんが私たちを尾行するわけないでしょ?お姉さんなら、きっとわかってくれるわよね?」

その様子に、私は思わず冷笑した。

「ええ、ええ。夫婦で産科検診に来てるんだもんね。私には、関係のないことだよ。ほかの人が聞いたら、私が不倫相手だと思うかもね」

私の言葉に武藤白遠は苛立ち、私の肩を乱暴に押した。

「まともな話し方をしろ!何度も言ってるだろう。芸子はただの義妹だ!」

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